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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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移ろう季節と気持ち 6

その後2人は我先にと教室を出ていった。僅かに遅れた俺が駆け出す水仙の肘をみぞおちで受けると少しだけしゃがみ込んだ。その時に確かに見た。何人もの人影がこちらに歩いてきていた。「遊ぼう」「遊ぼう」「遊ぼう」「遊ぼう」と呟いていた。

「私は遊べません!!」

「俺も無理!!」

2人はそこから振り返らずに全力で廊下を駆け抜けた。廊下は走ってはいけない?危ないから?じゃあ危険から逃げるために走るのはありですか?


「びっくりしましたね。まさか校舎にまだ生徒が残っているなんて。」

「しかしこれは僥倖。これで我らオカルト研究部の活動が更に広がってた。この噂は更に広まり、我が主、シュタリヌス様もお喜びになるであろう。」

「誰て?」「日本は信条の自由は約束されてるから」「あ、今度のテスト範囲そこら辺だよな」そんな会話が続く。会話には緊張感の欠けらも無い。しかし黒いマントを羽織り、10人近い生徒が夜の校舎を徘徊していると流石にそれは怖すぎる。

「よし!もっと一般生徒にオカルトの楽しさを布教するぞ!!」

「「おー!ゆうれい、ゾンビ、らんらんらん。」」

オカルト研究部は今日も楽しく活動中です。


「……それで……一応……解決?」

帰り道水仙が京に事後報告をしていた。あれを解決というかは分からないが。しかし俺の責務は全うした。

「まさか本当に出てくるなんて思わなかったよ!!もうやだ……。学校行きたくない。」

「流石にあれは怖すぎる。あの七不思議は本物だったのか。」

俺と水仙の怖がりを他所に、何故だか京は楽しそうに笑っていた。

「ふふっ」

「おい京、何が面白い?ぶっ飛ばすぞ。」

「ご……ごめんなさい。……でも……美桜ちゃん……良かったね……」

「……別に……」

確かに形ばかりは解決したが笑うことか?安堵する気持ちは分からなくもないが。でも確かに水仙も見るとなんか笑ってるし。でも今日ずっとビクついていた様子に比べれば笑えてるだけいいのか。もうこんなことは懲り懲りだがな。


確かに以前に見た時に凄いなとは思った。これほどまでとは思っても見なかった。でもそれをやりたいと思ったことはないし、まさかあいつのためにやるとは思ってもみなかった。

「「はいはいはいはいはいはいはいはい!!」」「こ・い・し!!」「はい!!」「こ・い・し!!」「はい!!」「こーいーしー」「「レッツゴー!!」」

俺は何故か白花のライブでペンラを振っている。

「小石せんぱーい!!こっち向いてー!!」

両隣の限界オタク達と一緒に。VIP席で。2時間も。


時は少し遡り、七不思議の解決から少し経った頃。とあるお声がかかった。

「お久しぶりです狐神先輩。榎本です。少しお時間よろしいでしょうか。」

「よろしくないです。」

電話を切る。インターホンが鳴る。

「小石先輩についてお話があるのですが。」

「俺にはないです。」

インターホンを切る。此方が玄関を開ける。

「失礼します。」

「無敵か?」

「ありがとね、此方ちゃん。……にしても驚きました。本当にあれから小石先輩と関わってないんですね。」

俺の役目はもう終わったからな。クラスメイトではあるが、それ以上の関わりはもうない。今は榎本と色んなことを話し合えてると聞く。自分の本性を、腹を割って話せる仲の友達は1人いれば十分だろう。

「理由がない。とりあえずお茶入れるから俺の部屋に行ってて。此方、案内よろしく。」

「合点。」

「あ、ありがとうございます。」


「すみません、てっきり追い返させるとばかり考えてました。かなり強引だったので。」

「自覚あるなら少しは自重しろよ。……まぁこの暑い中、わざわざ来たのに何も聞かず追い返すのは少し気が引けただけだよ。で?アイドルの貴重な時間を割いてまでここに来た理由ってのは?」

一応こいつだって白花程では無いが知名度はかなり広いはずだ。学校がないとはいえ宿題はかなり量がある。それに芸能界で忙しいだろうそんな榎本が来る理由に少し不安を感じた。

「……3日後小石先輩の生誕ライブがあるんですよ。勿論予約して当選させましたけど、今回初めてVIP席に当たったんですよ。」

そこはどうやらカラオケのコンセプトルームみたいな感じでとても広いらしい。一応チケット1枚で8人入れるらしいが、そこに1人でいるのはあまりにも虚しいらしい。それなら深見でも誘えばと言ったが、深見はそこまでライブには興味がないらしく、きっと一緒に行っても逆に盛り下がると思ったようだ。

「でもそれなら俺が行っても同じだろ?」

「私もそう思ったんですけど、どうやら次やるライブは小石先輩が初めてオーディションで使った曲らしいんですよ。ほら、狐神先輩が以前幼少期に話していた小石先輩が踊っていた曲です。今まで1度も本番で使ったことないらしいですよ。」

あぁ、あの曲か。あれはまだ鮮明に覚えている。何せ本物のアイドルが目の前で踊ったステージだからな。

「どうです?興味湧きました?」

正直心がだいぶ揺れた。結局俺はオーディションの本番は白花の父親に怒鳴りつけられてほとんど見れてないからな。それをまた見れるというのは貴重な機会だ。

「いや……必要なら動画で見ればいいや。」

「いますよね、わざわざ高いお金払って遠くに赴いて、人混みの中、あんまり見えないアイドルを見るよりも上がった映像を見ればいいと思うタイプの人。勿論その映像も見ますが、是非そういう人にこそ1度でいいのでライブに行って欲しいです。」

「何?勧誘?」

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