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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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三角関係

「……2人はね、元々会長の座を狙ってたの。それでちょっとした勝負をしたらしいんだけど、結局2人とも勝てはしなくて今の位置になったんだって。私はどこでも良かったし、春風さんも特にこだわりはなかったから。」

「ほへー」

出来ればその事を詳しく聞きたいが、目的の部屋に着いた。今俺と鶴は部活の抜き打ち監査を行っている。もし部活中にろくなことをしてなかったり、前にはタバコを吸ってるのをバレたり、まぁちゃんとしてるかをチェックする。今日見回るのは順番にオカルト研究部、相撲部、アイドル研究部、料理部。正直心休まる部が全く見当たらない。料理部なんて前お湯ぶっかけられたから今度は冷水かな。因みにマスクを着用中。バレないといいな。

「こんにちは、生徒会の「うるさい!!……すみません、今儀式中でして少し静かに。乗り移られますよ。」」

すっげービビった。ホラー映画みたいな演出だったぞ今の。ジャンプスケアは反則だぞ。おかげで鶴の腰が抜けてなんか少しいやらしい感じになっちゃったじゃないか。

「……こ、狐神君。」

「お、おう。大丈夫か?」

「……こ、腰が。ぬ、抜けちゃってもうダメ。ちょっと休ませて。」

「お、おう。あの、申し訳ないんですが椅子をいっき「ドーマ!」「ヘビュラ!」「アジヌー!」「「「ヌオー……」」」」

その後鶴が休んでいる間、何故だか俺もメンバーに入れられた。何を召喚したかは分からないが、何かできたらしい。オカルト研究部は普通に怖いだけの部活だった。


続いては相撲部。相撲部は全国でもあるところが少なく、毎年全国へ出ている。何度かテレビで見るような大相撲の選手も排出しているらしく、すごいなぁと言う感想。ただやっぱり運動部でも指折りに怖いなぁとは思う。何でだろう、酒瓶で人とか殴りそう。

「何?抜き打ち監査?まぁうちは別に構わないが調べても何も出ないと思うよ。でも邪魔だけはしないでよ。」

しばらくその練習を見せて貰ったが圧巻の一言だった。汗と土塗れの男同士が激しくぶつかり合い、荒い息を交えながら互いの弱点を狙っていく。そしてお互い満足し終わったらあつい抱擁を交わす。俺の語彙力がないのであまり伝えられないと思うが日本の文化をここに感じた。ジャパニーズスモー。


どんどん行きましょうアイドル研究部。この部は意外?にも部員が多くその中でもやはり彼女目的の輩が多い。一部の連中は写真部とも共謀しあんな姿やこんな姿まで撮っているとかいないとか。今回の最も注意する部活であるが、正直どうでもいい。

「失礼しまーす。」

「「「ひぃ!?」」」

おい嘘だろお前ら。ボケろって言われても今みたいなの出来ねぇぞ。限りなく黒に近いグレーだろ。鶴も何かおかしいと感じたのか警戒してる。とりあえず用件伝えてしばらく見させてもらうか。

「き今日はこここ今度ライブが予定されてる小石ちゃんのライブの振り付けのか確認ををししたいいです。」

「……そうですか。どうぞ。」

「で、では失礼します。」

何かオーディションか何か始まったぞ。何か鶴も肘ついて冷徹な審査員みたいな感じだし。というかあの部長さんかな?女性への免疫全くないな。確かに鶴はすごい綺麗だとは思うが、それよりも何と言うか、溢れ出る童貞。

踊りを見終えると教室を後にした。最近よく聞くヲタ芸というのは随分とアクロバティックなんだな。ペンライトブンブン回すだけでもあれだけ多様性があるとは。それに掛け声が応援団よりも出てるんじゃないかというくらい出ていたし。案外悪くなかった。


「じゃあ今日はこのくらいにして帰るか。」

「……そう言うと思った。料理部との揉め事は聞いたことあるから。でも、だめ。」

「お願いします。何にもしませんから。」

「……そんな事言っても……いや、何にもしないのはダメじゃない?」

そういって首の根っこ掴まれて連れていかれた。でもマスクも付けてるし案外平気かもな。

バッシャーン!!バッシャーン!!バッシャーン!!

冷水、熱水、炭酸水。水も滴るブス男。

「何なのあんた……よくまたここに顔出せたわね。帰りなさい!!帰れ!!」

「……すごい嫌われようだね。何したの?」

鶴にはこの部活に入る時、このくらいの仕打ちは受けるだろうから事前に俺が何されても黙っているように頼んだ。

「人間被害者の為なら悪魔にもなれるって話。」

マスクを外しながら視線をやると鶴もつられてそちらを見る。そこには1人の女の子が怯えながらこちらを見ていた。その隙に俺は豆腐を顔面に喰らった。

「彼女は水仙といってうちのクラスの1人。ほら、俺の痴漢の被害者の。いや俺じゃないけど。」

「……なるほどね。」

許されざる罪、被害者の存在、明確な加害者、弱い立場、正当な理由、厚い友情。この部の連中はその全てを持っている。素敵だと思う、悪漢から友達を守るこの構図は。そこが男の子であればヒーローそのものだ。そうだろう、淀川弘。

「痴漢の被害者と加害者って相変わらず面白いカップリングだな。水仙て案外売女気質でもあんのかもな。」

「こんのクソ野郎。ぶち殺してやる。」

はんぺんを顔面に食らう。やっぱり厄介なのは淀川のこのカリスマ性だよな。こんだけ挑発されてもそれに乗ることなんてないんだから。とはいえこれ以上いると本気で殺されかねないのでもう出ていこうとした時、ようやく淀川が口を開いた。

「要件がそれだけなら帰ってくれないかな。こちらも暇じゃないんだ。無駄な争いもしたくないしね。」

「言われなくてもそうしますよ。」


一応料理部の視察は終わり部屋を出る。最後にこんにゃくをぶつけられる。それを拾い丁寧に洗うと綺麗な袋に入れポケットにしまう。

「……ごめんね、あれだけ激しいものだとは思わなかった。」

別に構わない。確かに洗濯は面倒だがそのくらいにしか思わない。あいつらに好かれようとは思わないし、いつの日か水仙が苦しむことになろうが知ったこっちゃない。むしろあいつが淀川の本心に気付き俺に助けを求める日が来ようものなら、俺は笑顔でその手を踏みつけよう。

「……あの事件については解決出来ないの?手貸すよ?……あまり力になれないけど。」

「しなくちゃいけないんだけど、どうしたものか。痴漢てすごい難しい犯罪だからそれにあの淀川って人、普通に固いんだよね。」


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