遅咲きの春 4
「それよかお前はあの会議に入んなくていいのか?ここで席取らなかったらまずいんだろ。まぁノアはお前のこと気に入っているようだから、席は残してんだろうが。どうせ生徒会に入りたいなんて連中もいないだろうし。」
「あ、そうだった。ノアさん!私狐神彼方、雑務...じゃなくて庶務やりたいです!職があればどんな環境でも喜んで働きます!仕事をしている時が一番生を実感します!好きな言葉は『過労こそ日の本の民の誉れ』です!」
「狐神……行き過ぎる言動は引かれるわよ。」
結局長きに渡る会議の後、会長にノア、副会長に兜狩、庶務に狐神が就いた。
俺とノアについてはいいとして、兜狩の着任には少し経緯があった。まず誰もどの職に就きたいという者はいなかった。そしてノアが泣きそうになった。今は普通に接しているが、ノアは世界に拠点を置く正真正銘の御令嬢。そんな人を泣かせたのあれば、家の人に何をさせられるかわかったものでない。
「鶴は?鶴なら多分やってくれるだろ?」
「あいつは今日は用事で来られない。そして伝言で『多分これから忙しくなるから入ったとしてもあんまり手伝えない。クラスのみんなの手伝いもあるから。』だそうだ。」
そういや兜狩とノアのクラス2組はクラスの団結力かなり硬かったもんな。テスト毎に対策までしてるのであれば、それは確かにあまり時間はないな。
「......狐神君。蓬莱殿さんは生徒会に必要な人材なのか?」
「ん?そうだな。でも鶴個人の事情とクラスのこともあると無理強いはできないな。勿論入ってくれた方が助かるけれど。」
「であれば。」と鴛海が両手を合わせる。なぜかにやにやしながら。でもその笑みの理由はどうやらほかの人もわからない様子だった。
「兜狩君、君が生徒会の副会長になりたまえよ。そしてもし蓬莱殿さんが手が空くようであれば彼女に手伝ってもらえればいい。副会長という名義は君だが、実質君と蓬莱殿さん二人体制で。」
なんでわざわざそんな面倒くさいことを。それならじゃんけんで誰かを生贄にした方が......違うんです、ノアさん。そんな顔でこっちを見ないで。
よくわからん提案だったが兜狩はこの提案をのんで副会長になった。一応「本当にいいのか?」と聞いたが「これ以上グダったら本格的にあの人泣くし、本当に少し面倒くさいだけだからいいよ」と言った。鴛海は兜狩があんまり嫌がっていないのを知っていたのだろうか。
まぁそんなかんなあり、2年生枠は埋まった。新1年生はまだ入学式もやってないからまだどんな人が入ってくるか全くわからないけれど、3年生はいったい誰を入れるのだろうか。ノアは人脈が俺なんかよりずっと広いからまともな知り合いがいるんだろうけど。
帰り道は先程禦王殘が言っていた通りノアとご一緒した。
「ブスな代永がいるのはまた……違う、間違えた。絶対に間違えてはいけないところで間違えたのは申し訳ない。だから腹パンはやめて。」
「お腹に力入れてないとキツイですよ?」
はい。
3分後。
「ぶすっとした代永がいるのはどういうことかなと思いまして。」
「蒼ったら、未だにあなたの事を認めていなくてね。だからこの機に少しでもあなたの事を知ってもらえたらと思って。」
「開口一口目から女性をブス呼ばわりするということは認知しました。」
この女、俺が意を決して腹に力を入れてたら何もしないで、少し力を緩めて少し目を開いたら思いっきり顔引っぱたくんだもの。確かに俺が悪かったけどさ、間違いは誰にでもあると思うんだよね。でもやりすぎなんじゃないかなって思うんだけど。
「まぁその前に今日の新1年生のことなんだけど、彼は私の従兄弟のkrut・anhelo・starkaiser。ドイツの方にいたはずだけれど、私がここの学校に通ってると分かってここに来たのよ。それで、彼はその……所謂私に好意を持っていて……小さい頃に『将来結婚する』って言葉を若干適当にあしらった私にも責があるけど、それをかなり本気にしてるのよ。」
ノアには珍しく、本気で困ってる様な顔をした。それなりにあの男もスペックが高いのだろう。親族内で結婚なんてできるのかと思うけど、そもそも出来なければノアがこんなに困ることもないか。
「えっと、力になってあげたいのは山々だが、俺に出来ることは何もないと思うけどな。」
「別に何かして欲しいってわけではないわよ。ただ理由を話しただけ。もしあなたさえ良ければこの後うちに来ないかしら?あのバカにも謝罪させるわ。」
うわ、ノアからそんな言葉が出てくるなんて。冗談抜きで嫌いなんだろうな。