移ろう季節と気持ち 11
『運命の赤い糸なんて
小さな私は信じてなかった
大きな人たちが期待を持たせるだけの
信じるだけ無駄なものだと思ってた
そう思ってたのに
君が目の前に現れてから
私の物語は大きく変わったよ
前なら馬鹿みたいと思ってたことだって
君と一緒ならどんなことも楽しかった
喧嘩した日もあったけれど
その分君と分かり合えた
君は私との未来を約束できないと言ったけど
私との未来を考えてくれただけで嬉しかった
私はみんなとは少し違う場所に行くけれど
君もきっとこれから変わっていくと思うけど
ふとした時に思い出すくらいでいいから
心の端に居させてくれないかな
日々不安が増えていく中で
君と会えるそれだけで私は頑張れたんだ
君という存在が私の光だけじゃなくなったのは
いつ頃だったかな、何がきっかけだったかな
現在、過去、未来、君の好き嫌い
君の全てを知りたいと思うのは
ちょっとわがままが過ぎるかな
どうすればもっと仲良くなれるかな
どうすればもっと君といられるかな
2人でたくさん話したけど
答えを探すその時間が答えだったんだね
夏が過ぎて秋が来て冬に変わって春を迎えて
1年後の君はどんな人になってるかな
ゴールの違うスタートラインに立った私たち
この先それが混じり合うことはなくても
お互いが見えるところで走れるといいね
あぁ、もう君に会いたくなったな
どんな困難もどんな苦労もあるか分からない
きっとこの先大きな壁に何度もぶつかる
そんな時に『みんな苦しんでるから』とか
『努力すれば必ず夢は叶う』とか
『やまない雨はない』とか
そんな励ましはいらない
本気でやるって決めたから
私を信じて待ってて
ねぇ、いつか私の夢が叶った時にはさ
たくさん褒めてくれないかな?
そして今度は君のお話を聞かせてね
いつかきっと、必ずだよ?』
「……ふざけんなよ。……俺がここにいるのに……お前が……いない……じゃないか……」
涙なんて抑えられるわけなかった。あの夏の思い出が走馬灯のように迸る。短い時間だったけど、俺の心には十分過ぎるほど鮮明で鮮やかなものだった。心の端?図々しく真ん中の方に居座ってるよ。俺の全てを知りたいとか重いよ。俺だって一緒に話した時間はかけがえのないものだったよ。お互い見えるところって、お前早すぎるんだよ。確かに厳しいと感じたことはあった、でもお前がアイドルになることを信じて疑う日はなかったよ。
「……褒めて……やりたいよ……すげぇよ……この国で1番になるなんて……俺の話だって……聞いて欲しいよ……」
堪らず膝から崩れ落ち、服の袖をぐしゃぐしゃに濡らした。榎本は事情を知っているため、乱獅子を制し、何も言わずハンカチを渡してくれた。今度はそれをぐしゃぐしゃに濡らした。
「……小石……小石。小石ーー!!!!」
これはきっと小石があの月夜が綺麗な日の前に書いていた歌だろう。日々歌詞が増えていくその歌が、まさかお前が作っていたなんてな、思いもしなかったよ。今日のライブは本当に来てよかった。小石、お前の歌、ちゃんと届いたよ。




