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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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新編成と新入生 11

教室に戻るとまだ榊原は来ていないらしい。席に着くと早速後ろの席の水仙に話しかける。

「桜介君と少し話したけど、めっちゃいい子だな。」

「え、早いね。確かに話したいとは聞いてたけど。」

「水仙の事を守るってさ。随分とかっこいい弟だな。」

「そんなことないよ。カッコつけたい歳なんだよ。……あのさ、桜介って……」

「……あぁ、だって水仙だと被るから。だから桜介君て。別に男同士ならそんなに問題ないと思ったんだけど。」

「……」

「何?」

「……別に。桜介は桜介なんだなって。」

だっていきなり『美桜』なんて呼ぶのは流石にまずいだろ。昨今何がハラスメントになるか分からない。特に俺はそのボーダーが未だ低いだろうし。俺は配慮の出来る男だからちゃんとその辺考えている。

「それでは狐神君も戻ってきたので、席替えをします。」

遠井先生の一言で一気にクラスのテンションはハイになった。よくもここまで席替えではしゃげるものだ。俺が隣になったら絶対に冷静になるぞ。席が1つ分多いのは榊原君の分だろう。流石にそれに全員が気付かないわけないから、転校生が来るというのは周知なのだろう。

「じゃ。」

なんだかんだお世話になった周りの連中に一言挨拶すると、みんなも一言ずつ「おう」「うん」「またね」と言ってくれた。別に少し席が変わるだけなので、全く感傷的にはならなかった。適当にクジを引いて座席を確認する。鏡石みたいにみんなに見せびらかす連中もいるけれど、勿論俺の席など気になる人なんておらず、やがてみんながクジを引き終わった後、席を一斉に移動させる。


結果、右よりの1番後ろ。右隣の人はおらず、榊原の席。そして左隣は。

「……死ねよ。」

不和。前は。

「……」

誰も座っていないが、誰かは容易に想像がつく。今日唯一休んでいる永嶺だろう。

「終わった……」

頼む。前の席に戻してくれ。

しかし当然俺の願いなんて届く訳もなく、一部は喜び、一部は同じように沈んでいた。特に白花、水仙、京、少し離れて鏡石のエリアは我がクラスの最高戦力が揃っていた。対照に村上や羽鳥、天羽などが集まってるあそこは地獄と化していた。

「……何?」

「いえ、楽しそうな席で何より。」

それだけ言うと、前に向き直った。右前の五十嵐はあの事件以降、基本的にずっと1人だった。嫌な言葉だったとはいえ、こいつの言葉を聞いたのは本当に久しぶりだった。しかし事件直後と違って、少し吹っ切れたような、一皮剥けたような感じがした。清々しいまでに。

因みに左前は車谷。こいつも天羽同様、酷く落ち込んでいた。その原因は間違いなく不和だろうな。今も机を軽く蹴って車谷の椅子にガツガツ当たっている。

賑わう教室をいつの間にか出ていた遠井先生が戻ってくると、クラスから「おぉ!!……おぉー……」と声がした。最初は少し声が上がっていたが、顔を見てボリュームが下がる。相変わらず見るからに冴えない顔してるもんな。転校生が異色を放つのは基本漫画とかぐらいだし。

「はっ、初めまして!!きょっからこのクラスの転校生の榊原優です!至らぬ点も多くあるかと思いますがよろしくお願いします!」

俺は転校とかしたことないから分かんないけど、すごい緊張するんだろうな。ガッチガチのロボットみたい。みんなからの受けは悪くは無さそうだが、見た目のしょぼさもあって期待値は低そうだな。

「では榊原君の席はあちらです。狐神君、フォローお願いできますか?」

「はぁ。」

どうやったかは分からないけど、何となく榊原が俺の隣に来ることは分かってた。遠井先生の目も『しっかりお願いします』とヒシヒシと伝わってくる。別に人の面倒を見るのは此方で慣れてるからいいけど。

「よ、よろし「おい転校生君よぉ。こいつろくな奴じゃねぇから気をつけろよ。普通に暴力沙汰とか女襲ったりするからよ。」」

……最悪だ。これには俺以外の周りの人間も引いた。遠井先生から叱責の言葉があったが、勿論そんなもので不和が反省するわけが無い。榊原もすごい苦笑いしてるし。どっちがいいものか。

「……えっと、気にしなくていいよ。全部こいつが言ってる戯言だから。みんなの顔見れば分かると思うけど、この人クラスでも浮いててさ。とりあえずイキリ散らかしてるみたいな?頭悪いからしばらく調子乗らせておけば満足するから。」

俺の言葉にクラスの雰囲気がまた悪くなる。俺に煽られるどころか、ここまでコケにされたことが意外だったのか、一瞬ぽかんとした後、一気に激昂した。

「……ぶっ殺してやるよ!!」

「おう、頑張れ。」

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