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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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短い祭り 3

結局フライパン返しは見つからず教室に戻ってきた。空いた席にそれらを置くと大用品と考えて持ってきたおろし金を見つめる。

「上手く箸と使えば平気かな……」

「おい!狐神ってのはどいつだオラァ!?」

ドアが外れんばかりの勢いで開きみながびくつく。態度のでかさからして上級生っぽいが上級生に喧嘩を打った記憶はもちろんない。入口にいた生徒が胸ぐらを捕まれ詰問されるとすぐに俺を指差した。そして男女5人が俺の前に立つ。

「なぁ兄ちゃんよォ。俺は2年の橋本っつーんだけどさ。こんくらいの帽子、知らね?なんか俺のダチが昨日お前さんが持ってるって聞いてな。」

そういえば昨日の巡回時にそんな帽子あったな。普通に拾って落とし物に入れたと思ったが。なんて言ったらこの人達はどこかへ言ってくれるのだろうか。

「生徒会として見回りをしてる時に草むらに落ちてたのでひ「っそついてんじゃねぇぞガキ!!あれが落ちてる訳ねぇだろ!」

胸ぐらを捕まれ何度も壁に叩きつけられる。痛みももちろんあったが、息が上手く出来ない。というかこいつ、何だか楽しんでないか?流石に問題行動だと思うが後先考えないタイプか?……それとも何か他にあるのか?

「あれはな!俺らのクラスでやってたマジックの締めに使う大事なもんだったんだよ!!一昨日倉庫に置いといたら昨日には消えてた。みんなもテンパって全然上手くいかなかった。俺らの最初で最後の文化祭は台無しだよ!!……そうだよな、誰もいなくなった後に生徒会のお前なら持ち出せるもんな。それでそこいらに捨てて!翌日になったら「落ちてました」ってか!?俺らに何の恨みがあんだよアア!?また窃盗と同ようなことしてバレねぇわけねぇだろ!!」

更に激しく壁にぶつけられる。その痛みに苦悶の顔を浮かべる。

恨み?強いて言うなら俺の言葉より噂話だけで俺を悪者にした学校のほとんどの生徒と、今見回りしてただけで犯人扱いされてることにはお前らに怒りを感じてるよ。というか窃盗の事を信じるバカがここにもいるとは。

「もしかしてですけど……何かそこに手紙みたいなの置いてあったりしました?」

「この訳わかんねぇ手紙か?何のお遊びかは知らねぇが次同じ真似したらぶっ殺すぞ。」

橋本は最後に僅かに笑いながら手を緩め、俺は見事にお尻から落ちる。そして手紙を投げつけられその場を後にする。手紙には『2』と書かれていた。あまりその男が文化祭を楽しんでいるようには見えなかった。寧ろ人を痛めつける事を嬉嬉としていたようにも見えた。


少しごたつきはあったが開店時間には間に合い、グレープとパンケーキを焼いていく。油を少し多めに引けばおろし金でも思いの外できた。プレートは少し傷つくが。作業が手馴れてくる頃には考え事もするようになった。

『2』と『3』と書かれた手紙。これは間違いなく関係あるだろう。と言うことはどこかで『1』があるはず。昨日太陽が言っいた怪文書みたいなものの最後には4つの舞台って言ってたがそれと関係あるのだろうか。だとしたら『4』まであるのだろうか。数字は一体何を意味するのだろう。文化祭の熱に当てられたバカの企みをなぜ俺が考えなければいけないのか……。


結局じっくり4時間ほど考えたが答えは分からず交代の時間が来た。梶山に後の事を任せ巡回の為安川と合流する。既に安川は合流場所におりてっきり嫌味を言われるかと思ったが、「行くぞ」と一言だけだった。

「あの、1ついいですか。」

「歩きながらだ。」

「ありがとうございます。どこかのクラスで何かが紛失したみたいなことを聞いてますか?」

「2年のクラスで帽子が無くなったというのは聞いたな。後は確かロボ研が旧校舎裏に隠してた新作が無くなったらしいな。何のつもりかは知らないが今は巡回中だからな。」

勿論仕事を放棄してまで見に行く訳にはいかないので文化祭が終わった頃にでも行こう。きっとみんなは後夜祭で体育館に集まっているから行動もしやすそうだし。

「あ、狐神じゃない。」と後ろから声をかけられつい振り向く。そこにはなんか、軍隊らしきものを引き連れたノアと鶴がいた。

「こんにちは。楽しそうでなによりです。それでは。」

「待ちなさい、なんで逃げようとするの。」

そら後ろの人達が怖いからでしょう。知ってるよ多分ファンの人達なんでしょ。勿論2人には優しいだろうけど俺ボコされるのやだよ。というかなんで安川も俺を睨む?

「そう言えば午前中狐神のとこ行ったわよ。あのクレープあなたが焼いたそうね。すごく美味しかったわ。」

「……うん。私も食べたけど……すごい、好き。今度作って欲しいな。」

「そういって貰えるのは光栄だけど、あんなの練習すれば誰でもできるよ。」

「行き過ぎた謙遜はただの嫌味よ。褒められたのならとりあえず感謝しとけばいいの。今は巡回中らしいからあまり留めるのは悪いわね。頑張ってね。」

そう言うと2人は「ご褒美」と飴を2つずつくれた。まるで俺が子どもみたいに扱われてるとも思ったが、純粋な応援の気持ちだと考え1つ口に入れた。

その後も何の面白みもなく落とし物があれば届け、たまに広場や校庭でやっている出し物を遠目に眺めるだけだった。3年になった時は自由時間を取って色んな所を回ってみたいものだ。それまで俺がこの学校に居られればだけどな。

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