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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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宵宮や明日に繋げゆ謀 14

事の真相が分かったので、俺は大鵠さん、桜、飯島、荒井、小熊先輩を放課後に呼んだ。桜からは事前に教えて欲しいと言われたが、適当な言葉を言って教えなかった。大鵠さんという抑止力がいるから話せるのであって、俺とこいつだけで話せば何をされるか分かったものではない。

マスゲームのペア申請は本日17時まで。時間の余裕はない。

「じゃあ早速お聞かせ願おうかな?君たちの立てた推論を。」

「いや、悪いっすけど俺と道子は今回呼ばれただけっつーか。何も知らないっす。」

「だから多分桜と狐神君が話すと思います。」

「それが私もよく分からないんだよ。狐神君に呼ばれただけで。」

そうなれば自ずと皆俺に視線が集まる。特に溜める時間も必要ないため、早速話していくか。


「まず最初に考えていた選択肢が2つありました。大鵠さんが嘘をついているのか、桜達が嘘をついているのか。具体的に言えば、何も桜達は俺にしてないのに、それを大鵠さんが桜達が何かしたと俺に伝えた。もしくは桜達が直接的にでも間接的にでも、意識的にでも無意識的にでも俺に何かしたが、それを黙っていたか。前者を考えた場合、大きな矛盾点などはなかったと思います。大鵠さんの勘違いでした、それだけです。後者の場合は考えにくかったです。俺はこの学校の生徒を無作為に選び桜達のことを聞いて回りましたが、何ひとつとして有益な情報を得られなかったかりです。流石に全生徒の口裏を合わせるなんて出来ないかと。」

「じゃあやっぱり大鵠先輩が嘘をついてたんですね!!」

そういうのは桜だけだった。流石にそんな単純な話でないことはそれ以外の人間なら分かる。

「じゃあ桜に聞くが、大鵠さんがわざわざ嘘をついてまでそんなことをするメリットは?」

「えーっと……明確な理由は分からないかも?」

そうだな、確かにプライドとかはあるかもしれないが、一言「勘違いだった、すまん」とでも言えば終わった話だ。ここまでする必要はない。

「じゃあ大鵠さんはなぜ引かなかったのか。理由は単純、嘘は一応ついていないから。」

しかしここで流石に荒井から意見が来た。

「確認させてくれ、大鵠先輩、本当に嘘をついてないんですか?あくまで俺やこいつらが狐神に何かしたと言いたいんですか?」

大鵠さんは興味深そうに俺の話を聞いていた。そして荒井の質問も聞いていたが、その質問に対しては答えなかった。

「どうする?狐神君、俺の方から言っていい?」

その質問の意味が俺以外の人にはよく分からない様子だった。まぁ俺も昨日の話し合いがなければ意味が全く分からないだろうし。

「いえ、俺から話します。結論から言うと桜、飯島、荒井、みんなは俺に対して何もしてない。一応それが今回大鵠さんから与えられた課題の答えだ。」

あまりの拍子抜けの答えに、3人とも黙ってしまった。しかし流石にそこで話は終わりには出来ない。ずっとうずうずしていた小熊先輩が口火を切った。

「でもさっき大鵠は嘘をついてないって言ってたじゃん。それって明らかな矛盾じゃあないかな?」

「それが今回自体を複雑化したものです。確かに俺には害はありませんでした。けれど他の実害は確かに出ていたんです。そしてそれは選挙前の俺に既に向かっており、恐らく名指ししなければ俺は被害を被っていたかと。」

「あー、なるほど。ほぼ確定した未来で君は危害を受けたと。既にその準備はほぼ終わっていたと、そういう事か。でもそれはあくまで予測の範疇を超えないものだ。」

そう、そこまでだったら予測の範疇を超えなかった。

「……当時1800人近い生徒が敵でした。でも可能性として、もう1人、俺の仲間になってくれたかもしれない人がいたんです。それを桜たちは奪った。だから俺にとってはそれは明らかなデメリット。」

「4つの罪を背負った当時の君に?そんな人いるとは思えないが。」

鼻で笑うように小熊先輩はけしかける。

でも小熊先輩、あなただって決して無関係ではないはずです。

「敵の敵は味方。俺も直接話したことは1度もなかったですし、顔すらも写真で見たことしかないです。……小熊先輩とも仲が良かったようですが。」

俺の言葉でようやく事の真意に気付いてくれた。そして次の瞬間には椅子を後ろに吹き飛ばす勢いで立ち上がり、今まで見たこともない剣幕で3人を睨みつけた。きっとここで暴力などに走らなかったのは、少なからず大鵠さんがいるからだろう。

「もしかして……こいつらが……「小熊、座って。ここは話し合いの場だよ。先輩として落ち着きを持って。」……分かったよ。」

冷静さを欠いている小熊先輩よりも俺が話した方がいいのかな。

「雑学部は俺らの3つ上の先輩3人と当時1年生の小熊先輩、そしてもう1人が発足したんだ。」

そこまで言えば流石に2人もその人物が誰か分かった様子だった。その表情には陰りが見え、それに合わせるように夕日が雲に隠れていった。

1人馬鹿みたいにシラを切っている女を放って小熊先輩が当時のことをポツリポツリと話し始めた。

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