三角関係 7
依然として水仙は泣いているが俺は特に何もしなかった。冷たいと思われるかもしれないが、泣きたい時は何も考えず泣けばいいと思う。余計な励ましや慰めなんて邪魔でしかない。それに俺がこいつを宥める理由なんてない。
その間俺が警察になんて言おうか考えていると、勢いよく扉が開き、これまた勢いよく男が入ってきた。これには泣いていた水仙も涙が止まる。入ってきたというよりかは吹き飛ばされてきたという方が合ってるが。
「忘れ物を取りに来たら禦王殘と会ってね。それでここに来たらその男がまるで盗み聞きしてたみたいだから禦王殘が部屋に入れてくれたのよ。」
「はは……お優しいこと。」
男は白目向きながら鼻血出しながら涎垂らしていたがきっと恐らく淀川だろう。自分の今後が不安になって聞き耳を立てていたのか、ここまで来ると無様だな。でも丁度良かった。2人の意見も聞いておきたかった。
といっても先程ノアには話したから水仙から了承を得て禦王殘に話をした。
「つまりその女は初めて痴漢され怖かったとはいえ、写真でそこのを脅迫。彼氏として近くに置き余計な事をさせなかった。そしてお前ぇに冤罪をかけた。んで淀川は水仙を痴漢しそれを利用され下僕に落ちた。そしてお前ぇに罪を被せた、と。普通に退学でいいと思うが判断は狐神がすべきだ。」
「でも脅迫と言っても結果何も要求はしなかったのよね。近くに置いてたといってもそれ以上は何も無かった。まぁでも2人とも罪はあるわね。停学くらいで私はいいと思うけれど、やっぱりあなたが判断すべきね。」
2人の目線がこちらに向けられる。
別に今更痴漢は冤罪でしたって言ってもな。でも「2人とも反省してるしもういいよ。」なんて反吐が出るほど気持ち悪い事は言いたくないし。どうしたものか。
「……何してるの、ノア?」
「ちょっと気になってね。」
伸びてる淀川の体の至る所を触るノア。これは場所によってはまずいですよ。お腹や腕ならまだいざ知らず。あ、太ももはそろそろまずいですよ。ズボンの内側に手を突っ込むのはまずいですよ!!
「ノア!?あ「これね。」……何です?それ?」
メモ帳。ノアはそれをペラペラ捲る。すごい速度で目は動き、やがてそれを禦王殘に渡す。そしてすぐ読み終え俺の元へ。「どうも」と言い俺も中を見てみる。
「弱みを握られた人間が取る行動はだいたい決まってるのよ。無理やり黙らせるか、相手の弱みをこちらも掴むか。だけどそのメモ帳を見る限り後者ではなさそうね。あなた達二人揃って周りに誰もいないこの状況を狙って来た、って感じかしら。忘れ物をしてよかったわ。」
ふとノアの方を見ると淀川の背中辺りから黒い大きなものを取り出した。本物を見るのは初めてだったが、それが何かはすぐにわかった。拳銃だった。それを禦王殘がやや強引にノアから奪い取る。「あんま危ねぇから触んな。」と一言。手馴れた手つきで弾を確認する。
「確かこいつの親が警察関係だったか。弾は入ってねぇよ。脅しにぁ十分て考えたんだろ。」
それをポケットにしまい何も無かったかのようにする。……え?持ち帰るの?
「んだよ?メモ帳は見終わったのか?」
「あ、いやまだ……」
拳銃の事は気になるがとりあえずメモ帳を読む。そこには俺や水仙の情報が書いてある。とはいえそれも大した情報はあまりなく脅しには到底使えないもの。
途中の1のページを覗いては。
「なんでこいつがあいつの事……あの女か……」
「……どうしたの?」
「いや、なんでもない。一応お前も見とくか?」
そう言ってメモ帳を水仙に渡すとゆっくりとベッドから立つ。まだ少しお腹に違和感はあるが支障はない。そして淀川のところに歩いていくと頬を軽く叩き起こす。
「ん……あれ?僕は……」
「おはようございます。唐突ですが取引しましょう。俺はこの件を黙ってます、ですから俺や水仙の詮索をやめてください。どうですか?」
唐突すぎて全く話が見えてなさそうだが向こうにとっては願ってもない話。でもあまりにもうますぎる話に疑惑もあるだろう。なんか適当につけとくか。
「もう痴漢の冤罪を晴らしたところで俺の評価は上がらないでしょうし、周りをウロウロされるのも嫌なんですよ。うっとおしいですし。」
こんなので納得してくれたらしく、激しく首を縦に振る。「どうもです。」と俺が言うとそそくさと部屋から出ていった。水仙にも「別にお前にも何も求めやしないよ。」とメモ帳を返してもらい退室を促した。
「その手帳に何か書いてあったの?」
ノアと禦王殘が退出しようとする前にそう言われた
この2人になら少しくらいは話してもいいだろう。
「……間接的な脅迫だよ。向こうはまだはっきり気づいてはいないけど。淀川はただ利用されただけで全く気づいてないと思う。」
「よくわからないけれどあなた、本当に敵が多いのね。」
「人形使いさえどうにかなれば比較的楽になるんだけどね。ありがとうな。この後警察が来るんだ。すまないが……」
「気にしなくていいわ。お大事にね。」
その後警察には俺に起こった度重なる不幸を説明した。警察は首を傾げながらも納得してくれた。




