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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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手折られた秋桜 10

続く落穂拾いでは説明であったように、至る所でど付き合いが見えた。勿論過度なものは禁止されているし、それを破る者はいなかった。見られた作戦としては、あくまでど付き合いが許されるのは玉を拾う際のみ。そのため、ガタイのいい人のすぐ側にあえて玉を置いておき、そこに来た人とぶつかっていた。疑似餌になってないがそんな風に見えた。勿論自分が勝てないと思う相手なら挑まないが、だからこその盛り上がりを見せた。一方で機動力の高い生徒はぶつかる直前にそれを躱して玉を拾い上げるという芸当を見せた人もいた。知り合いでは3年の久世が橄欖橋先輩に抜かれていた。久世は変わらずブチ切れていたが、それを橄欖橋先輩は更に煽っていき、結局久世から4、5球は盗んで行った。てっきりガタイだけがものを言う競技だと思っていたが、そうでもないらしい。


続くSケンも白熱したゲームが行われていた。そしてそれは太陽と西御門と牟田と一緒に見ていた。そのため正直試合は眺める程度で、ほとんど雑談に花を咲かせていた。

「にしてもこの学校は色んな競技があって楽しいな~。おじさんもこういうのやってみたかったよ。」

「私達の学校はそこまで力を入れてないですからね。良くも悪くも楽しめればいいくらいですね。私も生徒会の一員として色々考えてはいるんですけど。」

確かに聞いた話、高校の体育祭は小学生や中学生の時よりも勝ち負けにこだわるというより、楽しむ方が主になると聞いた。俺からしてみればあんまり熱中する方が苦手意識があるが。

「バスケしてる時に相対すると化け物だらけだったが、こうしてみると普通の高校生なんだよな〜。」

「太陽は普通に上手い分、より注意して敵視されてるからな。……まぁ2人の女子高生侍らせて観戦してる姿を見せられると、しょうがない気がしなくもないがな。」

「あんたには縁もゆかりも無い話しよね。彼女とかいた事ないでしょうし。」

「……太陽に振られたくせに何を偉そうに。」

俺の軽率な発言は牟田だけでなく西御門も怒らせてしまい、結果2人から一発ずつ食らった。特に西御門に至ってはきっと昔の血が騒いだのだろう、牟田のビンタなんか霞むくらい、一撃で意識が飛びかけた痛みなんてものはなかった。なんか、もう痛みはなくただ意識のみ刈り取るような感じだった。「あんまりお痛してはダメですよ?」なんて可愛い言い方では包めない位に負のオーラを感じた。

「2人は太陽が振った理由について、その詳細まで知っているのか?」

「あんたね、茶化すのも「茶化してない。太陽、2人にはしっかりお前の両親について話した方がいいと思うぞ。話しづらくても、2人ならきっと聞いてくれるだろ。」

以前2人には少し(ぼか)して話をしたのは聞いた。だからこうしてまた4人が集まる時にはしっかり理由を伝えるべきだと思った。

太陽は少し渋った顔をした。結論その場でそれを話すまではどうしても行かず、今回はそれを見送ることになった。確かに今回2人が来た理由は俺らの体育祭を見るためだ。俺もだめだな、自分のことならいざ知らず、親友のこととなると冷静になれないことがある。

「狐神君は太陽君の事情を全て知っているんですよね?もしかして太陽君の優しさはここから来てるんでしょうか。」

太陽の優しさね。確かにこいつは周りに合わせて自分の気持ちを押し殺すことも多々あるからな。俺の前では結構自由にしてくれることも多くなったが。

「……知ってるよ。自分の感情押し殺して他人を優先させることを優しさというのであればそこに起因しているな。でも言っておくが、俺から話すことは期待するなよ。」

「分かっています。ただ全てを知って、それでも支えてくれているあなたという存在が確認できただけで、とりあえずは安心出来ました。……それはきっと太陽さんの中に巣食う闇のようなものなのでしょうね。」

誰しも心に暗い部分は持っていると思うが、それを闇と形容するのであれば、きっとそうなのだろう。個人的にはあの闇はなかなかに深いと思う。人によっては普通なのかもしれないが、俺は未だに苦手だな。いつの日か時間が解決してくれるなんて思っていたが、俺と太陽が子どもの時からあの人の在り方は変わってないからな。友達としてではなく、彼女としてもし太陽に近づくのであれば、壁は高いだろうな。......特に西御門は。


続く部活動対抗リレーは人数が多すぎるため、運動部のみに限られた。その理由は意見として『運動が出来ない文化部を公衆の見せしめにして何が面白い』などと過激なものもあり、まぁ言わんとしていることは分かった。しかしそれでも30を超える運動部がある。12部活×3回に分けて走ってもらったがその走りは流石は大したものだった。今回はゴールテープの人を任せてもらったが、いや、あそこに立ってる人って想像以上に怖いのな。猪が凄い勢いで突っ込んできたような感じだったもんな。質量80kgをゆうに超える巨漢の相撲部が来た際は、ついゴールテープ切る前に手を離して逃げたくなった。多分ダンプの衝突と同じくらいの運動エネルギーを持ってそう。またそれぞれの部活がその特徴となるものをバトンとして採用していた。この時点で剣道部や弓道部なんかは顕著に不利だと思っていたが、案外そこまで差がつかなかったのは大したものだと思う。


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