表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
28/592

三角関係 2

痴漢の冤罪をきせられてからしばらくしたある日、顔だけを頼りに何とか淀川の元までたどり着いた俺は淀川に詰め寄った。「お前がやったんだろ」「自白しろ」「水仙にはちゃんと謝れ」だけど淀川の答えは一点張りだった。

「君は何を言ってるんだ?」

そのうち俺が間違えてるんじゃないかと思ってきた。似た顔なだけで犯人は他にいるんじゃないか?この人は本当に何にも知らないんじゃないか?一度そう思ってしまうと何だか強く出ることが出来なくなっていた。そんな折、水仙さんがその男と付き合ってるということを聞いた。出会いは同じ部活だったこと。そしてあの日起こった怖い体験をずっと聞いてもらっているうちに心惹かれたとのこと。その後直ぐにまた淀川に詰め寄った。「端からこれが目的だったんだな」と。それに対する淀川の答えは一言。

「目的はあの体だけだよ。」

その1回以外で奴は仮面を外したことは無い。


久々に夢なんか見たな。昨日久しぶりにあれだけ関わったもんな。それは夢にも見るか。

目玉焼きを眺めながら思う。この事件については証拠を集めようと思えば集められたかもしれない。あれだけの生徒が込み合った状況にいるんだ。もしかしたら目撃者ぐらいいてもおかしくない。でも今やこんな俺に力を貸してくれる生徒がいる訳もない。当時ですら見つけられなかったというのに。

ご飯を食べ終え制服に着替える。準備が整うと妹の部屋をノックし「ご飯は用意してある」とだけ伝えて家を出る。


登校するや否やいつもより鋭い眼光で睨まれる。だけど鈍感系主人公の俺はそんな目線を気にせず真っ直ぐ水仙のところへ向かう。だが当然素直に話させてはくれない。

「なぁ相川、俺は水仙と平和的に話し合いをしたいだけなんだが。クラスメイトが話をするのに問題でもあるか?」

「昨日の話は聞いた。その上で「はいそうですね」って通すわけないだろ。黙って席に着け。最後通告だ。」

「俺もできるならそうしたい。でもそろそろ問題を解決したいし、お前も水仙の体が汚い男に汚されるのを見たくはないだろ。」

この言葉にブチ切れた相川はそこら辺にあった机や椅子をぶん投げてくる。さすがに当たったら洒落にならないので全力で避ける。体はまだ完治してないので多少痛むが。……にしてもほんとにこいつ邪魔だな。

どうするか考えていたところ意外にもこれを止めたのは水仙だった。どういう訳か俺の話を聞いてくれるらしい。当然2人きりではなく誰かつけるらしいが。

そして放課後。

「それで話って何かな。私はもう話すことはないと思うんだけど。」

「俺の意見は変わらず犯人は淀川だって話。でもこれだといつまで経っても平行線だからそろそろアプローチを変えようと思って。」

「アプローチ?」と不安げな顔を浮かべる。別に誰もお前に変な事しようなんて考えちゃいないよ。

「何する気だ?」と水仙の代わりに相川が俺に尋ねる。

「もう俺が無罪である証拠集めは辞める。代わりに淀川を犯人にする証拠を集める。お前にはこれを邪魔して欲しくない事を伝えたかった。」

その言葉に水仙は戸惑い相川は一層怒りを露わにする。それはそうだ。彼氏を犯罪者にするから邪魔すんなと言ってるもの。意味もよく分からないし当然看過できるものではない。

だけどそうする事で視線は集められる。そこに油断は生まれる。

「てなわけで手始めに淀川のアリバイでも確認しに行くか。なかったら犯人に一歩前進だ。」

2人に何か言われる前に俺は2年の教室へと向かった。スタコラサッサと。

淀川は流石人望が厚く、いつも誰かしらに囲まれている。そんな生活疲れてしまいそうだが彼女がいればそれが癒しにでもなるのだろうか。それとも囲まれていて疲労は感じないのか。なんてぼーっと見ていたらやがて俺の視線に気づいたのか、こちらに歩いてくる。ここは2年の教室だから俺の名前を知る人こそ多いが、顔までは知ってる人はあんまりいない。

「何かな、自意識過剰じゃなかったらさっきからずっと見られてる気がするんだけど。」

「安心してください、見てました。ちょっと場所変えて話しませんか?」

淀川のいいところは誰であろうと、俺なんかであろうと話したいと言えばそれに付き合ってくれる事だ。大体の生徒なら俺が眺めてた時点で会議室送りだ。

「それで話って?まだ君が犯人じゃない証拠集めしてるの?」

「それはもう辞めました。これからはあなたが犯人の証拠を作っていこうかと。」

「それ何が違うの?というか作っていくってそれを堂々と言っていいの?」

とりあえず笑っておく。そうすれば向こうも何か適当に受け取ってくれるだろ。ニコニコ。……きもちわる。

向こうも同感なのか、大きなため息をつく。でも考えていることは全然違ったらしい。

「あの時の君は自分の無罪を証明するために必死だった。色んなものを失うことを恐れてたから。でも今の君からは余裕すら感じる。失うものがなくなった人間は怖いものだね。」

別に失うものがないわけじゃない。生徒会が無くなったら俺の居場所はもうないし、妹だっている。ほんとに何も無くなったら俺はきっとこの学校に包丁を持ってきて恨んでる人を全員殺す。

例え殺しはしなくとも、復讐として、真っ先に刃を向ける人は決まっているが。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ