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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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新編成と新入生 8

これ以上は俺が関わる問題でもないし、太陽には太陽のやり方があるだろうから、俺は関与しない。適当に話が終わるまで待ってるか。


「そういえば狐神君の学校には確か斑咬君もいたよね?あんまりいい印象はなかったけど彼はどんな感じなの?高校で変わった?」

「西御門を基準に考えるとみんなあんまり変わらないと思うけど。まぁ変わらずクソ野郎だよ。」

「何となくそんな気はしてたけど、やっぱりなんだ。」

あいつの愚痴はたくさんの人間に共感して欲しかったし、時間もあったのであいつの蛮行、また俺の冤罪についても話した。

「……クソみてぇな豚箱だな。あ……排泄物みたいな厩舎ですね。」

「多分違うだろ。でも嫌なことを共感してくれるのはシンプルに嬉しい。」

「聞いた感じは最近は特にこれといって動きはないんだな。えがったえがった。なんとなく不気味な気がせんでもないが。」

俺のクラスヒエラルキーはここで上がってきてるから、もしかしたら今現在は斑咬よりも高いかもしれない。そうなればあいつが俺に勝てるものはいよいよ何もなくなると思う。確かに太陽の言う不気味さはまだあるけど、もしかしたら今後はもう関わらないこともあるかもな。懸念点で言えばやはり大鵠が戻ってくることだが、昨日の様子を見た感じでは、大丈夫な気がする。

中学校の頃あんなことがあった、今現在はこんな感じだというのは太陽とも時々話すけれど、そこにまた別の人が入るとまたそれはそれで面白かった。中学校の頃はほとんど接点がなかったのに、いざ話してみると意外に盛り上がるものだ。

そんな感じの話をしているととっくに時間は過ぎていき、そろそろ帰らなくてはいけない時間になっていた。「もし何か太陽のことで何かあれば相談に乗る」と西御門とも連絡先を交換しておいた。暇つぶしにバスケの試合を見に行っただけだったが、思ってない収穫があって面白かった。

最後、西御門には聞こえない声で。

「彼方、冤罪はもう全て解決したのか?」

「ん?おう。」

「……じゃあ、味覚は最後まで戻らなかったんだな。」

「……すまん。」

「お前が謝ることなんて何一つないだろ。」


夏休みと違って特に春休みは期間が短いため、「久しぶりー」とか「元気してた?」といった言葉はなかった。教室の位置こそ変わったが、それ以外にはほとんど何も変わらない。強いて言うのなら外の景色が少し変わったぐらい。榊原は本日は来ておらず、明日紹介するとのことだった。それはもう一人も同じ用で、明日は禦王殘の方へ行ってみようと思う。一方、俺にはあの短い春休みで話をしなくてはいけない人間が2人いる。

「牟田、ちょっといいか?」

「何よ。」

「太陽に行為を抱く女子が現れた。」

「......誰?あんたの持ってる情報全部よこしなさい。」

おぉ怖い。こちらも一歩も負けず徹底抗戦て感じだな。いやー、乱世乱世。でも観戦してる俺としてはめちゃくちゃ楽しいな。他にも誰かいたら金賭けたいわ。昨日西御門と連絡先を交換した理由の一つに、牟田に連絡先を教えてほしいという依頼があった。

『相手の顔を見ておきたい。連絡先を渡しておいてほしい。必要なら私の情報上げても構わない』

あくまで西御門は正面から戦う気満々らしい。そしてそれは牟田も同じ様子で、連絡先を渡すと早速向こうにメッセージを送っていた。その空気から俺がこれ以上何か言わない方がいいと感じた。


まぁあとは勝手にやってもらってということで、よりシリアスな話をしなくてはいけない。永嶺がいくら姉の事を多少は吹っ切れたとは言えども、大鵠が復学してくるなんて知れば鬱にもなるだろう。

精神的にダメージが大きくかかる可能性があると思って、放課後に約束を取り付けた。

「で、話って?前に話してたトマトの育て方について?」

「えっと、実はお前に伝えなくちゃいけないことがあって……」

ダメだ、まともに顔見れない。何でか分からんけど今めちゃくちゃ笑顔だがら尚更心が痛む。

「なんですか〜、告白とかですか〜?」

告白、か。確かにそう取れなくもないか。

「そう……だな。告白だと思う。」

「お、お〜……。冗談で言ったんだけどな〜……。えっと、よし来い。」

傍から見れば完全に告白。いや、告白というのは間違ってはいないが、愛の告白とかでは一切ない。

「実は「ハロー!狐神君!!昨日ぶり!!会いたくて来ちゃっ……なんかお邪魔虫的な感じ?」

「……いや、丁度あなたの復学の事を永嶺に話そうと思ってたところです。ただ、登場は後日、永嶺の心が安定してからにして欲しかったです。」

そう言い一応永嶺の前に塞がる。やはりショックは大きくあるようだ。大鵠の登場と俺の『復学』という言葉。それが意味することなど簡単に分かる。けれどそれを必死に拒みたい気持ちでいっぱいなのだろう。

「あー……なるほど、理解したよ。確かに少し配慮にかけていた。てっきり俺の事なんて忘れて彼氏と楽しく話してるのかと思ったよ。」

「……彼氏?」

誰が誰の何だって?一体何の話をしてるんだ?

「あれ?違うのかい?てっきり林間学校で永嶺さんを救ったあの後から付き合ってるのかと思ってた。」

「林間学校?救う?」と未だ混乱の中だが、反芻するようにその言葉を呟く。

「ちょ!?大鵠さんちょっと来てください!!」

そういって強引に大鵠の腕を掴み、とりあえず教室を出た。

「なになに?もしかして林間学校の事、結局永嶺さんに言ってないの?」

「そうですよ!言ったら絶対永嶺気負うと思ったんです。俺はあいつとは対等な関係でいたいんですよ。不意に『私この人に救われたから、何も言えないや』みたいに感じて欲しくないんです。ヒーローとかは一切御免です。」

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