下らない暇つぶし 5
翌日は午前中だけ動いた後、その次の日に学校もあるので午後には帰路についた。疲労と安堵から俺は帰りは終始寝てしまっていた。そして家に帰っても最低限のことを済ますとすぐにベッドに入った。
そして後日、ついに始まった生徒会vs運動部。最初は春風さんとノアが出る羽根突きから。聞くとちゃんとルールがあるらしい。けれど今回は少し簡略化して行う。
『サーブはサービスラインより後ろから打ち相手のサービスラインより後ろの位置に。これを2回まで打てる。
お互い交互に触り2回以内に返すか、一回で相手コートに返す。
コート外に羽根が落ちる、体がネットに触れる、サーブを2回ミスする、1人が連続して羽根を打つ、などが失点。
10点連続先取とする。』
これが大体のルール。バレーボールとバドミントンを組み合わせたような感じ。そんなわけで相手も羽根突き部とバドミントン部のペア。部員が半数以下しか参加出来ないならそうだろうなとは予想できた。どうせバドミントンの人には後で少し部費を分けるのだろう。表情を見るからに余裕という感じ。
サーブ権をこちらに寄越し向こうはコートを取る。下手な素人が打つサーブなどレシーブ側にとって得点源にしかならないし、照明の関係でコートも向こうが有利だ。まぁ当然といえば当然の選択か。
そして最初の一球。球と数えるかは知らんがノアが構える。サーブは下からすくい上げるように打つだけとなっている。そしてノアが腕を動かし重心が僅かに前に動く。
『カンッッッッ!!!』
文字だけでは到底伝わらないだろうが、そこにいたほとんどの人がビクンとなるくらいの音量だった。少しザワついていたのが一気に静寂に包まれる。天井ギリギリまで上がった羽根は一気にバド部の人に落ちてくる。バドミントンの羽根は初速こそ記録では500kmに近い速度がでるが、手元に来るまでにかなり減速してしまう。それに慣れてしまったバド部の人は羽根突きの落下速度に上手く対応出来ず見事にからぶった。たかだか数日練習しただけではその切り替えは出来まい。慣れていれば慣れているほど打てない。
「相方を選ぶんだったら運動神経がよく、バドミントンやテニスをやったことない奴を選ぶんだったな。」
瀬田会長もそう言う。
そしてサーブが春風さんにいき、またもバド部の人は同じミスをする。これで2点。けれど次は羽根突きの人の2回連続レシーブ。これにはどうするのか。
ノアのサーブは前と変わらずかなり高弾道で、今回はかなりアウトギリギリのサーブを打つ。アウトだと思い見過ごしてもいいくらいだがここは強めに打ってくるらしい。パスという選択肢はほぼほぼないのでこちらは横並びになり守りの体制に入る。その直後、凄まじい速さで放たれた羽根はノアのすぐ横を通り地面についた。
「本物は流石早いわね。」
「無理そう?」
「冗談やめてください。」
どうやら2人はそこまでピンチという訳ではなさそう。まぁ最初からあまり心配などしていないが。
次の羽根は春風さんにいき、何とか打つもその羽根は相手コートには戻らなかった。これで点数は2対2。今度は向こうからのサーブ。こちらからはラリーも増えていくだろう。正直どう攻めていくのか俺は全く分からないが、2人は遠くで色々と話し合っていた。
そして羽根突き部のサーブ。こちらも負けずとかなりの高弾道、というか高すぎて天井に当たり失点。どうやら相手方もそれなりに感じているものがありそうだ。とりあえずラッキー1点。
次は少し弾道を低く確実に。これを春風さんは嫌味たらしく相手の真ん中に落としお互いお見合いを誘いまた一点取る。これで4対2。相手も連続の失点で舌打ちをする。
ここまで一進一退のいい試合だったが、この後の流れはあまりに一方的だった。戦略としてはノアが羽根を延々と拾い、それを春風さんが的確に嫌なところへ打つ。言えばただそれだけ。けれど単純だからこそ逆に崩されることはなかった。毎度的確なところに撃つ春風さんもすごいと思うが、もっとすごいのはやはりノアだ。決して遅くはない羽根を正確に春風さんの打ちやすいところへ運んで行ってる。言うならばリベロとセッターの掛け合わせた感じ。結局勝負は10対3と圧勝。春風さんはハイタッチを要求していたが、ノアはその手にスポドリを渡すと更衣室の方へ歩いて行った。
「はー、あっと言う間でしたね。次の協議は何をするんですか?」
「セパタクローだな。ぶっちゃけこれに関してはマジで負ける気がしない。参加人数3人、そのうち部員は1人しか入れない。それにやったことある人なんて集めようとして集まるものでもないだろう。」
たった数日練習したド素人の我々が言えたものじゃないだろ。こういうこと言ってると大抵痛い目見るんだから言わなきゃいいのに。まさに油断大敵。多分他の2人はサッカー部だろう。ボールの大きさだったりはだいぶ違うだろうが、足さばきはどうしたって要求される。しかも羽根つきと違いこちらのほうがずっとハイスペックで要求されるから新人を一からやるよりかはサッカー部にボールの違いを慣れてもらう方がまだましだろうか。......ま、俺は出ないから関係ないか。