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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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短い祭り 6

翌日は白花が仕事のため参加出来なかった。それに伴い安川を引き出すことも叶わなかった。


「てなわけで助けてよ太陽。」

「また無茶な。」

「というか太陽さ、物が盗まれたとかあの手紙の内容とかすごい知ってたよな。ただの一般客なのに。……さては敵か?」

「んー、悪いがハズレだな。俺が詳しいのはあの探偵もので俺が1番先にゴールに着いたからだ。因みに商品は地学部の人がが採ったオパールと聞いてたがな。」

たしか太陽が前にあれはすごい難しいけどすごい豪華な商品と言ってたな。それがオパールか。俺が旧校舎で見たのもそう言われればそんな気がする。

「その石がないと知った時のクラスの反応は本物だったと思う。すごい謝ってたが別に俺だってそんな欲深くはない。そこで「出来ればこのことは他人に言わないでほしい」とも言われたな。……あ。」

思いっきり話してしまってるが問題ないだろ。一般には確かに最初に着いた人が持ってったとされている。あんまり目新しい情報はなさそうだな。

「すまないなー、あんまり力になれなくて。」

「ん?いや太陽が何か気にする必要はないだろ。サンキューな。」

電話を切り宙を見上げるてみる。あの冷静で慎重なやつの逆転材料なんてほんとにあるのだろうか。まずいな、明日までの期限なのに何も思いつかない。今日の夕飯も何も思いつかない。……いや、まだ可能性はあるか。

俺はその後とある人物に連絡し無理やり約束をこじつけた。そして約束の時間までこっそり学校に侵入し調べ物をした。欲しい情報は手に入らなかったが。


「よく来てくれた。感謝する。」

「普通自分をボコボコにした相手を呼び出すような真似出来ねぇと思うんだがな。」

俺は深見にクラスの連絡票から電話をかけ半ば強引に来させた。今は学校の傍の海にいる。やはりどんな証拠を集めるよりもこいつに証言をしてもらった方が確実だ。とはいえ問題はこいつにどうゲロさせるかだけれど、ストレートに話の趣旨を伝え協力を願う。

「協力するわけないだろボケ。頭ん中饅頭でも詰まってんじゃねぇのか。猿でももっとマシな考えしてるぞ。」

だよなぁ。だって俺を退学させる為に協力した奴が今度は俺が学校に残るために協力なんてするわけが無い。というか何なのさっきからこいつの態度。なんかだんだんムカついてきたわ。ぶっ飛ばしてやろうか。

冷静になる為にも一度深呼吸をする。そして今度は精一杯の気持ちを込めてお願いする。

「ここに来る前、生徒会室でお前の詳細を調べた。」

「あ?」

「それなりにたくさんの事が書かれてた。家族構成も。出身中学も。生徒会の力は大きいからな。」

「ちょっと待て。」と深見から待ったがかかる。当たり前だ。こんなの脅迫と何ら変わりはしない。だけど......。

「こんなことが脅迫じみてるのは百も承知だ!だけど俺だってもう後がないことぐらい分かってる!どんな目に遭っても構わないが、絶対に学校をやめるわけにはいかないんだよ。例えそれが人に言えないような方法でも。……だけどお前の弱みらしい弱みは見つからなかった。体調の悪い母親の代わりに家事を請け負ったり、治療費の為に日々バイトに明け暮れてるたり……印象よりもずっとお前が良い奴なんだなと呆れたくらいだよ。……だから俺からできるのは交渉とも言えないような提案だ。」

「……聞くだけ聞いてやる。」

「お前が学校に来れなくなった理由、あの夏祭りの日お前終ぞ白花に謝ることが出来なかったろ。俺がその舞台をセッティングしてやる。」

俺の言葉に一瞬豆鉄砲を食らった顔をする。そして今度は笑いを堪えきれず大爆笑する。俺は頭を下げ続ける。これ以上出来ることなどない。

「いやっ、ほんと馬鹿だろお前。確かに白花に悪い事したとは思ってるがもう終わった話だ。そんな事のために協力しなくちゃいけないんだよ。まだ金積んだほうが交渉になるぞ。……話にならねぇ。帰らせてもらう。」

来た方向とは反対に歩いていく。そこには迷いは見えなかった。ここで無理に止めてもきっと明日には来ないだろう。

「明日の午前8時!視聴覚室で待ってる!」

俺の叫びに全く反応は示さなかった。博打は失敗に終わったかな。

途方に暮れていると久々にあのネコが駆け寄って来た。首をスリスリして可愛い事。思わずお持ち帰りしたくなる。

「ごめんな。もしかしたら今日がお前と会える最後かもしれないんだ。……頑張ってはみたんだけどな。」

首を撫でるとゴロゴロと低い音がした。


翌朝8時視聴覚室。教室に入ると既に1人の男がいた。もう一人の姿は見えない。つまりそういう事なんだろ。

「で、こんな朝早くから呼び出して一体何の用だ?お前の退学はもう確実だろう。」

「そっすね。今この瞬間に最後の逆転の可能性は消えました。もう俺の逆転勝ちという胸熱展開はなくなりました。だからここからは泥沼戦法に出ることにします。」

泥沼?と意味の分からないという顔を浮かべる。何となくわかる思うんだけどうな。

立った姿勢から座り、やがて土下座をする。「どうか退学だけは勘弁してください」とつけて。安川は何も言わずに俺に近づくと後頭部を思い切り踏みつける。そしてぐりぐりと頭を地面に押し付ける。顔は見えないが笑いを堪えているのが分かる。

「あのさぁ、もうちょっと現実的な話をしようぜ。お前の土下座に一体に何の価値があるんだよ。金持ってくるとか、女連れてくるとか、なんかあんだろ。」

最後に俺の腹を蹴飛ばした。

「無様だな。」

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