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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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短い祭り 4

見回りの時間が終わり安川と別れると旧校舎裏に向かった。別にあんな怪文書ちょっと拗らせた奴のお遊びだと思うが何となくモヤモヤするものもあるし一応ね。というかもう文化祭ほとんど終わってるし仮にそこに手紙があっても今更だけどな。

普段ただでさえ誰も近づかない旧校舎、その裏なんて誰かを襲うには絶好の場だ。後夜祭の今ならどんだけ叫んでもその声は届かないだろう。一応周りを確認してみたが人っ子1人なさそう。そして調べているうちに1枚の手紙が見つかる。

「えっと、書かれてる数字は『1』か『4』かな。」

一応確認のために開ける。

『0』

「カウントダウン的な?」

「そうだな」

俺の独り言に返事が飛んできて、ついでに旧校舎の窓からも石が飛んできて、頭に当たる。どんくさくて何もできない俺はやがて意識を失った。


意識が戻ったころには既に周りは真っ暗で教室には蝋燭1本だけの寂しいものだった。変に明かりをつければすぐにばれるからだろう。

「あの怪文書の意味は分かったか。」

暗闇から質問が投げられる。けれど最近ずっと一緒に居たおかげてすぐに誰かなど分かった。

「『巣から落ちた悪しき雛よ。アマリリス、アネモネを食い散らす憎き雛よ。ここに結び目は切られた。指差すその先に示すは黒。失くした代価はまだ足らず。然しかして許すのが無垢なる処女。泥まみれの雛が触れた際、4つの舞台が揃う。』でしだっけ?ここまでされればきっとこの文は俺に向けられた文章何だろうけど、正直意味はさっぱり分からないです。これを書いた人が中2病くらいしか。」

「その態度ムカつくな...」と一発蹴りをもらう。想像以上にその蹴りは痛かった。これは普通にまずい状況だよな。今迄にも何度もチンピラに絡まれたことはあったがあくまで殴る蹴るが限度。それもあくまで楽しんだりしたご様子。けれど今気づいたが奥で光っているのは多分薪を割る用の斧。目も恐らくマジ。

「一応これでも野球部だったからな、それなりに効くだろう。そんな難しい意味じゃない。『学校という場から堕ち、白い花を食い散らす。もう我慢の限界だ。みなが指差すお前は罪。停学一か月、失った信頼それだけでは絶対足りない。けれど彼女は許してしまう。今度彼女に触れようものならお前を俺が罰する』これは俺からの布告だ。」

うわー、キモイ。自分が断罪者気どりですか。

「...ここでいう彼女ってのは?」

勿論わかってはいる。こいつもファンの一人なのだろうか。こういう目立たない奴ほど大体ヤバイオタクなんだよな。自覚がないから。

「お前もわからないわけないよな。白花小石だよ。いつもお前なんかにも気を遣ってくれてる子だ。お前だって彼女に惚れてるんだろ?」

「そうだな。可愛いと思うし愛想いいし、まさに理想的な女の子だと思うよ。みんなが夢中になるのがよくわかるよ。」

だけど俺はあいつに惚れはしないだろう。あいつはもう俺なんかとは別の次元に生きてる。

遠くから何やら声が聞こえる。どうやら本格的に後夜祭が始まったようだ。悲しいものだな、みんなは楽しく青春をしているというのに、こっちは男2人でアイドルについて話し合うとか。しかも別に好きでないのに。

「お前の退学はみんなが望んでいることだ。もちろん俺もだ。前にもお前を大嫌いと言ったろ。というかなぜあれだけの事をして停学一か月という処置になったのかが分からない。そのためにもな...」

そこまで言うといったん安川は部屋を出てすぐにまた帰って来た。その手には橋本が探していた帽子、俺の探していたフライパン返し、ロボ研のと思われるロボット、そしてよく分からない……なんかこう……高そうな石。恐らく各々でなくなったものだろう。

「4つの舞台ってこれか?」

「ああ、盗んだものはお前の以外どれも重要なものだ。それがここで見つかったとあればさすがに問題になるだろう。どうせ誰もお前の意見など聞かない。犯人にされ出来れば退学してもらいたいものだな。」

確かにこの人なら昨日みんなが帰った後、少しなら学校に残ってても文句は言われまい。何か言われても「明日の確認」なんか適当なこと言ってても「実行委員は大変だー」くらいしか思われないだろう。

「では俺はもう行くとする。実行委員長がずっと居ないのは変だからな。おい、後は頼んだぞ。」

「どもっす。」

安川が出るのと入れ替わりで新たな男が入ってきた。ここの学校の者ではないのか、無地のシャツにジーパンを履いている。誰だ?とも思ったがやがて1人の人物に辿り着く。

「深見か。」

「懐かしいなぁおい。随分楽しそうな文化祭してんな。俺は定時制で毎日頑張ってるのによォ。夏休みのこと忘れたなんて言わないよなぁ。てなわけで開幕1発殴らせろや!」

こっちが縛られてるのをいいことにその後も何発も殴られる。深見と安川の繋がりは知らないが共に俺がターゲットで手を結んだのだろう。実行委員長の権力を使って安川を入れたのか。それもきっと人が沢山いる昨日のうちに。

しばらくして殴り疲れたのかそこらにあった椅子に座る。こっちは最初に投げられた石もあってもう血まみれだ。

「あの夏休みから俺の人生ボロボロよ。ストレス溜まりまくり。だから俺はせめてもの嫌がらせにあの安川とかいうのと手を組みお前を退学に陥れる。早くこっちに来ちまえよ。」

深見の足が顔面にめり込む。いっそ吹っ飛べば威力も少しは抑えられるというのに。あー…そろそろ意識がまずいな。なんて言ったらこの状況終わるのかな。

「お前の目的は一体何なんだ?俺がこの学校を辞めることか?」

「ん、あぁ……。まぁそりゃあそうだが今はお前をなぶることだけだ。気ぃ失ってもすぐ覚まさせてやるから安心しろ。」

なるほど。どうやら後先考えないタイプの人間か。そもそも俺の周りにこれらの道具があったとしても、こんなボロボロの姿で発見されればすぐに第三者がいることはバレるだろう。ということを安川が考えているだろうから1番の得策としては……。

「お前たちここで何をしている!?」

全ての罪を深見に被せることだな。

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