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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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下らない暇つぶし 8

何をするのか訊こうとしたが「試合が始まるから集合して下さい」と言われ行ってしまった。「大丈夫。」とだけ言われたが大丈夫も何もそもそも勝負にならないのでは?持っている銃もライフル射撃用の空気銃だし。

「……え、待って何かすっごい変な考えが頭を過ぎったんですけどノア?何を鶴に言われたの?何でノアはあの時大爆笑してたの?」

「だって、鶴……」とまた思い出して笑っているノアは言った。

「『こっちが先にその飛ぶ機械を撃ち落とせばいいんだよね?』って。だからもし壊れちゃったらノアちゃんには悪いんだけど一時そのお金負担して欲しいって。まぁ勝ったらこの部から絞り取ればいいんだけどね。」

えっと、どういうこと?と首を傾げていると春風さんが「いやいやいや!!」と割って入ってくる。

「そんなの無理だよ!!そもそもこっちはライフルで向こうはショットガン何だよ!?確かにライフルは狙撃には適してるけどショットガンの方がずっと範囲が広いしこの距離ならさしてライフルの良さを活かせない!それに何よりあの的となる機械の最も悪い点は、弾が当たったと判断されたら光るんじゃない、当たると判断されたら光るんだ!!だから鶴ちゃんが早く撃ったとしても、当たる前に向こうが当たる角度で引き金を引けばほぼ負けるんだよ!それにこっちは空気銃。風とかにめちゃくちゃ影響されるけど向こうはあくまで数値でしか邪魔は入らない。そんなので勝つなんて不可能だよ!!」

春風さんの丁寧な解説により鶴がどんな絶望的状況に立たされているかが分かった。正直試合こそ何とか成り立たせられるが、勝負にはならないレベルの問題だ。

けれどノアからは一切の不安も感じられなかった。寧ろとても楽しそうに見えた。

「あの子が勝てるって言ったの。それを私は信じるだけだわ。」

「どの道俺たちは黙って見てるしかねぇんだよ。」

なんというか禦王殘とノアは落ち着いてるな。……なんかかっこいいな。


やがて準備も終わり4人が持ち場にセットする。とは言っても事態が事態なので少し戦略を変える。ルールも少し変わった。とりあえず碌な戦力にならない瀬田会長は完全に鶴のサポートに入る。その為勝負は2対1で行うことになった。勝負は3人で誰が最もを機械を撃ち落としたかと言うもの。1つ1点。合計得点でないだけまだ救いがある。的は25m先の5台並んだ台からランダムに発射される。その数は50個。

そして4人の準備がそろいアナウンスが入る。「静粛に。」との声で会場が段々と声が小さくなる。選手には専用のイヤホンがしてあるので開始の合図もそこから行う。そのため開始のタイミングはこちらからは分からない。沈黙がしばらく続き何かまた問題が発生がしたのだろうかと、後ろからヒソヒソと声が聞こえ始める。

『カシ『パァアン!!!』......ポスン』

何やら向こうにオレンジ色のなんかが一瞬見えたがあまりに一瞬の事で全然わからなかった。多分誰かが撃って当てたのだろうが。飛んでた機械を見ると壊れてそうだったのでたぶん鶴だろうが......。

「あまりにも早すぎない?」

「少なくても見て考えて撃って、みてぇな感じではなさそうだな。あそこまで行くともう反射にちけーな。バケモンかよ。」

「反射?」

「脊髄反射っつうか、考えずに行動してるつうか。熱いヤカンとか触れた時「熱いな、手ぇ放すか。』なんて考えて放してないだろ。あいつも今多分動くもの見えたら即ぶっ放すくらいしか頭にねぇぞ。」

え?どういうこと?鶴はたまに知り合いと撃つくらいって言ってなかった?あんな自信なさそうにしてたくせに、実はめちゃくちゃできるのとかですかそうですか。

そうこうしているうちにどんどん的が発射され撃ち落されていく。点数は表示されないが恐らく鶴と小淵が接戦しそのだいぶ後ろに大西がいるといった感じか。会長は鶴の隣で何やら数字をボサボサ言っている。なんの数字かは分からないが。

「きっと次にどこから出るか予想して鶴に伝えてるんだろ。」

俺ってそんなに顔に出やすいのかな。というかそんな事できるの?

みんなが固唾を呑んでそれが終わるのを待つ。声援なんて迷惑でしかない。だからせめて心の中では無意味でも精一杯のエールを送った。

そして長くも短くも感じた時間が審判が旗を上げたことにより終わりを告げる。その旗すらつい撃ち抜いてしまった鶴の集中力は本当に凄かった。集計をしている間に鶴と会長がこちらに向かってくる。会長の肩を借りていないと歩けなさそうなほどに疲れきっているよう。けれど会長の支えが不安定だったので溜息ひとつつくと禦王殘がその役割を代わる。「保健室に寝かせとく。」と一言告げると鶴を俗に言うお姫様抱っこし、去っていった。鶴は恥ずかしそうにしていたがろくな抵抗もできそうになかった。


外の大会の影響で校内にはほとんど生徒が見られなかった。保健室をノックしたが先生はおらず、仕方が無いので勝手に鶴をベットに寝かせ、周りにカーテンで囲う。そして入ってきた扉と反対側の扉を勢いよく開ける。

「一体何の真似だ?」

男は禦王殘の目付きにも一切怯えた顔はせず、寧ろ嬉々としていた。

「女の子を介抱するなんて随分と丸くなったんですね。昔のあなたとは別人ですね。何ですか?心変わりでもしたんですか?それとも単純にその子に惚れたりしてるんですか?個人的には後者だと面白いんですけどね。」

禦王殘はどんどん饒舌になる男の言葉を無視し、一方的に話を終わらせようとする。

「今すぐ失せろ。」

凄味が一層増すが全く怖じけることはなかった。寧ろ殴ってくれ、と言っているような感じさえする。わざとらしく両手まで広げて。

「相変わらず言葉が刺々しいですね。あ、そうだ。もしも仮に点数が引き分けだった場合、どうなると思いますか?」

「延長だろうが、それは後日にでも行う。鶴があんなんで勝負になるわけねぇだろ。」

「いやいや、それはいけません。聞こえませんか?この昂る客の声。もし延長戦があればみなさん今すぐにでも見たいんですよ。僕はそのニーズに答えるため引き分けとコールされた際、その女を叩き起して引き摺ってでも持ってこいと言われてまして。」

「......やってみろよ。」

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