三角関係 3
「忘れてました。淀川さんについて少し調べたんです。ほら、生徒会は無駄に権力持ってますから。だからちょっと確認させて欲しいことがいくつか。……沈黙は肯定と受け取ります。家族は両親と2つ上にお兄さんがいますね。しかもお兄さんは全国でもトップレベルの学校に首席ですか。両親も弁護士と警視監。すごい家庭ですね。そしてあなたは……思うように成績が伸びず、この学校に受かった。動機はこれでいいですね。」
「確かに親から感じるものはあったが、いい大学に入ればいいだけだよ。動機には足りない。」
「それを決めるのは第三者とかそこら辺の人です。次は水仙を狙った理由ですが……まぁ顔もいいですし、いかにも強く出れなさそうなとこですね、はい。あ、あと1年ですからね。それに乗る駅も同じなんですか。へー……」
徐々に僅かだが淀川の顔に余裕がなくなっていく。いつの時代も情報というのは本当に強い武器と思わされる。
「水仙て淀川さんから見てどうですか?」
「普通にいい子だよ。見た目も勿論中身もすごくいい子なんだ。正直僕には勿体ないくらいだよ。」
「それですよね。ホント勿体ない。でもそんな子が俺に汚されたっていうのにあんまり怒っては見えないんですよね。というよりかはその事については避けてるような。まるで無駄に情報を話さないように。」
「……」
沈黙は肯定とさっきも言ったぞ。この人は普通に頭が切れる人だから簡単に情報を漏らすとは思えない。となると「安易に話すな」と命令でもされてるのかな。
「そろそろ俺も行かなくちゃいけないので失礼します。お時間をとっていただきありがとうございました。」
頭を下げ最後に笑う。淀川の顔には変わらず僅かに焦りが見えた。その顔をみてその場を去る。
「あ、そうだ。この前見た本で、ああいった静かな女の子ほど裏があるって言ってました。淀川さんもお気をつけて。」
今日は生徒会の仕事はなく、特に用事はない。さっき話を切り上げたのは一気に攻めすぎるのは良くないと前に禦王殘に教えてもらったからだ。攻めすぎるとこちらの予想をしないことをしてくるかもしれないと。
何となく気分転換にまたあいつに会うことにした。
「ニャー」
「おー、今日もいるのか。」
今日はスーパーで買ってきた猫じゃらしみたいなものを持ってきた。このくらいなら飼い主にもきっと怒られないだろう。こいつはこういうので遊んだことがないのか、めっちゃ喜んで遊んでる。と思ったら一気に冷めたのか興味を無くす。ほんとに猫は気分屋だな。
結局いつものように俺の上で寝た。確かに夜の方は少しづつ寒くなってきたから温もりが欲しくなる。そう思い猫に手をのばすが寸前でどこかへ行ってしまった。その温もりはすぐになくなってしまった。
とりあえず向こうがアクションを起こすかもしれないという訳で2、3日は待機。生徒会室に入り何か役立つ情報がないか調べる。
「なんだよせっかく静かに寝れると思ったのに。」
振り返ると寝癖がついた瀬田会長がいた。察するに今まで保健室で寝ていたが追い出されたか、うるさい連中が入ってきたかだろう。「寝るから起こすな。」と睨まれるとそこらへんにあった椅子を集め寝息を立て始める。既に怒っているがうるさくすると更に怒られそうなのでやや気を使って作業を進めた。
ふと気付くととっくに日没しており外は真っ暗だった。時計を見ると下校時間が迫っている。瀬田会長には起こすなと言われたがさすがにこのまま放置している方が怒られそうだ。体を軽く叩くくらいなら平気だろ。
「瀬田会長、もう下校時間ですよ。このままだと警備員さんに怒られますよ。」
「ん、ああ。あー……ああ。」
どうやら寝起きは悪いらしい。俺もあまり寝起きはいい方ではないと思うが、学校でここまで熟睡できるっていうのはすごいな。
「そういえば瀬田会長に訊きたいことが。大丈夫ですか?起きてます?」
「あ?ああ。」
ほんとに大丈夫かな。半ば強引に連れ出したけどこっちの方が面倒くさい気がしてきた。酔っ払った同僚とか連れて帰る社会人てこういう事かな。まぁ社会勉強と考えればいいか。
「会長は俺が退学になるって時、何かしてくれました?」
「いや、なんでそんなことしなくちゃいけないんだ?面倒臭いしそれ以前に動機がないだろ。」
「ですよね。じゃあやっぱり誰なんだろう。」
俺は前に式之宮先生に言われたことを会長に伝えた。でもやはり会長も全く見当がつかないらしく、顔にハテナがたくさん書いてあった。
「でも普通に考えて金とかそういうもので解決できるものではないだろうな。普通に考えれば権力を持つ校長辺りが怪しいが。」
一応生徒の中で最も権力を持つ人がこう言うのだ。生徒という線は薄いだろう。校長ね。確かに面識はあるし、それなりの関係ではある。でもあの人ではないと思うんだよな。良くも悪くも生徒は平等に扱うことを大切にしているし。