宵宮や明日に繋げゆ謀
狐神の意識が戻ったということで、太陽や此方が帰った後にも何人も見舞いに来てくれた。その人たち以外にもメッセージを送ってくれた人たちもいた。もらったメッセージの数だけ、少しだけ自信が持てるようになっていた。
そんなかんなで俺もやっと体育祭の行事に本格的に協力することになった。とはいえ本格的にやるのは今日からということで、昨日決めたという役割が俺にも伝わった。
「とりあえず保護者向けのパンフレット作成か。」
というか最初に目に留まったけど開催時間9時から18時までって結構エグイな。確かにこの学校の人数と種目数を見れば何となく納得いくが。色とかも12色対抗とか言ったらかなりやばいことになると思うが。
しかしそこは前回のパンフレットを参照することで解決した。
色は2つの組が合体し6色に分けられる。また、各学年の組は同じ色になる(1年1組、2年1組、3年1組は同じ色)。つまりこの時点で俺と小熊先輩、穂積先輩、乱獅子先輩がいる。勝ち確入りました。そして今年の色の振り分けは1組と7組(赤)、5組と6組(青)、8組と10組(黄)、3組と9組(緑)、4組と11組(白)、2組と12組(黒)となった。リーダーで言うと俺は戌亥と一緒ということか。恐らく運動が得意な生徒などはよく考えられて決められたのだろう。しかしてっきり乱獅子先輩が着くのだからもっと運動が苦手そうな鴛海などが付くと思っていたが、戌亥は普通に当たりって感じだな。いや、別にリーダーに外れなんて誰もいないと思うが。
特に色分けについてはそれ以上記載すべきことはないので、次は1番負担のかかる当日の流れについての箇所を作成した。
「えっと、椅子や机、テントなどは前日までに用意が完了するから……」
保護者・来賓の方々への御礼、校長の挨拶、選手宣誓、準備体操、運営委員からの連絡、種目移動及び準備、玉入れ、障害物競走、大玉奪い、1年全員リレー、借り物競争、落穂拾い、Sケン、部活動対抗リレー、昼食、後半のプログラムの案内、保護者会からの挨拶、マスゲーム、大縄跳び、ムカデ競争、2年全員リレー、棒倒し、竹取物語、六つ巴綱引き、着ぐるみリレー、騎馬戦、3年全員リレー、各色選抜リレー。
「20項目を一日でやるなんてそりゃあ9時間くらいあっても足りないや。」
もちろんこの全てに出る訳もなく、大体1人が出る競技数は5個ほど。運動が得意な人は更に出るだろうが、勿論その限度数は決められている。俺が出なくてはいけないものは2年全員リレー、マスゲーム、棒倒し、騎馬戦。この3つは2年男子は全員出場決定。あとは部活動対抗リレーに生徒会が出るかは分からないな。俺は運動は得意ではないから残りは玉入れや大縄跳びぐらいがいいな。
「そして注意事項の記載として……」
『皆さん怪我のないようにルールを守って楽しく競技をしていきましょう!』というセリフの適当にネットから引っ張ってきたクマに喋らせる。一応各クラスリーダーからも連絡はいくはずだから、あまりここには沢山情報を書かない方がいいだろう。逆に保護者から怪しまれても厄介だ。
あとは各色のリーダー達の意気込み、協力頂いた皆さんの名前、保護者向けの案内、予備日、代休、対外向け案内なんかも載せて……。
パンフレットの作成が終わる頃には既に夕方を過ぎ、日没直前だった。他のみんなもぼちぼち作業を終え始め、帰る支度を整える。
「……うん、問題なさそうね。したらこれ貰うわね。」
ノアの許可も下りたということで俺の本日の仕事は終わり。大きく伸びをしてついでにあくびもする。久しぶりこんなに目を酷使させたからだいぶきている。だがこの疲労、悪くない。
「にしても狐神もかなり慣れてきたわね。1年前くらいなんててんてこ舞いだったのに。」
「まぁあれだけしごかれて成長しないわけないよねって話。少しでも力になれたのなら良かった。」
しかしどうしてかそう言うノアの顔はどこか重いように感じた。
「……ねぇ、1つ聞いてもいいかしら。」
「はい。」
「狐神が病院で目を覚ました時、何か感じた?」
あの鶴の父親から襲われた時のことを言っているんだよな。何を感じたかと言われれば、何も感じなかったと思うけど。
「……ごめん、特に何も感じてなかったと思う。多分まだ意識もはっきりしていなかったから。それがどうかしたの?」
「いえ、なんでもないわ」とノアは言っていたが、その表情はなんでもないという感じではなかった。俺の知らないところで何かあったのだろうか。他の人から聞いている情報では特に問題はなかったと思うのだが。
「考えすぎかしらね。」




