下らない暇つぶし 3
夜食を食べ終わると早めに寝る人もいれば、最後のトレーニングをする人もいた。かく言う俺はゴートゥーベッド、なんて出来るわけもないのでランニングマシーンを使って走った。夜のオフロードは危ないからね。熊も出るとかいうし。
軽快な足音を響かせながらみんなのことを考えていた。
分かってはいたがみんなの体力は凄まじかった。普段あんなとろくさそうな会長も、遅れることなくこなしていった。ほんとに生徒会はすごい人達の集まりなんだなと思わさせられる。
そんな中で俺はついて行くことが精一杯か。……だったらみんなより頑張らなくては。いつか肩を並べられるように。胸張って隣に立てるように。
「まだやってたのね。感心感心。でも無茶はだめよ。」
ノアにそう言われ気づけば時刻は12時近くを回っていた。こんなに走るつもりはなかったが過ぎたことはしょうがない。機械から降りると脚がブルブル震えてる。ちょっと無理してしまったか。
「ちょっと頑張りすぎたわね。少しだけ私の部屋に来て。」
意味はよく分からないが言われるがままについて行く。
「じゃあベットに寝て頂戴。あ、服は脱いでおいて。私も準備してくるから。」
マッサージだよねー、知ってる知ってる。別にそんなこと考えてませんから。俺純粋な子だから。
「イダイイダイイダイ!!死ぬ死ぬ!!待ってタイムアカンですよこれは!!ごめんなさい実は少しだけ期待してました!!」
「まぁ少しだけ痛いけど明日には体が嘘みたいに軽くなるから。……何を期待してたの?」
「それはお察しの通りです……いっ!?ごめんなさい!!本当に!!もう二度と異性として見ませんから!!あっ……」
「でも最初は直ぐにダメになっちゃうかもって思ったけれど、頑張ってるのね。」
「ほんとに……頑張ってる……から。」
ノアの丁寧なマッサージみたいな何かがようやく終わり何故かこちらの方が息が上がってる。するとノアが俺の体の様々な場所を触り始める。腕とかならまだいいが流石にお腹や胸、太ももは恥ずかしい……。
「あ、誘ってる?」
「違うわよ。……さっきから思ってたけれど、あなた前から何か運動でもしてるの?筋肉も今日だけじゃなさそうだし、体力もそれなりにあったから。」
じゃなきゃ最初の5キロ走るところからバテてるよね。
「停学の間、何が出来るか考えつつ、その間とりあえず勉強と運動はやってたからかな。だから体力も勉強も平均くらいにはあるとは思うけど……。」
そんなことを考え始めると段々と瞼が重くなってきた。そういやもう12時回ってるんだっけ。それにあんな動けばそれは体が眠りを欲するか。早く、自分の部屋に……戻らなきゃ……。
目を覚ますと若干朝日が出始めていた。遅刻するわけには行かない。布団から出て着替えなきゃ。
「すー……すー……」
「……………え?」
なんてことは無い、布団を剥ぐと隣にはとても薄着のノアが寝ていて、俺は何故か上裸で、そして扉の前には立ち尽くす鶴がいただけの事。
そしてお互い何も言えずにいると遠くから声が聞こえる。
「いや瀬田、ほんとだって。昨日ノアちゃんの部屋からすごい声とベットがギシギシする音が聞こえたんだって。しかもなんだっけか?確か『今だけは女として見てやる』みたいな感じの事言ってたんだよ。でも悲鳴は何となく狐神君みたいな気がしたんだよな。」
「んじゃあノアのとこ行ってみるか?というかそれ纏めると狐神が下のノアが上のセッ……お?どした鶴?何かあったのか?……わぉ。」
瀬田会長が見た絵面はベッドで果てるノア。上裸で鶴ににじみ寄る俺。それに少し怯える鶴。
「……ノアちゃんだけじゃ足りなかったの?」
「違う!!ほんとに違うから!!昨日夜遅くまでトレーニングしててそしたらノアがマッサージしてくれてそれに苦しめられながらも体はどこか気持ちよくなってきて気づいたら寝ちゃっててでもなんで隣でノアがあんな薄着で寝てるのかはわからないけど断じて男女のゲフンゲフンじゃないから信じて下さいお願いしますこの通りです!!!」
誠心誠意の土下座をする。
「鶴ちゃん騙されないでねー。大体男が早口で必死に弁解してる時ほど嘘だから。」
「違うわい!」と土下座の姿勢から叫ぶ。後頭部から叫ぶ。何となく瀬田会長と春風さんは事態がわかってからかっているだけだからまだいいが、鶴は本当に信じちゃいそうだから怖い。
そしてここでようやくノアが起きた。
「ふわぁ〜……。狐神の言う通りですよ。で、狐神を部屋に返そうとしても起きないし部屋の鍵は開かなかったんです。それで男子の部屋に泊めてもらうようとしたんだけどそこの2人はもう熟睡。唯一開けてくれた禦王殘には断られ、せめて服だけでも貸してほしいと言ったらあのバカ、服と間違えてタオルを渡してきたんです。」
「……狐神君の服は洗濯かけてたんだね。」
鶴の視線の先にはハンガーにかけられた俺のシャツ。わざわざありがとうございます。
「じゃあ何でお前はそんな格好してるんだ?」
会長の指摘にみんなの視線がノアに集まる。確かにキャミソールというか少し大人な下着というか、そんな服?下着?ではそんな格好と言われてもしょうがない。ノアは今更だが少し恥ずかしそうに布団を羽織る。
「私は普段寝る時服を着てないのよ。前泊まりに来た鶴ならわかるわよね?」
「……なんかこう……すごかった。」
よほど何かが凄かったのだろう、顔を真っ赤にして俯く。ダメだこれ以上考えてはいけない。……何だろう。
「でも流石に男子がいるのにそれはまずいから、一応服を着て寝たんだけど……ダメだったみたいね。」
すると布団の中からでるわでるわ、上着にシャツにズボンに靴下、それに……。
「……ノ、ノアちゃん。下は履こう?」
これは、アカンデスヨ。