表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
165/607

歪んだ三角関係 9

「なぁ、吉永。自称美少女大好きオタクで常時可愛い女の子のケツ追いかけてるようなお前に、水仙と仲が悪そうな感じの人知らないか?」

「オタクってのはあくまで直接何かすることはなく、頑張る姿を応援したり、見守ったりするだけの存在だ。我らは保護者にあり、彼氏に非ず。一部、オタクという名をを忘れ欲に堕ちた豚共が握手会などで過剰なアプローチを求めたり、公共の場ということも弁えず迷惑行為に奔るせいでオタク=害悪などと言われる。あんなもの誇りを忘れた亡者に過ぎない。それを踏まえた上でオタクという言葉を使えよ若造。水仙さんと仲が悪い人など全く知らん。あと特には関係ないが死ね。」

めっちゃ喋るやん。


まぁ端っから吉永にはあんまり期待してなかったから別にいいけれど、他に宛てがあるとすれば相川と京だけだ。しかし京は恐らくまだ話を聞けるような状態ではない。そうなると相川だけど、どうかな?

「......」

「......」

昼休み、殴られる覚悟をしつつも相川を誘うと「わかった」だけ言うと、静かに場所を変えてくれた。そこにはいつもの覇気がなく、やはり水仙の事を心配している様子が見られた。しかし空いていた適当な机に座るも、なんと話題を振ればいいか悩んでいた。

「......ずっと気になってたんだけどよ。美桜の痴漢の件で、一回あたしも参加したことあったよな?ほら、美桜が倒れちまった時の。あんときから違和感はあったんだが、お前もしかして本当は痴漢なんかしてないんじゃないか?」

あー、そっか。あの場には確かこいつも一緒に居たな。他の生徒には『水仙に思い出したくないものを思い出させたクソ野郎』という感じだったが、さすがにあの場にいたらそうとは思わないのか。でもそうなるとここでなんと答えたものかな。本当のことを言ってしまってもいいのだろうか。そうしたら水仙の事をなんと思うのだろうか。......苦手だな、人間関係は。

「それは水仙に訊いてくれ。俺がどこまで話していいかわからない。で、本題何だが水仙と仲の悪い人間を探している。まぁそんな人が見つかればこんなに苦労することはないんだけどな。」

「そうか......。悪いがあたしも心当たりねぇな。強いて挙げるんだったらお前だろうけど。」

畜生、なんで嫌いな奴の名前一人出てこないんだ。このままじゃあいつが本当にいい子ちゃんになっちゃうじゃないか。

「例えばほら、水仙に一時彼氏いたじゃん。あの人も人望あったから『あの人の彼女面すんのやめてくんない?』てきな感じとかないの?」

「中学生か。いなかったなそんな人。『あの子ならお似合いかも』みたいなこと言われてたってのは何となく聞いたことはあったが。あー......でも何であの2人が別れたのかは知らねぇな。誰が訊いても答えてくれくれなかったそうだぜ。」

別れた理由か。勿論本当の事なんか言えるわけないだろうし、黙ってるのが一番いいんだろうか。

動機は分からないけれど、切り替えなければ何よりも時間がない。昼休みが終わるまでもう少し時間があったので、相川にお礼を言うとゴミ捨て場と人気のない水道がある場所を見て回った。理由は勿論凶器探し。しかしそんなものがあるとは思わなかった。聞いた話からだと武器は鋭利な物ではなく鈍器。直に水仙の頭部を見れたのならもう少し絞り込めるけれどそれはできない。もしかしたらゴミ捨て場に捨てられてはいないか、血を洗った後が残ってるのではないか、と思い一応調べてはみたが、やはりこれは空振りに終わった。ゴミは丁寧に一日おきに回収業者が来ているし、手洗い場なども錆なのかカビなのか傷なのか全然わからないくらいだった。

「どうやら手詰まりという感じだな。」

「まぁここなら人も来ないし大丈夫か。」

学校のだいぶ端、恐らく校舎から最も離れた手洗い場の近くで仰向けに寝ていると鴛海が声を掛けてきた。確か初めて鶴に会った時もこんな感じだったが。しかし前と違って今は太陽の角度的にスカートの中が見えてしまう。

「......あ、よかった。」

「おい。今お前私のスカート見たよな?それで『あまりの身長の低さに仰向けでも中見えないとか。残念だ。』とか思ったろあ?」

「いえ、クマさんには興味無いんで。」

「なめんなよ!!えっと......薄ピンクのシルク地に白いレースだわ!!」

「......そうか。うん、昨日雑誌でそういうの見たのか?」


「そもそも犯人は本当に水仙さんを殺す気があったのだろうか。水仙さんを殴った後、証拠隠滅をして1年7組に彼女を運んだのは分かるが、せめて脈拍や心拍を確認したりして気づくのではないだろうか。まぁ気が動転していてミスをするなんてドラマなどでは常套だが。さて、これをどう思う?」

鴛海の渾身の一撃は見事俺の鳩尾にクリーンヒットし、しばらく悶絶していた。しかし質問されては答えなければ。

「今回の件が突発的だったのなら全然ありえることだろ。気が動転してしちゃって、てっきり水仙を殺しちゃったと思って動揺したとしても。」

......あ、違う。

「動揺なんかしてたらどこかしらでミスが出るはずなんだ。」

「だな。」

俺だけの調査なら単なる俺の観察眼不足なんだが、今回は俺なんかより遥かに頭が切れるであろう鴛海もいる。そこで何も証拠が残っていないということは、相手は恐らく冷静だった。今回は突発的なことではなく、計画されたもの、しかも水仙を端から殺すつもりのない事件ということになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ