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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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アイドル事変 11

「聞いたところ、そこのは小石以外にも非道な行いを何度もしたそうじゃないか。痴漢に暴行、窃盗、それにテストのカンニングや文化祭には他クラスの物を盗む。逆に何故退学にしないのか、私はまずそこから理解が出来ない。」

俺が逆の立場でも同じことを追求するだろうな。今でこそその半分以上が濡れ衣と分かったが、停学1ヶ月は当時決めた処罰。学校側としては元学長が下した判断だから分からんというのが本心だろうが、もちろんそんなことは言えない。さて、学校側は何と言うのだろうか。

「まず、昨年5月から続いた4つの事件、痴漢、暴行、窃盗、強姦未遂につきまして。調査の結果、白花さんを襲った件に関しましては犯行現場を何人かの目撃者がいた事や、狐神君も手を出した事を認めましたので停学1ヶ月の処罰を下しました。そしてその後の調査の結果、痴漢と暴行に関しましては狐神君の犯行ではない事が分かりました。窃盗に関しましては現在調査中です。」

うわぁ、さも自分らの手柄みたいに言って恥ずかしくないんか。でも上手い言い訳だと思う。

強姦の件に関してだけは現行犯だった。襲ったという事も間違いとは言えない。

「随分と調査が遅いんだな。」

「面目次第もございません。」

白花の両親からしたら他の件など全く興味などないんだろうな。ただ俺をこの学校から追い出せればなんでも。となるとやはり白花を襲った件を深く追及してくるかな。

「小石は昨日、そこのに襲われた事を勇気を出して話してくれたんだよ。まさかそんな酷いことをされていたとは思わなかったけどな。それがたったの停学1ヶ月?......なめてんのか?」

面地を切る。学校人の人間には効果は抜群らしい。まぁ俺には効果はないが。というかむしろイラつく。

「......なめてんのはどっちだよ。クソジジイが。くそ老害、とっととくたばれ。死ね。生き恥を晒すタンパク質が。ゴミ。汚物。......あ、アハハ。てへぺろ。」

「......」

俺の言葉にずっと黙り俯いていた白花もようやくこっちを向いてくれた。

「やっとお前の顔が見れた。随分と今日はブスだな。」

ポカーンとアホみたいな面をしている白花の親に更に追い打ちをかける。

「確かあれはバレンタインの前日、駅近くにあるスーパーで3人が買い物をしてる姿を見ました。晩御飯でも買いに行ってたんですかね。その時に確信しました。......小石は決してお前らの理想を写した『物』じゃない。家族の前ですら......いや、家族の前で一番気張って笑う娘の姿を強いるお前に親の資格なんかないだろ。」

「狐神君!!いい加減にしなさい!!」

隣に座っていた遠井先生から叱責が飛ぶ。けどそんなの知るか。

「じゃあ誰が小石の味方をしてあげるんだよ!!誰も功績と期待ばかり押し付けて、その努力も苦悩も思いを知ろうともしない!神聖視こそすれ人間とも扱わない者さえ居る始末。小石が本当に欲しかったものは......花と石、夢、それと......」

かつて白花が言ってくれた言葉。例え記憶に残っていなくても、何らかの形で残っていればと思ってた。しかし白花の反応を見るからにその可能性はなさそうだった。白花に届くと思っていた言葉は、届かなかった。

両親は俺の苦悶の顔を見て嘲た。『何言っても無駄なんだよ』と言われた気がした。それに溜めていた怒りがまた爆発した。

「......お前ら両親がよ!何年も前に仕事辞めて白花の金を貪り食ってるのは知ってんだよ!!よくそんなので俺にでかい口聞けたな!!娘が稼いだ金で食う飯は美味いか!?」

気づけば思い切り机を叩いていた。そして長くも短くも感じる沈黙が流れる。感情に流されて考えなしに発言するなど愚の骨頂。話し合いの場と言うことを忘れていた。

「......窃盗に関しましては完全に冤罪です。自分はただ拾った財布を落し物として届けただけです。そしたらその中身が既に抜き取られたらしく、それを届けた俺が犯人にされました。」

「......犯人が忘れ物として提出するわけないでしょう。家に帰ってでも捨てればバレないでしょうに。」

「だからこそ俺が犯人とされました。よくドラマとかでもあるじゃないですか。犯人が自分も傷つけ『俺も被害者だ』みたいな事を言うやつです。完璧なアリバイを持ってる人間ほど怪しいあれです。」

とはいえ自分が犯人じゃないと証明できるものもない。まさかお金に自分の名前など書くわけもない。これがそこいらの男子や女子の財布だったのなら容疑者を絞れるものを、あの頃の白花は新学期当初は今以上に多くの生徒に囲まれていた。目撃者も多いが、その分誰でも白花に近づける。そこを突かれたんだろうな。

「白花の財布の窃盗に関しましては犯人は俺もまだ追ってます。しかし白花を襲った件に関しては、不本意とはいえああいった形になってしまったことは事実です。詳しい事情を話してもいいんですけど......いいですか、白花のお父様、お母様。」

両親からしてみれば娘に乱暴した男が目の前でその時の状況を鮮明に語るんだ。しかもこんな犯罪まみれみたいな高校生に。たまったもんじゃないだろうな。しかし即座に否定しないところを見ると他に思うところがあるってことかな。例えば白花からある程度は聞かされたが、あまり具体的なことまでは知らないとか。

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