最後の証明 16
「それって確か白花ちゃんが両方関係してる奴だよね?」
確かに白花は関係あるが、もしかしてこいつも白花のファンだったりするのか?あいつほんと味方戦力多すぎだろ。だとしたら俺はここでボコられるのか。
「そういうことならば私も協力させてもらおうかな。」
「なんでそうなるんですか?」
「まぁまぁ。」
「いや理由を」
「まぁまぁまぁ」
「あの「まぁまぁまぁまぁ」」
結局説得というか強引に橄欖橋が協力?してくれることになった。理由はまたも暇つぶし。しかし明らかに白花がいるからというのは言わずもがな。こいつが白花にどういう感情持っているかわからない以上、白花に近づけてたくはない。そのストレスで俺に矛先が向けれられるのは勘弁だ。しかし「白花は忙しいから多分会えませんよ」と遠回しに会えないということを伝えると「別に会いたいとかはないからOK」とこれまたよくわからない返答が返ってきた。
「じゃあ早速、部長交代をしてから天文部はみんなルーズなんだよ~。だからいつも帰りに部室の鍵を閉め忘れて怒られていたんだ。」
そういや榎本に会議で裏切られた後にすんなり天文部に入れたもんな。見回りで鶴が来たけど、閉め忘れの常習犯だったのか。......ん?
「そ~、毎回しっかり鍵を忘れる新部長と~、そのためにしっかり鍵を閉めてくれる生徒会の方々。事件前日も同じことが行われたはず。授業でもあの教室が使われることはないんだよね~。前日夜は閉まっていた。でも翌日狐神君が教室を訪ねた時には空いていた。いつ教室の鍵は空いただろうね~。」
「別に朝から放課後まで時間はあると思いますが。鍵さえ借りれば誰でも入れるわけですし。......嘘だ。」
確か俺が取り押さえられたときに体育講師が「どうやって入った」って言ってた。普通に考えて鍵を使って入るのが普通だが、そう言うということは職員室を出る前に鍵を確認したのか。......確認するか?あの時の女子生徒の悲鳴は間違いなく切羽詰まったものだった。女子生徒が職員室に走る。教師は悲鳴の方向へ走る。そして出会い俺の所へ来た。実際悲鳴からみんなが来るまで時間もあまりかかってない。となると。
「もしかして、あの体育教師か?」
しかしそれでは疑問が残る。俺は残り2つの冤罪は連鎖的なものだと思っている。しかしもしそうなると前者は講師には厳しい。生徒に紛れて白花に近づくと思っていたが、講師ではそれは出来ない。それにどうやって白花を唆す。授業外以外は勿論、授業中だって長時間話すことは不可能だ。
「わっかんねー。」
「あ?」
俺の隣でゲームをするこの春から女子高校生になる人からは聞こえないような声がした。もうちょっと女子力をと思わなくもないが、家でくらいは素でいさせてやるか。
「......此方、教師と生徒が1体1になれる場合ってどういう時だと思う?」
「いや、シンプルにそのシチュが謎でしょ。でも言うなら面談とかじゃね?それ以外だと罰とかいって資料の片付けをさせるとか?ゲームだとあるあるだけど。いや知らんけど。」
面談か罰則か。白花が罰というのは正直考えられないし、あの時の白花は弱っていたから、「話聞くで」みたいなこと言って個室に連れ込んだ可能性もあるな。
母さんの淹れてくれたお茶を口に含み再度考えてみる。でも白花がそれに応えるとは思えないんだよな。「いえ、もう少し自分で考えたいです。」とか言って断りそうなんだよな。勿論あいつのあの時の心境が分からないけど、少なくてもまともな精神なら付き合わない。
「それともう一つ相談なんだが、みんなからはモテモテな、でも自分は嫌いな相手から金をとるとしたらどうやる?」
その時母さんの手が軽く俺の頭に触れた。
「そんなこと絶対だめよ。いつの間にそんな悪い子に育っちゃったの?」
「しかもそれを妹に聞くっていうね。うちの兄は相当参っていると見える。」
いや、餅は餅屋にとも言うし。お前の方が俺よりもよっぽど汚い考え持ってるだろ。まぁ普通分からないよな。
「なぁ妹、少しは手加減してくれてもいいんだぞ?お前の姿見えてないのに12デス迎えるんだが。」
「ショットガンなんて短射選ぶから。」
「火力は正義だろ。」
「エアプは黙ってろ。」
翌朝、学校の俺のクラスは少しざわついていた。理由は勿論、俺に関する事だった。
「やは。」
「あの、橄欖橋さん。クラスの連中が慌てるので急に来ないでください。あとそこ俺の席なんすけど。」
「ほ~、クンクン。」
「やめてください、不愉快です。」
一体なんの用だろうか。この人の事だからまた暇つぶしだろうか。「えっとね」と一言置くと周りの目など気にもしないかのように耳元に顔を近づけてきた。
「樫野校長から連絡で、今日の放課後答えを聞くってさ。」
「それって「私は樫野さんから報酬で雇われた異端児の1人、君を退学にするための駒だよ。」」
俺の耳元からゆっくりと橄欖橋の顔が離れていく。それはまるで質量を持った、粘り気のある動作だった。
「このまま退学にしてあげても良かったんだけどね。」
「禦王殘君とか鶴さんに相談した方がいいよ~」と一言残すと、のほほんと教室から出ていった。その直後に反対側の扉から白花が入ってきたが、橄欖橋には気づかなかった様子だった。
別に俺もあの体育教師が犯人と決めつけていた訳では無い。まぁ他に候補がないのも事実だけど。というかあの人が樫野から雇われた人というのなら、先程の言葉を信用する必要ないのでは?むしろ俺の推理が当たっててその負け惜しみなのでは?
後ろから全てを見ていた外野が袖を引く。
「視線がうるさいんですけどお二方。」
「今の人とはどんな関係なの?随分と綺麗な人だったね。もしかして彼女さんとか?まさかね。」
「......あ、あんな......顔...ちか......」
謎の虚栄心。
「かもしれないな。俺の懸命な姿に心奪われたとか。」
「み、美桜ちゃん。」
どうした京。
「こ......狐神君が......壊れちゃった。」
「今までよく頑張ったよ。」
「とりあえず2人とも目ぇ瞑れ。」
「ま!まさか......キ、ス?!」
「狐神君......最低ね」
「安心しろ、ぶん殴るだけだ。我が家の家訓は家電も女も叩けば治るだ。」




