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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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短い祭り 2

クラスの方に行くと予想通りすごい行列を成していた。これじゃあ学年でどころか全校でもトップを狙えるんじゃないかというくらい。入口には『滞在時間10分までとさせていただきます』とまで書いてある。そして教室に入るとやはりすごい混雑していた。そしてその中央にやはり白花がいた。だけど別に話すことも何も無いのでそのまま厨房へと足を運ぶ。袖を捲りエプロンを結ぶ。手を洗い、拭き「いくか」と小さな声を出す。

客がたくさん来ることは容易に想像できた為、メニューは味重視より回転率重視のメニューを多くした。ドリンクのコップも小さい紙のものを採用し、予約してしまったものは基本単品で出し手間も省く。少し客には悪いが済んだ皿も極力早めに回収するようにした。なんでクラスのためにこんなやってるかは俺自身も分からんが、このような意見に反論出来ずただ従うクラスの連中を見るのは気分がすこぶるいい。……アイデアは大体がノアのものだが。

俺の担当はキャラクターパンケーキ(指定したキャラクターの絵をパンケーキにする)と七色クレープ(クレープ生地に適当な食紅混ぜてジャムなどをぶち込む)の2つ。他の人はドーナツやワッフル、クッキーなどあるがどれも簡単に大量生産できる術は教えてある。ならば後はただひたすらに作るのみ。

5時間後。ようやく最後の客のオーダーが入ったらしい。その中には俺の担当も入っており「早く終わりたい」と思いつつも決して手を抜かず作った。それを牟田が持っていくのを確認するとついその場に座ってしまった。普通にバイト代出るレベルのきつさを感じた。

「とりあえず一般向けは終わった。明日の方がまだ楽になるはずだ。」

「休んでるところ悪いんだけど、君にクレームが来てるよ。これを作った人を出せって。」

牟田にそう言われる。

とことんついてないなぁ俺。文化祭の料理にクレームつけるとかどんな頭のイカれたやつだよ。でも出ない訳にもいかないし、先生とかいたとしても味方なんて絶対してくれないだろうし。仕方ないか。……ん?

「やっと出てきた。お前がこのパンケーキとクレープ作ったんだろ?疲れて楽しちゃったか?」

全く散々な言われようだな。手は抜いたつもりは一切ないが、確かに味は落ちてるかもしれない。それが昔馴染みならその違いもわかるのだろうか。

「勘弁してくれよ太陽。もうぶっ続けで5時間入ってんだぞ。それに別に言うほど不味くはないだろ。」

相席失礼するとどっと疲れが来て机にうつ伏せになる。もうこのまま寝てしまいたい。

「こうやってお前を呼べばその分休憩になると思ってな。どうせもう他の客も追加はしないだろ。それに1人くらいお前を労ってやってもバチは当たらんだろ。」

「少し貰うぞ」と勝手にカップを取りオレンジジュースをもらう。それが体に染み渡る。

「……少しは楽しめたか?」

「ひたすら働きまくって楽しいわけあるか。」

「嫌だったか?」

「それは……そうだお前。お前が白花に送ったメールのせいで……」

それから文化祭の終了のアナウンスが流れるまでずっと話していた。


「そういや知ってるか?」

俺が仕事に戻ろうとする寸前、そう言って呼び止められた。

「多分知らん。」

そう答えると太陽は楽しそうに、というか悪い笑顔を浮かべて言った。

「3年の探偵のとこあるだろ。俺も楽しそうだなーって思って参加したんよ。あそこはかなり手を凝ってて1日1回のレース形式でゲームが進んでくんだ。途中参加も可能。んで、各所に設けられた謎を解いてくんだがな、難易度がバカクソ高い代わりに景品も豪華なものらしいんだわ。」

「景品はここまで真摯に取り組んだあなたのその心ですってか?」

そんかカスみたいなオチはさすがにないだろうけど。

「そんな酷いのは今の時代許されないと思うけどな。だが不思議なことに優勝者の名前と報酬は発表されなかった。どう思う?」

「宝くじみたいな感じなのかもな。」

この人が何億円当てました、って公開すると周りの人がその人の金目的で危ない目に遭う可能性があるから、宝くじも名前を公表しなかったんじゃなかったっけ?当たったことなんてもちろんないから分からないけど。

「時間もないから最後に。本来賞品のある箱には手紙が落ちていたそうだ。」

『巣から落ちた悪しき雛よ。アマリリス、アネモネを食い散らす憎き雛よ。ここに結び目は切られた。指差すその先に示すは黒。失くした代価はまだ足らず。(しか)して許すのが無垢なる処女。泥まみれの雛が触れた際、4つの舞台が揃う。』


2日目は生徒向けの文化祭で昨日より客さんは少ない。と言っても昨日が異常だっただけで今日だって普通に多い。しかし今日は人が少ない午前中にクラスの手伝い、午後に見回りと昨日よりずっと楽なはず。

食器は昨日洗った後、冷蔵庫みたいなガタイをした除菌できる機械(名前がわからない)に入れておいたので持ってくる事にした。クラスの連中はまだ携帯などで遊んでいる様子。しょうがないので全部持ってくる事にした。

ちなみにその機械を開けるには先生の同伴が必要となる。変に生徒たちが開け閉めをして雑菌を入れないためだ。

「あの、遠井先生。フライパン返しがないとパンケーキを返せないんですが。」

「……ねぇ、これあなたの仕業?」

俺の話など全く聞かずに中に入っていたであろう紙をだしこちらに開く。

『3』





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