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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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敗者の末路 4

あの日、まだ高校生活が始まってすぐで心が浮かれていた。窮屈な電車に乗ることさえも別に構わないと思っていた。どうせ2駅分だ。それにもしかしたらこの前仲良くなった人たちがこの中にいるかもしれない。

電車に入る刹那、何やら変な状態の女の子が見えた。顔が妙に赤く、俯いて。どうかしたのかなとも考えたが彼女は遠くにいたので話しかけるどころか視界からも見えなかった。そして電車が動き出す時、大きく車内が揺れた。その時その女の子の状況が分かった。後ろの男子学生の手がその女子のスカートの中に入っていた。ひを見るより明らかだった。俺はその事に憤りを覚えて衝動的に叫びたがったが、こういう時、女子が事を大きくしたくないのを思い出した。それなら俺に出来るせめてものことは2人の間に立ち、すぐにでもその行為を辞めさせることだと思った。とはいえぎゅうぎゅうの車内を動くには時間が掛かり、結局学校の駅までもう少しのところで2人のとこに着いた。そして2人の間に強引に入るとその男子高校生を睨んだ。結果その男子はすぐにどこかへ行き、駅に着くと女子も素早く携帯をポッケに入れ走り去っていった。

「なるほどな。ま、大方予想通りだが分からない事がある。その話だとお前はむしろ良い奴じゃないか。なのになんで痴漢扱いされてんだ?」

これも調べればすぐ分かることだから話してもいいだろう。どうせもう終わったことなんだし。

「最後に携帯をしまったって言いましたよね。彼女はその携帯で友達に助けを求めてたんです。文章は『今後ろの人に痴漢されてる。怖いよ』と。そして最悪のタイミングで俺は2人の間に入ったんです。そして犯人の男は去っていった。つまりそういうことです。」

「きっとその友達が彼女を見た時、後ろにいたのは2人の間に割って入ったお前だったってわけか。その場で確認すればまだ良かったかもしれないが、その友達はきっと彼女が心配でそっちに行ったんだろうな。」

だろうな。それは友達として正しい選択肢だと今でも思う。彼女もきっとずっと俯いていたから誰に触られたかなんか分からないだろうしな。

「お前に1つ教えてやろう。」

この人は今度は何を言うのだろう。何となくこの人についてもう少し知りたいと思ってしまった。

「この学校の生徒会の権力はそこそこ大きくてな、全校生徒の顔写真や簡単な情報くらいならそこいらのファイルにある。」

確かに俺はその犯人を睨んだ時確かにその顔を見た。それを頼りに調べればやがて特定する事もでき訴えられよう。

「……被害者は水仙(すいせん)美桜(みおう)。内気で恥ずかしがり屋で勉強はよくでき、男子に人気があります。友達は相川翔子。バスケ部で気の強い人です。そして犯人は淀川(よどがわ)(ひろし)。勉強も運動も比較的でき、人望も厚い人気者です。……俺だって抵抗はしたんです。ありがとうございました。聞いてもらって楽になりました。」


「……報われねぇもんだな。なぁ鶴。」

鶴と呼ばれた女の子はいつから聞いていたのか、狐神が出ていった方向と逆から現れた。瀬田の言葉に対し何も言葉は返さなかったが、鶴の物憂げな表情に瀬田も何も言わなかった。


昼休み俺は海を眺めていた。ボーッとしてるだけだが決して飽きはしない。ここは学校の敷地外で原則出ては行けないが、出ている生徒はたくさんいる。俺もその1人で、今は学校とその前の砂浜との間にある駐車場、そのかなり端っこにいる。ここまで来る人はきっといないだろう。とても気が楽だ。つい微睡んでしまう。

「ニャー」

「ニャー」

俺の昼休みの密かな楽しみ。入学当初少し前からの付き合いである。酷い怪我をしていたところを処置してあげたらそこからなんか懐かれた。首輪をしているあたり恐らく飼い猫だろう。いつものどおりだが、なんの警戒もなく俺の太ももに丸くなって寝始めた。俺も少し眠たかったので携帯でアラームをセットし瞼を閉じた。


次に目を覚ました時には猫の姿はなく、俺も学校へと戻った。


「はぁ!?まだお前部活も委員会も入ってないのか!?いい加減にしろよお前!!」

「一応前より一層丁寧にはお願いしてるんですけどどうも受け入れられず。」

「遂にはてめぇじゃなく相手が悪いってか!?もう何なんだよお前!?やる気ねぇなら帰れよ!!」

これで帰ったら絶対「何帰ってんだよ!?」とか言うくせに。今日はきっちり別室で怒られてるから式之宮先生の助けは無理だろうし、今日は大人しく怒られるだけ怒られよう。


委員会の方も全部回ったが結局全部断られた。こうなったら生徒会しかないんだけど、俺が学校の為に尽くすとか絶対無理だし、入っても迷惑をかけるのは目に見えてるし、どうしたものか。

「……なければ作ればいい?」


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