下らない暇つぶし 7
先ほどの鶴の意見だが俺は若干違うと思う。これは相手がボールを取れるか取れないかじゃなくて、禦王殘が打つ弾が入るかどうかだと思う。事実3球連続で打っているが誰も触れられてもいない。しかもどれもギリギリで全部インコートだし。そんなわけであっという間に8対2。これには相手もたまらずタイムアウトを要求。1分の休憩が入った。
「禦王殘は体力の方大丈夫か?あんなすごいのバンバン打って。」
とりあえずスポドリとタオルを渡す。体からはすごい熱気を感じる。
「打ててあと5発。後はもう普通にやんのが関の山だな。...まぁ向こうのあの様子ならもう心配いらねぇだろ。」
向こうのチームを見ると先ほどの3人が首を横に振っている。そして他の連中の顔も暗い。完全にメンタルをやられたようだ。確かにあの様子だともう負ける心配はなさそうだ。
その後の2点はあまりにも呆気なく終わった。先までの禦王殘のシュートも炸裂することなく、相手のミスとこちらの軽いシュートで。周りで見ている連中も思うところがあるだろうが何も言わず解散していった。
とりあえずまた生徒会は勝った。
「次はライフル射撃らしいが、鶴は得意なのか?」
「......得意とかとは違うけど、たまに知り合いと撃ったりはするかな。」
「うぅん?それはどうなんだろうか?」
それで部の連中と戦えるかはわからないが、少なくても会長よりは期待が持てそうだな。今回射撃のルールはそれぞれ2人ずつ参加するが勝敗は一番多く得点を取った人のチームとなる。つまり片方へたくそでももう片方がめちゃくちゃ上手ければ問題はないという事。「ところでライフルで何撃つの?鳩とか?それで豆鉄砲てか?」なんて意味わかんないこと言ってる瀬田会長が入っても鶴が無双してくれれば大丈夫というわけだ。
それに向けた対策の為なのか、会長に呼ばれた鶴とたまたま会った俺が生徒会室の扉をノックし入る。しかしそこには会長はおらず、机には1枚の紙が置かれていた。そこには出場選手、鶴と瀬田会長が書いており相手側は大西という人と小淵という人だった
「えっと、小淵 友則。1年でクラスは...俺と同じ?こんなんいたっけ?帰宅部だが幼い頃からライフル射撃に触れ国内大会でも常に優勝候補の一人。部に入らなかった理由はレベルが低かったため、などなど。今回は部員の大西よりもこっちに注意しろってことか。え、これ、鶴勝てるの?」
「......た、大切なのは全力で頑張ることだと思う。」
うん。そうだね......。
今更明日に備えることなんかなく、テンポよくこの行事は進んでいく。今回は50mライフル伏射という50m離れた的をうつ伏せで寝ころんだような状態で撃つ形式で行う。因みに火薬は年齢的に使えないので空気銃となる。得点は本来は10.9点×60発で出すが今回は簡単にしてそれぞれの円に1点、3点、5点と点をつけ、10発で何点とれるかというもの。正直不安は残るが2人を信じるしかあるまい。
「昨日はすまんな。生徒会室の紙は見たか?」
「......はい。とりあえず小淵っていう人にに気を付けるという事だけ。とりあえず全力で頑張ります。あ、これ会長の銃です。親のなので丁寧に扱って下さい。」
「......あれ?ちょっと待て、紙はちゃんと見たよな?」
会長の顔から焦りの色が見える。何となくここでとても嫌な予感がした。そういえば先ほどからその的と言うのが全然見えない。代わりに何か見たこともないような投射器のようなものが見えた。
「紙は2枚置いといたが...」
「……?狐神君、1枚だったよね?」
「うん。瀬田会長、その紙にはなんて書いてあったんですか?」
瀬田会長が小さな声で「やられた...」と口を零す。そして少し溜めた後口を開く。
「今回やるのはライフル射撃じゃなくてクレー射撃になったんだ......」
クレー射撃はフリスビーのような円盤状のような物を飛ばしそれをショットガンで破壊する競技。しかし俺らの年齢では法律に触れるので今回はビームライフルのようなものを使う。これは弾は一切出ないが撃った角度や風向きなどを自動で演算し、当たったと判定されればランプが付くという最新鋭のようなもの。だけど今回の一番の問題は前に鶴が「自分の家にあるのでそれを使う」と言ってしまったこと。鶴は勿論ライフル射撃だと思ってたわけで、こんな最新鋭な銃など持ってない。向こうが予備を仮に持ってても貸してくれるわけもない。このままいけば不戦勝となるのだから。昨日のうちに確認しなかったのはこちらのミスだし。
頭が真っ白だった。そもそもライフル射撃ですら勝てるか分からないのにそんないきなり展開が変わりすぎて。昨日の段階でよく瀬田会長と話してさえいれば。でももう後悔なんかしている暇なんてない。けど一体ここからどうすれば......。
「......ノアちゃん、頼み事があるんだけど。」
そう言って鶴はノアに話しかけに行くと少ししてノアは何故か大爆笑していた。そしてその後審判と相手チームの元へ掛け合い何かを話している。何かわからないがその話がうまくいったのか、こちらに戻って来た。
「……会長、もしこの勝負負けたら会長の責任ですからね。あの変な提案のせいでこうなったんですから。」
何となく嫌な予感がしたのだろう、会長が恐ろしげに聞くと鶴が耳打ちする。