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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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最後の証明 15

手芸部はホームソーイングという大会が近日中にあるらしく、部室を訪れるとみんな一生懸命に作業に取り組んでいた。......ただ一人を除いて。

「あなたが橄欖橋久遠さんですか。」

「んぁ?」

窓付近でアイマスクをし、惰眠を貪る女に話しかける。この部に入ってまだほとんど時間が経ってないのに、これほどの自由が利く理由とは。

「少しお話する時間って取れますか?」

「だれー?まぁいいよ、話ってなんだろ。」

そういうとのっそのっそした動きで廊下に出る。とても運動部にもともと在籍していたとは思えないほどに。にしてももともと芸能界でモデルを少し齧っていただけあって顔面もなかなかだな。鶴も禦王殘もそうだが、すごい場違い感がすごい。俺のこの顔が少しもうしわけない。まぁ言うてみんな所詮は歩くタンパク質と考えれば。

廊下を少し歩き小さな腰掛けスペースに座る。

「担当直入に聞きますが、芸能界引退した理由をお聞きしたいです。」

「ん?飽きたからだよ。私って飽きっぽいからね~。」

まぁそれはなんとなくわかるんだがな。じゃなきゃ部活をそんな転々としないからな。

「ちなみに~、後ろの2人はもう気づいているから言うと、気に入らない部の部員つぶしもただの暇つぶしだよ~。」

「初耳なんすけど。」

後ろからドスの聞いた声がした。

「気づかなかったのか。こいつが部活に入る時期は大体その部の大会1週間前とかなんだよ。そしてろくな練習なんてせずにその大会で1位を取る。そしてすぐまた別の部へ入る。才能だけで言えば間違いなく天才だな。」

「あは~、天才は困っちゃうな。」

じゃあこの人が芸能界に入ったのは気に入らない人がいたってことか。そして先ほどのドル研からの情報からだと芸能界にいたのは白花のみ。

「じゃあ入学してからすぐに白花に目をつけて芸能界に入って潰そうとしたのか。でも白花は健在だし、さすがに相手が悪かったかな。」

「......違うと思う。この人が芸能界にいたのは一昨年の9月頃、つまり白花さんがこの学校に入る何カ月も前の話。でも逆に考えて、その時期に気に入らない人が芸能界にいたってことかな。」

「ごめん、全然わからん。」

「難しい事じゃねぇよ。芸能人じゃなくても芸能界に行き来する奴なんて沢山いる。スタッフがその代表だ。その中の1人って訳か?」

橄欖橋は俺たちの考えを楽しそうに聞いていた。暇つぶしを探している辺り、小熊とも若干似てる部分を感じた。そしてその答えは『そんなまともな人じゃない』だった。その顔は哀愁を感じるものだった。


そこからの動きは流石は禦王殘と鶴だった。

橄欖橋との話が終わるとすぐに図書館に向かい、一昨年の9月頃の事件を調べた。検索条件は『新人芸能人』『ストーカー』『パパラッチ』。新人芸能人というのは恐らく橄欖橋ということは分かった。しかしストーカーやパパラッチという単語は思いもしなかった。確かにまともな人じゃないとは言っていたが、軽犯罪まで犯しているとは。

「......あった。」

鶴が見つけたそれは小さな見出しとはいえ、全国区の新聞のものだった。禦王殘もそれを散見すると「やっぱりな」と零した。

「新人芸能人としてデビューした石上紗理奈(15歳)がストーカーの被害にあった。犯人は三石幸三47歳、以前も他の芸能人に同様の事を起こし厳重注意を受けていた。今回は禁錮2年。名前が全然違うけど、確かにこの写真の女は橄欖橋だな。」

「前に俺が生徒ファイルを見た時に橄欖橋なんて目立つ名前はなかった。あいつの顔は確かに『三石』で登録されていたから、きっと去年離婚した実の父親なんだろうな。」

なるほど、それであの哀愁漂う顔なのか。自分の父親が厳重注意を受けるほどアイドルが大好きで、それに耐えかねた橄欖橋が自分もアイドルとなってその立場を利用してムショにぶち込んだ訳か。方法までは知らないが、相手が厳重注意受けてるのなら難しくはないだろう。

「けどそうなると白花とは特に関係無さそうだな。」

なんだ、じゃあ完全に無駄足じゃないか。一時天文部に所属していたらしいけどそれも関係ないかな。確かに多少橄欖橋にも同情するが、別の方法とはいえ他人に嫌なことしてるんだったら変わんないだろ。はい撤収。


「なんですか、腹黒性悪パイセン。1人になった時を狙ってくるなんてまるでストーカーじゃないですか。」

「あはは、めちゃくちゃ偏見持たれてる。まぁ仕方ないか。いやね?何であんなこと聞いてきたのかな~って思ってさ。」

そういやそこら辺話してなかったな。単刀直入に聞いても素直に答えてくれたし、俺が相手でも全く嫌な顔ひとつしなかったし、もしかして案外いい人だったり?......なんか俺も温くなったな。

「俺の冤罪知ってます?」

「暴行と痴漢は解決したんだっけ?」

「はい、てなわけで残す2つを解決中です。」

「ほ~」

ほー、ってどんな感想なんだろう。またどっかの誰かみたく「いい暇つぶし」が出来たぜみたいな感じか?

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