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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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手折られた秋桜 5

本当にそれ以上何も話してくれず、昼休みは終わりを迎えた。

生徒会の仕事も本格的に多忙となり、桜のことなんて考えている余裕なんてなくなっていた。ヘトヘトで帰る道のりで太陽から当日についていくつか質問を受けたが、それに応えるくらいが限界だった。


「まぁ何とか形にはなったきたか。」

「そうだね!いい感じ!!」

2人が納得、というよりも妥協したのは体育祭の2日前だった。とりあえず公衆の面前に出しても問題ないくらいには踊れるようになったと思う。周りの人達がどのくらい踊れるのかにもよるが多分大丈夫だろう。

「それで明後日がいよいよだけど、向こうは進んでる?」

「残念だが生徒会で忙しくて全然そっちに注力してないな。それに仮に進んでいたとしても、いまいち正体の掴めないお前に話すつもりもないだろ。」

「すごい嫌われようだなぁ。私は別に狐神君を傷つけてやろうなんて考えてないのに。」

多分それはある意味合ってんだろうな。だからこの上なく理解し難いとも思うが。こいつの最終目的は一応検討ついている。そして俺に接触した理由も何となく。唯一分からないのは夏休みの3人組だけ。

「嘘つけよ。事実夏休み俺は本当に死にかけたんだぞ。確かにホームレスの男が押し寄せたことによる事件だったが、その後たまたま何も関係のなかったお前が家に来るわけないだろ。」

「分からないよ〜?奇跡も偶然もあると思うよ?」

事件の後にこいつが来たことは否定しないか。そうなると鶴の父親が来ることは分かっていたのか。そしてその後何かしらの要件で俺の家に入った。鶴の父親が俺を襲ったことは否定してないから、直接こいつらが俺に何かしたというわけではないか。でもこいつらは俺が倒れている現場に行って一体何をしたかった?どうやって鶴の父親と接点を持った?どうして俺の家が分かった?

「うむうむ、存分に悩み給えよ少年。悩みと無鉄砲こそ青春だよ。」

「うるせぇよ。」


体育祭まで残り1日。

とはいっても本日は予行練習で1日潰れる。前回のリハーサルより少しだけ本格的に行い、明日に備える。そのために椅子や机なども朝っぱらから移動し始める。生徒会は自分のもの以外にも文体実行委員などと協力して本部の設営や看板の手配、指揮、来賓向けの最終確認も行う。

なので本日は始発電車で来た。林間学校の時もそうだったが、朝起きてから電車に乗るくらいまでの記憶があんまりない。

「眠そうだな。」

「……兜狩は元気そうだな。体育も好きじゃないのにそのために早起きなんて億劫でしかないよ。」

別に体を動かすのは嫌いじゃないと言っていた。その後何だかんだ電車に揺られながら学校の最寄りの駅に着く。この時間はまだ朝日が昇ったばかりで海が異様に眩しく感じる。こんなに晴れんでもいいのに。

「明日の天気は快晴らしいな。体育祭にはもってこいだな。」

「そだね。」


何だかんだしているとあっという間に時間はなくなり、早速保護者、来賓の方への挨拶から始まった。とはいえこの辺りは別に当日やればいい。そんなわけで早速競技の方へ移っていった。勿論全員はやらないが、第一走者のみやることになった。それだけでもみんなのテンションは上がる。とはいえ俺には生徒会の仕事があるため、基本自分が出る競技くらいしかのんびり出来ない。明日は今日ほどバタバタしないらしいが。

そして最も盛り上がったのはやはりクラス対抗リレーだった。リレーなんかはアンカーもとても重要だが、当然スターターもそれに続いてすごい人になる。ちなみにうちのクラスのスターターは相川だ。スターターが女子というのはだいぶすごいことだと思っていたが、貓俣もスターターとして立っていた。模擬練習のようなものなので何も本気でやる必要は全くないと思うが、周りの空気もあり、どうやらみんなガチで走る様子だった。俺は2人しかよく知らないが、どうせならどちらかが勝って欲しい気持ちはある。しかし12人も同時に走るとなるとさすがに女子には厳しいだろうか。

そんなことを考えていると耳をつんざく激しい音が響く。それと同時に走り出す人と歓声が響く。さすがは各クラスのトップクラスの走力を持つ人達。やる気のない1人を除いてはかなりの速さで競っていた。しかしコースの最後の方では縦一列に近い形となり、結果として貓俣が2位、相川が6位という結果だった。

クラスに置ける各競技の順番などは全員の意見など聞いてはいられないので、大まかに梶山と相川が決めて、意見のある人達がそれを言う形式だった。とはいえ大体の人は別にそこまで強い拘りなどないため、基本的にSNSでつつがなく進んでいった。俺はどの競技も大体真ん中位の場所だった。可もなく不可もないそんな場所。一応樫野校長から言われていたクラスメイトへの注意喚起は行ったが、唯一の懸念点であった不和も今は比較的大人しく、良くも悪くも誰も俺の言葉に反応しなかった。

他にも樫野校長から説明があった競技も第一レーンだけ見たがどれも結構凄かった。とはいえ今日はきっとみんなも本気というわけではないだろう。また明日ゆっくり見るとするか。


全競技が終わったのは13時くらいと早かったが、結局話し合いに次ぐ話し合いで俺たちが解放されたのは18時位だった。

ようやく開いた携帯には太陽や西御門、瀬田さんや春風さんから明日楽しみにしているというメッセージが届いていた。その期待に応えられるように、明日は全力で頑張らねば。桜の件も併せて。

そのために最後のピースを集めに行くとするか。

「あ、お疲れ様です。この後少し時間貰えますか?俺が夏休みに襲われた際の桜の行動を知りたくて。」

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