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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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おてんば美女と冷徹野獣

キャンキャンうるさい永嶺はその後も騒ぐことはなかった。

少し遅れて永嶺が榊原と挨拶をしていた。永嶺は比較的いろんな人と話すから榊原ともそれなりに話していた。因みに榊原は昨日様々なクラスメイトと話していたが、今日はもうあまり話しているところは見ていない。2日目でこれではやはり友達には恵まれなさそうだな。そもそも一年を経てほとんど関係ができ上っているところに入ってきても、相当のコミュニケーションだったり、趣味が合う人がいないと難しいだろうな。そういや榊原の趣味とかなんだろう。

そんなとき、丁度いいタイミングで永嶺が同じ話題を出した。

「僕の趣味、ですか。これといったものはないですが、休みの日は散歩とかしてますかね。」

「へぇ~、どこら辺を歩いたりするんですか?」

「この辺りを散策してます。」

だめだ、永嶺が何とか会話を続けているけど何の面白みもない。まだ一部の人間に引かれても話題性がある方が面白い。なんだ散歩って。仕事を退職した後に家で何をすればいいのかわからず、とりあえず家事で忙しそうな妻にジト目で見られて居づらくなった父親かよ。


「さて」

うちのクラスの話はどうでもいいとして、禦王殘のクラスを見に行くとするか。禦王殘のことだから俺が何かできることなんて何もないだろうし、そもそもあの考えも大鵠のただの妄想に過ぎない。でも一抹の不安を脱ぎ去りたかった。

そして禦王殘のクラスに近づいていると後ろから声を掛けられてた。

「そんな嫌そうな顔しないでよ。凹んじゃうよ。」

「それは無理な相談ですよ。一藤もいますし。」

明らかに周りから一歩引かれた大鵠と一藤がいた。この二人が動いている時点で俺と目的が一緒なのは明白。どうせ断ったところで絶対についてくるだろう。

「狐神君は転校生があの人の弱点だと思いますか。それとも一般人だと思いますか?個人的には絶対に前者がいいんですよね。本当にあの人って弱点見つからなくて困ってるんですよ。一時は生徒会の仲間で最も弱いあなたを利用しようという考えもあったんですけど。多分いざとなったらあなたのことを見捨てると思いますし。あの人の弱点を欲している人間はあの界隈、というか本家分家にたくさんいますからね。」

懐かしいな一藤のこの感じ。別に訊いてもいない情報をたくさん話してくるこの感じ。なんとなくこの人が禦王殘に勝てない理由はこういったところもあると思う。

「俺はようやく最近穏やかになってきたので、普通の転校生さんがいい。」

「それはおかしいですねぇ。」

言葉の意味がよくわからず振り返ると、目の前の一藤の顔があった。一藤の瞳に映った俺の顔は自分でも冷静になるほど無様におびえていた。

「穏やかに暮らしたいのであれば、あんな人間たちに関わるのは違うでしょう。あなたのクラスの白花さんも同様です。身分違いでしょう?口ではそんなことを言いつつも、あなたが望むものとは正反対にいる者と関わりを持とうとする。もしかしたらあなたが求めているものは平穏ではないのではないですかね。」

「......知らん。」

否定したい気持ちはあったけれど、こいつと話せば話すほどこいつの思うつぼだと思った。やがて禦王殘のいる5組についた。なんとなく教室に入りづらく扉からこっそりと中を伺う。

「たーのもー!!」

そんなものは一切知らんと大鵠が扉を勢いよく開ける。その瞬間教室全員の視線が一気にこちらに来た。俺と大鵠のメンツにみんなが困惑していた。

当の本人はメンツを見て、誰にどんな要件があったのか一発で分かったらしい。その顔は俺の昨日の言葉もあってか覚悟が決まったような顔だった。

「何のようだ。」

「誤魔化すなよー、転校生に決まってるじゃないか。どんな子だったんだ?男?女?ブサイク?ブス?」

「女だったか。顔は知らねぇ。」

それだけ言うと席を立って教室を出ていってしまった。大鵠や一藤はつまらなそうにやがてその場を去っていった。

勿論話がそこで終わることはなく、後ほど禦王殘から電話をもらった。

「『姫』の事を他に誰か知っているか。」

あの場には俺の他に鶴、禦王殘、乱獅子がいた。その旨を伝えると鶴も連れてくるよう言われた。乱獅子は距離的に恐らく聞こえないだろうという判断。

2組に向かうと兜狩と鶴が何やら話し合っていたが、こちらを優先してくれた。どうやらクラスの何かを話し合っていたらしいが、後は兜狩1人でもどうにかなるとの事。

生徒会の仕事は本日は休みだった。準備が大変だっただけに、入学式が終われば仕事はごっそり減った。


そして送られた位置情報を鶴と一緒に辿っていく。

「やっぱり転校してきたのってやっぱりその『姫』って人なのかな。」

「……多分そうなんじゃないかな。どんな人だろうね。」

ここまで話題に上がっているにも関わらず、全くと言っていいほどその人について何も知らない。ただ禦王殘にとって多分大切な人なのかなくらい。好きな人、とかだったりするのかな。

「……ここ、かな」

「違うと思うから今すぐ迅速に去ろう。」

位置情報が確かに指し示していた場所は明らかにギャングとかマフィアとか暴力団とかヤクザとかがいるような場所だ。事実入口には隻眼の怖いお兄さんがチャカっぽいものをぶら下げながらヤニふかしてる。

「……あ?何見てんだ?」

「鶴、逃げよう。」

「……あの、ここってどなたの家でしょう「何でもないです失礼しました!!」」

この子は変なところで恐れがないというか、不審者に声かけられたら普通について行きそうで不安になるわ。話しかけていい人と悪い人の区別もつかんのかい。

「ちょっと待てやガキ共。」

ちょうど吸い終わってしまったタイミングでしっかりポケット灰皿に吸殻を捨てていた。一見悪そうに見える人が逆にそういうことするとポイント高いな。言うてる場合か。

「あんたら、狐と鶴やろ。」

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