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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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遅咲きの春

「ちょっと待て。」

「はい。」

「俺は確か嬬恋にお礼をもらえると聞いていたんだが。」

「そうですね。添付の手紙には『あなたと仲のいい蓬莱殿さんにご相談した結果、これから幸せになる未来が見えない狐神さんに少しでも夢を見てもらおうとハッピーエンド風にしてみましたわ』とあります。」

あの女、あの時はあんなこと言ってたけどあんまり反省してないな?むしろ遊んでいるな?

「『それと息子じゃなくて娘2人でハーレムにしますか?妄想で作った娘とぐへへとか救いようがありませんわね。そんなむっつりの狐神さんには梶山さんとの薄い本右側の刑に処します』だそうです。何です?薄い本と右って?」

「何を言ってるのか全く分かんないが、顔が綺麗なあいつが右だと思う。」

いや別に俺が左がいいという訳では無いが。中途半端な知識であんまりこういう話をすると殺されかねないからここら辺でやめておこう。というかそんな妄想するほど気持ち悪くないし、そもそもその設定作ったのお前らだし、幸せな未来が見えないとか何なん?最近俺への扱い雑すぎんか?


まぁまぁと何故かこころに宥められた。嬬恋の経歴を追うにあたってこころに協力したお礼として本日は1日こころに付き合うことになった。学校の方は再来週が終われば春休み。こころ達新1年生ももうすぐ入ってくる。その為今日は制服の仕上がりの最終確認として仕立て屋に来た訳だが。

「俺がここにいるのは不味いと思う。」

何せこの時期はみんな似たような生徒が仕立て屋に来る。600人もの生徒が来れば当然店としてはそんな人数抱えきれない。その為仕立て屋は男女別の棟を建てた。つまりそういうことだ。今は一枚布を挟んでこころが着替えている。

「後ろめたいことがなければ別に居づらいことはないと思いますが。」

「いや、別に普段から此方の薄着は見慣れてるし、洗濯とかで女性の下着とかには抵抗はない。でも多分こういうこと言うと本気で気持ち悪がられるからあんまり言わないが。特に今ここにいるのはほとんど来年の1年なんだろ。入学早々嫌われたくはないよ。」

「それもそうですね。でも彼方先輩1人でここから出れますか?入ったときは私がいたから問題なかったですけど。」

確かにな。それならまだ視線は感じるが目立たないここで待っていた方がマシか。にしても俺も一回制服で女装したこともあったが、冷静に考えてみるとマジであの時は頭いかれてたな。俺のは確か170のBだったかな.....うわぁ大柄女子。というか今もなんか今年の1年生らしき人に見られたし。早く出たい。

「できました!!」と元気よくカーテンが開かれると、そこには当然だが、うちの制服を着たこころがいた。特にコメントはない。普段のこころの姿に普段見ているうちの制服を充てればこれができる。しかしここでなんの反応も示さないとか、適当に「可愛い」とか言ってもあまりよくないのは知っている。

「スカート丈が短い。お腹も見えそう。全体的にサイズが小さい。あと回ったりとかあんまり動くな。はしたない。あと寒いんだったらタイツとか履いとけ。鳥肌出てるぞ。きちんとシャツを入れる。」

「なんで......」

なんや、なんでそんながっかりした顔してるんや。俺は先輩としてこころが心配してるだけなのに。今の格好のまま外に出たら疚しい連中に声を掛けられるからそれを未然に防ごうとしてるだけなのに。

「あの~、いいですか?確かに私は今現在、彼方先輩に恋愛感情があるかはグレーです。でも少なくても好感はかなり持っています。そんな人の前だから寒さとか、恥ずかしさ我慢して着替えたんですよ?わかりますか?少しサイズが小さいことなんて知ってますよ。でもそっちの方がドキドキするでしょう?」

「ハラハラはしてる。」

「どうして......」

なんで膝から崩れ落ちるんだ。俺だってこころは大切な人だ。そんな人が危うい恰好をしているのであれば、それを注意してやめさせるのは当然なのではないか?


「もういいです」とこころは若干怒った様子で、カーテンの向こうへ消えていった。女性心は本当に分からない。今度世にいうギャルゲーと言うやつでもやるべきだろうか。確か吉永も女心を知る教科書とか聖典とか言っていたし。

そしてもとの姿に戻るのは半分くらいの時間で着替え終わった。運よく店を出るときには誰にも会わず、次は文房具屋さんに向かった。俺も丁度シャーペンの芯がなくなっていたから買った。

「わぁ!この消しゴム可愛くないですか!?青とピンクの2つあるんだ。どっちにしよう……」

ダメだ、全く分からん。どうしてこんな無機物に可愛いという感情を持てるんだ。仮にかわいいとして、ただ鉛筆を消すというというだけのものになんで可愛さを求めるんだ。

「なんかこうしてるとカップルみたいですね。」

「こころが幸せなら俺はそれでいい。」

「……私ってそんなに魅力ないですかね?」

多分だけど俺が若干特殊なだけで、普通の男子から見ればこころは相当魅力的だと思うけどな。ただ俺は性格上、マイナス面から見てしまうのが癖づいてるから、今も「上目遣いの使い方上手だなー」とか「そんなことないよって言って欲しいんだろうなー」とか「さっきニンニクマシマシラーメンガン見していた女もこんな顔するんだなー」とかが先に思いだってしまう。そうなるといまいち気分も乗らないのである。

「その上目遣いはあからさまだな。」

「えへへ、バレちゃった……。でもじゃあ彼方先輩が今までときめいた女性はいないんですか?」

ときめいた女性、ね。確かにいることはいるな。

「小さい頃は白花なんかにはときめいていたのかな。今はそんなことないけど。後は鶴なんかには結構ドキドキするな。」

「鶴?」

確か以前生徒会のメンバーで写真を撮ったからそれがあれば……うん、写真をフォルダほとんどないから直ぐに見つかったわ。

「あぁ、この人ですか。前に学校は訪れた際にも少し見ましたが、改めてやばいくらいに可愛いですね。……というか、春風さんと瀬田さん、この2人以外の顔面偏差値高すぎません?」

2人も普通に高いとは思うんだが比較対象が悪いんだよな。俺この写真に入らなくて本当に良かったよ。じゃなきゃ瀬田さんと春風さんよりも酷いこと言われてた様な気がする。油絵の中で1箇所ドブで塗りつぶされてるみたいな感じ。

でも確かに思うと不思議だな。鶴にドキドキするのは分かるけれど、ノアにはそれが少ない。勿論顔とか近づかれたりしたら同じようなリアクションするだろうけど、ノアと鶴の違いってなんだ?

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