遅咲きの春 14
「うぅ……確かに何でもするとは言いましたが、流石にあれを他人に見せるのは恥ずかしすぎますわ。」
「まぁ嬬恋は俺に逆らえないからな。黙って指示に従え的な。でも忖度なしに俺も校長も上手いと思った。才能あると思う。」
「……鬼畜黒髪眼鏡、一見優男に見えて実の所……悪くないですわね。実はより実写に近くするため、男性の裸体を……」
「図に乗るな変態。」
心底残念そうにするな。どうせ俺を受けにして色々と開拓する気だろ。させねぇよ。
「……にしても少し意外でしたわ。てっきり遠井先生に辞めていただくのかと思いましたのに。もしかしてあの先生の事を気に入っておりますの?禁断の恋ですの!?」
腐った方から今度は少女の方へ切り替わって、随分とお忙しい事で。
遠井先生の前ではあんなふうに格好つけたが、勿論あれは本心ではない。
「昔から変わらないけど、遠井先生に関しては心底どうでもいい。どうせ人間改心した、なんて言ってもほとんどはその場限りだ。あの人にはこれからも何も期待しない。それにあの人が例えここを辞めようとも、次に入ってくる教師も俺を良くは見ないだろう。教師を変えても意味がないならこのままでいい。この学校には何も期待してない。」
なかなか返事のしづらい事を言った。嬬恋にも事情があったにしろ、罪悪感はかなり抱えていると思う。安易な励ましとかは出来ないのだろう。
それ以上特に言葉は交わさなかった。
そして1年生最後の登校日。
なんの記念なのか全くわからないが、写真を撮る生徒が多くいた。あれか、この年ぐらいの人間は毎日が楽しすぎて、毎日なんかの記念日なのか。人生楽しそうでなにより。
クラスでもそんな感じで、メンバーも特に変わらないため、別れを惜しむ声はなかった。そうれにどうせクラスが変わっても、何なら学校を卒業後も、今は携帯を使えばすぐ声は聞けるし、チャットで会話もできる。それは便利になったものだ。
かったるい終業式は特に何も語ることはなかった。
クラスに戻り、簡単な報告が終わった後、成績の返却があった。うちのクラスでは多分いないが、やはり意識高い人はこの段階から大学の指定校を狙ってるらしい。確かにこの学校は偏差値が高い分、推薦枠も多くあるから狙えるなら狙った方が絶対にいい。......まぁ頑張るのは来年度からにして。
「では成績を返しますので、出席番号順に取りに来てください。」
以前と言葉は変わらないが、声の調子は明らかに戻った遠井先生が一人一人成績を渡していく。何となく表情も柔らかくなった気がする。事実他の生徒からも「体調戻ったんですね」「なんかいい事ありました?」「合コンいい感じ的な?」みたいな言葉を受けていた。あんまり見てはいなかったが、この担任は他の生徒からは案外受けがいいのか?
「次、狐神君。」
「あ、すみません。」
考え事をしていたらいつの間にか俺の番だった。出席番号順なので、迅速に受け渡しができるように呼ばれる前には並んでおくべきだったが、そのお咎めはなかった。
「よく頑張りましたね。前の学期よりも全体的に評価が上がってましたよ。この調子で2年生も頑張って下さい。……それと、改めて感謝の言葉として……ありがとう。」
「自分は先生を腐女子にしただけですよ。そんなお礼なんてされる程でもないです。」
「素直じゃないのね。まぁ、それもあなたらしいわ。」
クスッと笑う。
「……失礼します。」
……不覚にも最後に見せた笑顔は、以前とのギャップもあってか、少しだけドキドキした。何だかすごい負けた気分。悔しい。絶対にもう負けない。以前太陽が遠井先生の事を羨んでいたが、今の俺を見たらめちゃくちゃニヤニヤしてきそう。
成績は4多めの3少し。大学の受験を考えたら公募ならもしかしたら可能性があるくらいか。まぁ大学なんてまだ全然考えてないけど、成績が良くて困ることは何一つないから、できるうちから取っておこう、来年から。
「では次会うときはあなたたちは2年生です。またこの教室に来ないとようにしてください。それと当然ですが、後輩が入ってきます。浮かれる気持ちはわかりますが、きちんと先輩としての自覚を持って、また来年度元気な姿で会えることを願ってます。」
遠井先生の言葉を以って一年生が終了した。




