移ろう季節と気持ち
そんなわけで早速夏休み初日。本日は一気に気温が上がり夏模様。天気予報士も熱中症に警戒するように促していた。
俺と太陽が待ち合わせの15分前くらいに着いてしまい、少し早すぎたかなと話していた直後に双方東西から向き合ってきた。
東、牟田 和角。本日のファッションは年頃の女の子らしく、見せるところは大胆に見せてるガーリー色強めの印象。髪も後ろで結び、水色の髪留めが涼しめな印象を与えてる。恐らく日焼け止めなどは塗りたくっているだろうが、少しこの日光は怖いところではある。まぁそんなものよりも太陽に見てもらいたいのだろう。
西、西御門純。こちらは露出を抑えた大人びた印象のファッション。フレアスカートに上はキレイめなシャツに薄いカーディガンの様なものを着ている。見た感じ清潔感で勝負しに来たのだろうか。かつての中学生の時とは大違いのファッションに俺も一瞬誰か分からないくらいだった。
「お2人は早いですね。私も少し早く出たつもりだったのですけど、お待たせしてしまってすみません。……あ、牟田さんも本日はよろしくお願いします。狐神君のお付き添いですか?」
「ん?違うよ。涼原君に誘われたんだ?」
「え?俺が「黙って……そんなわけで今日はよろしくね、西御門さん。そういえば狐神君が西御門さんと沢山お話したいって言ってから、是非お話してあげてね。」」
「え?俺別に「二度言わせないで、削ぎ落とすわよ。」」
なんか俺がいいように扱われてる気がする。外野から見るのは好きだが巻き込まれるのは嫌だな。
「で、太陽、今日はどこ行くんだ?」
並びは西御門、太陽、牟田、後ろに俺。3:1の構図で並んでいる。何となく予想出来てはいたが、背中に語りかけるのは少し寂しい気持ちがあるな。
「4つ離れた駅に大きなショッピングモールがあるだろ。そこでいいかなと。」
確か色んなお店が入ってる複合施設だったかな。変に遊園地とか行って待ち時間120分とか地獄の時間を過ごすなんて羽目にならなくて良かった。
「……」
何故だか牟田が太陽から離れて俺の横へ来た。正直その顔からは何を考えているのか全く読めない。
「どした。もう降参か?ポツダム宣言か?GHQからのマッカーサーか?」
「はっ倒すわよ。……流石に4人で来て1人ぼっちにさせるのは悪いと思っただけよ。私もこんな性格だから似たような経験あるし。……ダメね、ここで譲ってたら勝てないって分かってるのに。」
「……でも太陽は「どっかで勝負しなくちゃ。」」
それから目的の駅に着くまでなんだかんだで話をしてくれた。勿論基本的には太陽のことだったが、たまに学校のことも少し話をした。本人は現在進行形で太陽の好感度が下がっていると落ち込んでいたが、多分太陽は牟田の気配りができるところに好感度は上がっていると思うんだけどな。
そんなわけで着いたショッピングモール。まだお昼までは時間があるということで、大きな目玉でもある本屋へ行くことになった。後になって気づいたが、本屋を提案した牟田は図書委員だった気がした。俺と話していたことによって下がった好感度をここで挽回するようだ。因みに俺の知るところでは特に太陽は本は好きではなかったと思うが大丈夫だろうか。まぁ俺も別に読書は嫌いでは無いが好き好みもない。とりあえずそこら辺に置いていった参考書などを眺める。途中まで読んだが気が滅入る一方なので料理本の方へ移動した。パティシエは何となく若い人のイメージがあるが、雑誌の表紙を飾る人は俺と1つしか変わらない人で無愛想な表情につい笑ってしまった。
「意外です。料理するんですか?」
「別にそんな大したものは作れない。普通だと思うよ。」
「いや、料理をするということ自体偉いと思いますよ。」
「別に俺を褒めても太陽の好感度は上がらないと思うけど。」
「なんかネガティブですね……。」
確かに中学生の頃の俺はここまでネガティブ思考だったかと言われるとそうじゃなかった気もする。斑咬とは一悶着あったが基本的にそれ以外は普通の学生だった気がするし。前までの俺ってどんなのだっけ?太陽は低反発だから俺が変わってもあんまりそこまで対応を変えてこなかったのだろうか。
「変わったのかな。よく分からない。」
「あまり中学の頃は話さなかったですからね、私たち。でも今の狐神さんは嫌いじゃないですよ。」
「俺は自分のことは嫌いだけどな。さて、そろそろ場所を変えるとするか。俺も本は別段好きじゃないし。」
その後はファッション店や靴屋などを巡り、お昼を過ぎた時間帯にフードコートに入った。夏休みとはいえ平日、それに若干過ぎた時間のそこは席取りなどに苦労はしなかった。
女性陣は綺麗な彩りのサラダとオムライス、もう片方はその日のお任せメニューである焼き鮭ごはんと野菜ジュース。男性陣は俺は蕎麦、太陽はうどんを食べた。俺は基本的に喋りながらご飯を食べることが少し苦手なため、基本聞くことに徹する。とはいえ俺に話題が振られることがまず無い訳だが。
やがてもうすぐ蕎麦を食べ終わる位に西御門に話を振られた。
「そういえばそちらの体育祭はいつ頃なんですか?もしよければ行きたいのですが。」
「夏休み終わったらすぐだと思う。」
「そしたら太陽君と文化祭に伺いますね。」
その時西御門の考えがまるでテレパシーのように受信してしまった。「それを言え」と西御門の目が訴えてくる。でもそれで牟田に後で何をされるか分かったものじゃない。目逸らし。
「……」
圧が……圧がやばい。松山 主水の心の一方でも使えそうなくらいやばい。
「……そ、それはまるで、恋人のようなふくらはぎっ!?」
ようやく勘づいた牟田が机下から全力で蹴ってきた。
「えっ!?いやですね狐神さん!!私たちはまだ友達ですよ!!……でもやっぱりそう見えちゃいますかね、太陽君?」
「どうなんやろーなー。」
はっ倒すぞこの野郎。何でお前の為に俺が2方向から攻撃されなきゃいけないんだ。
「……」
まだ続けろと言うのですか西御門さん!?
「ふ、2人の歩く姿は、見目麗しい長内転筋っ!?」
こいつ、太もも内側を思いっきりつねってきやがって。
「何でさっきから隠喩なんですか?」




