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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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アイドル事変 2

番組の監督?っぽい人が2人をべた褒めとお礼をしていたので、かなり出来は良かったらしい。よくまぁ半日程の間あんなのに付き纏われて笑顔でいられるものだ。

「お疲れ様。」

「ありがと!!じゃあまたね、そらちゃん!!」

「はい!!また元気になったら遊びましょう!!......それと狐神さん、で合ってますよね?少しだけいいですか?」

白花の方を見ると「じゃあ楽屋で待ってるね」と言うことでOKらしい。確かに次の仕事までは時間があるから構わないけれど、嫌な予感がするな。

『榎本そら様』と書かれた扉の前まで来ると深見だけ外で待たされるよう言われた。俺の冤罪が徐々に晴れていることは学校にいない深見は知らないから止められるかな、と思ったが、学校の誰かから連絡でも受けているのか、特に止められはしなかった。

「......それで話とは何ですか?」

「敬語なんてやめてくださいよ。深見さんもそうですけど私の方が年下ですよ。」

そんなこと言ったら年寄りが最強だろ。年功序列は嫌いなんです。年は俺の方が上でも、社会的立場で言えば俺はお前よりずっと下だよ。

「ふーむ......」と言いつつ、俺を一周する。上から下までマジマジと眺める。ちょんちょんと体をつつくいたり押したりする。そしてまるで鑑定が終わったような顔で「なるほど」と呟く。

「本当はプロデューサーなんて目指してませんよね?だったら専門学校とか目指してると思いますし。全然楽しそうじゃないですし。でも素人でもない気もします。小石先輩とはどういう関係なんですか?それに......どこかで見たこともある気がします。」

質問が多い人だな。俺とあいつの関係なんて言えるわけないし、とりあえず設定を貫くか。見たこともあるって言うのはよく分からないけど.......。あー、もしかしたらあの時か。かなり悪目立ちしてたもんな。

「白花の言ったことを疑ってるって知ったら、あいつはショック受けると思いますよ。俺たちの関係は同じクラスメイトで、今はアイドルとプロデューサーの関係、それだけです。見たことあるというのは多分、前にも一時白花のマネージャーをやらせてもらったことがあるから、その時かと。」

「んー、個人的には小石先輩の想い人説を推したいんですけどね。とりあえず今はそれで納得します。すみません、時間をとってしまいまして。」

軽く頭を下げるとわざわざ扉を開けてくれた。そんなの現役アイドルが俺なんかにすべきことではないのに。最初思った印象とだいぶ違うのだろうか?それとも白花の外堀を埋めるために周りからの信頼も得ておきたいのか、正直分からない。もうちょっと詳しいことを知りたいから今度深見にでも訊いてみるか。


「そういやお前ってこんな働いてるけど、正味どんだけ稼いでるんだ?」

不躾な質問だと思ったが、白花ならまぁいいだろう。

「知らないわよ。」

は?

「は?じゃないわよ。私は小さい頃からあの世界に身を置いてるから、その頃からずっと両親に振り込まれてるわ。」

あー、お年玉的なやつか。お母さんが預かる言うて結局いつの間にか母の手にあるみたいな。まぁもしそれが今までずっと続いていたら凄い額になりそうだがな。

「じゃあ何にお金使ってんだ?」

「なんで今日はそんな積極的なのよ、気持ち悪い。.......そうね、行きつけの喫茶店があるから、使うとしたらそこぐらいかしら。普通のお店じゃ目立って居れたものじゃないから。」

......こう言っちゃ悪いが、いや、本当に悪いんだが、本当に私生活は質素なもんなんだな。老後のババァの方ほうがまだリアルを充実してるんじゃないか?


時期外れとは思うが、ホラー番組の特番が入った。今回は廃墟探索とその翌日に番組撮影の2日連続の仕事だった。一日目の夜に廃墟に行き、その翌日昼から撮影というハードワークだが、特に嫌な顔せず「了解」と返事をする。そして特に問題なく、現場に着いた。やはり本物の廃墟とあってそれなりに感じるものはあった。今回も榎本と共演するということで、遠くには笑顔で白花に手を振る榎本と、隣で多分スケジュールなどを伝えてる深見が見えた。それに白花も手を振り返す。

「怖いのは平気なのか?」

「そうね、幽霊とかよりも怖いものなんて沢山あるもの。」

そうな。

「じゃあ行ってるくるわ。」

「行ってらっしゃい。」

夫婦かな?


行ってらっしゃいとは言ったが、出演者、スタッフ、そしてそれより少し離れたところに出演者のマネージャーがついて回る。一人の時はさすがに怖いが、この大所帯で回るとさほど怖くもない。時々、疑惑の判定の悲鳴を上げたり、びっくりしたような動きを見せるが、それが本当かどうかよりも、それに怯える姿を求めているように見えた。それを深見と眺めていた。

「キャー!!」

一人の女性が叫ぶ。

「今のは?」

「嘘かな。」

「同意。」

「い゛や゛ぁぁぁぁぁ!!」

「今のは?」

「ガチ。」

「同意。」

「俺は白花からの願い事は断れないからやってるけど、深見は何でこんなことしてんだ?」

最初から嘘をついたことには罪悪感があるが、こればかりは許して欲しい。学校を辞めているとはいえ、全てを話すことはできない。

深見は少し怪訝そうな顔をしたが、特には突っ込まず、思い返すように語り始めた。その目は少し遠くを見ているようだった。

「駅前で就職の本を広げててだな、ほとんどのとこに落ちちまって項垂れてたら拾ってもらった。」

「浅。」

ご都合かよ。何だその少し前にありそうな漫画の導入は。

「ま、本人曰く悪い人には見えなかったそうでな。周りからは反対されたが、ようやく掴んだチャンスを逃すまいと俺も必死になってたら、いつの間にか認められてたって訳だ。」

......なんとなく違和感が覚えるんだよな。本当にそんな理由で見ず知らずの人間を自分のマネージャーにしたいものかな。それも今めっちゃ売れてるのに関わらず、そこに不安要素を取り込むかって話。

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