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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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旅鞄には甘いお菓子と少しのスパイスを 14

「我々が特殊なだけで、普通生徒と校長なんて関係は持たないです。それに負けること前提の勝負を挑むなんて、何をしたいのか分からず、正直不気味です。」

「考えすぎなんじゃないか?紙1枚で修学旅行を阻止できる可能性があるのなら、行きたくない人がそれを実行してもおかしくは無いと思う。実際色んな大学とかで犯行予告とか届くとか見るし。」

俺の意見に一部納得出来たところがあったのか、反論はせずに少し考え込んでいた。とはいえ9月の日照りのきいた空の下、ただ相手が話すのを待つのもなかなかキツい。

「あの、俺らも次の「一つだけ。狐神さん、あなたは修学旅行に反対ですか?」」

......まぁ何となく言わんとしてることは分かる。俺なんかは学校に恨みはあるだろうし、その連中が楽しそうに旅行なんてしようものならそれを阻止しようと動くことも。

「お生憎様、俺はそんな暇じゃないし、樫野校長の実力は多分この学校の誰よりも身に染みてる。それに俺は寺仏閣は嫌いじゃないし、行きたいとこもあるからな。」

「そう、ですよね。すみません、不快になるような言葉を掛けてしまい。」

「俺自身も自分が容疑者候補に入ってても何ら不思議はないと思ってるしな。気にしないでくれ。じゃあ部活頑張って。」

「......またね。」

俺と鶴はその場を後にした。

けれどその背中を、いつまでも見られているような気がした。


残す部活は1つ。

「じゃあ今日はこのくらいにして帰るか。今日はよく働いたし。」

「......そう言うと思った。でも、やめておく?私だけでも大丈夫だとは思うけど。」

「あ、そう?じゃあ俺は生徒会室に戻って暖かいお茶でも淹れて「生徒会のお2人様、お待ちしておりました。」鶴、後は頼ん「まぁまぁ、狐神君もゆっくりしていきなよ。」嫌だ「来いよ」」

そうして小原に首の根っこを掴まれて連れていかれた。「絶対に逃がさない......」と言われた時は死を悟った。

料理部。以前もここは視察に来て、ボコボコにされた。あの時は水仙の冤罪が解決してなかったからボコボコにされたが、今回は人気者であった淀川を退学にさせたことでボコボコにされるのだろうか。

「......狐神君?大丈夫?息上がってるけど。」

「ひっひっふー、ひっひっふー」

「......産むの?」

極力仕事を早く終わらせて直ぐにでもここを去りたい。今のところこれといった被害は出ていないが、みんなからの視線が凄い。いや、嫌悪とかそういうのとは違うからまだマシなんだけど。でも俺の真ん前に座るこいつだけはどうにかしてくんないかな。

「......あの、水仙さん。近くて集中が「問題あるの?」......ございません。」

水仙に意見しようとしたら周りのみんなが更に視線を厳しくして見てくる。隣の鶴にお願いしたかったが、何故か料理部全員が『お前がやれ』と言うし。どうして。

「でもこういう仕事去年まで淀川さんが対応してくれてたから、急にいなくなって本当に大変だった。ねぇ、美桜ちゃん?」

胃が......。

「そうだね、あの人仕事は嫌な顔せずに率先してくれたからとても助かってたよね。......今はもういないけど......」

頭痛が......。

「......お、俺に何かしてと言うのか?」

「美桜ちゃん、今狐神君何でもするって言ったよね?」

「うん。」

「うん、言ってないよ?」

「ううん、3人中2人が言ったって言ってるからあなたは言ったの。多数決に逆らうつもり?少数意見の尊重?都合のいい言葉ね。いい?少ないことは弱さ、弱さは悪。弱者が騙る善なんて強者の偽善に為す術なく叩き潰されるの。個は群に敵わない。特にこの国は争いに負けた教訓から、争い自体を悪としてきた。だから争いを生ませない為に、新たな手段として少数を作らせない同調圧力というものが生まれたの。争わずに殺すの。そうすればここは綺麗な世界と信じられるから。」

「功利主義という考え方「うるさい。」Noと言える日本人「黙って」マイノリティにも人権を「......」痛っ!?」

最後に至ってはシンプルな物理だが、確かに少数派はいつも迫害される。それは今日でも様々な場所で怒起こっている。人種差別、LGBTQIA問題、男尊女卑、女尊男卑、障がい者差別、同和問題、服役者の復帰後の社会復帰、外国人差別。1人じゃこれらの問題を解決できないことも少数派の弱いところだな。だが今回の論だけなら、数なら俺にも味方はいる。

「鶴、俺そんなこと言ってないよね?」

「......モグモグ。うん、言ってな......もう1個くれるの?……言ったよ。」

あのさぁ......。

「鶴?俺の目を見て。鶴?なんでそっぽ向くの?確かに顔も自信はないが、人様に見さられない程では無いと信じたいんだが。ねぇ?なんでこっちを見てくれないの?」

あともうちょっとのところで鶴が降参したのに、それよりも前に助け舟が入った。

「狐神君、近い。鶴さん困ってるよ。離れて。」

「お、おぅ......なんか水仙めちゃくちゃ機嫌悪い?」

「別に。」

これは怒ってますね、なんでかは分からないが。しかし元はと言えば君と小原が原因なんだけどな?でもこうなってしまっては俺の負けか。別にそんな大したことさせられる訳では無いだろ。

「......分かりました、何でもします。」


何でもします、この言葉には色々な意味がある。しかし昨今の場合は大体は猥褻(わいせつ)な意味を含む場合が多い。嬬恋の言うところ「ぐへへ展開」らしい。俺は最初それを聞いた時、「じゃあ男はどうなるのか」という疑問が湧いた。正直興味のない議題でもあったが嬬恋の熱弁を覚ますのに丁度いいと思い質問してみた。

「そうですわね、そうなった場合は何かキツいことをされるでしょうか?Mさんが喜びそうなこととかでしょう。」

梶山とかみたいな人か。

「もしくは......まぁ、あれですわね。確定、とかですわね。」

俺の中で『キュイキュイキュイキュイーン!!』とけたたましい音と共にチカチカするほど眩しい演出が入った気がするが、あれはキツイとは正反対の言葉だろうから違うか。


「狐神君て料理出来るんでしょ?是非私とお手合わせ願いたいなと思って。」

一応水仙は料理部のエース的なポジションだし、その実力は懸垂幕垂らして学校全体で褒め称える程なんだが。そんな人に味も分からない俺が勝負挑むってマジ?

「しかも審査員が全員料理部て八百長だろ。」

なんかそんな感じで唐突に水仙と料理バトルが始まった。

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