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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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歪んだ三角関係 6

水仙さんのお見送りをすると、また先生たちと少しだけ話した。

俺はやはり容疑者だけあって水仙がいる病院は教えて貰えないとのこと。というか他の人も基本は教えられないらしい。先程の母親は勿論知っているが。このまま水仙の回復を待っていてもいいんだが、あんまり悠長なこともいってはいられない。

「水仙に関することを隠して俺が犯人てことにする?」

校長室に戻ってくると、なぜだかノアが俺の元座っていた場所にいた。すでに大方の事情は知っているらしく、真意は分からないがそんな提案を受けた。

「とは若干違うけれど、犯人探しをしないっていうのも違うけど......。順を追って説明するとね、犯人が水仙さんが生きてると知ったらどうなるかしら?恐らく今度こそ殺しに行くと思うわ。今は意識がなくても、戻ったら終わりだもの。でも不幸中の幸い、何故か狐神が犯人とされ、水仙さんの生存は生徒には知らされていない。少なくてもその間に水仙さんに被害が行くことはないと思うわ。そして犯人にバレないよう捜査を進め、でも表面では全然すすんでないように演じる。そして可能な限り早くに真犯人を捕まえて、水仙さんには安全に学校に戻ってもらうことができると思うの。でもこれはあなたに相当な負荷をかけてしまうわ。」

殺人未遂でみんなに迫害を受けること。犯人を演じつつ、けれど犯人ではないと主張し続けること。それと並行して証拠を集めること、しかしそれを真犯人には知られてはならないため、何も集まってないフリをすること。極短い期間で犯人を見つけないと、本当に俺が犯人とされ、場合によっては少年院などに送られてしまうこと。より犯人らしく見せるため、真犯人を探す上で助っ人はほとんど頼れないこと。

「誤魔化せる期間は2日ぐらいかしらね。その間に真犯人を特定したいんだけれど。」

難しいだろうな。この学校にいる膨大な生徒からたった2日で犯人を見つけ出すなんて。それに動かぬ証拠とかだって必要になる。当てずっぽうに名前言って『はい正解です!』とは勿論ならない。......それにそもそもこれは水仙の安全を確保する場合だ。俺が犯人ではない証拠を集めたほうがずっと楽だし、何より意識を目覚めた水仙に『犯人は狐神君ではありません。』と言ってもらえば済むだけの話だ。そこでもし真犯人の名前も言ってくれれば万々歳だ。

......なーんて、やらない言い訳必死に考えてるあたり答えなんか出てると思うがな。

「そういや何でノアはここにいるんだ?」

「急に話題を変えたわね。」

「ちょっと気になって。」

「まぁいいけれど。実は今さっきまで校長に掛け合って、本格的な生徒会は新しい学年に再設立してもらえるようお願いしたの。今回のはあくまで3月中までの仮初の生徒会。......やっぱり私の生徒会にはあなたが欲しいわ。だから4月にまたあなたに声をかける。その時にいい返事を貰えることを願ってる。」

瀬田さんと会って間もない頃、『俺を蔑んできた奴らを見下せる生徒会長になる』みたいなことを言ったが、どうやらそれは無理そうだな。大切な友達に『あなたが欲しい』なんて言われちゃったら、チョロい俺なんかは簡単にその手を取ってしまう。本当に馬鹿だな、俺。

「しゃあない。その時に胸張っていい返事ができるように、俺にできることを頑張ってみますか。」


そんな訳で捜査開始。まずはやはり第一発見者に事情を聞くべきだな。式之宮先生からは先ほど訊いた情報が全てらしいからもう一人の目撃者に当たってみるか。

「話したくない、と。」

「......。」

京はゆっくりと首を縦に振った。

「『俺の事を信じてないわけじゃないけど、まだ迷ってる』ってか?」

京はゆっくりと首を縦に振った。

「『だからもう少しだけ考える時間が欲しい。ごめん。』みたいな感じ?」

京はゆっくりと首を縦に振った。

「分かった。ごめんな、時間取っちゃって。」

京はゆっくりと首を縦に振った。

「赤べこかよ。」

京は素早く首を横に振った。


放課後、生徒会役員ではない俺は何かしらの部活、委員会に入らなくてはならないが、今回の事件を解決するまでは不問にすると校長から許しが出た。今回の件は即座に解決しなくてはならないので放課後みんなが出払った後に一人、水仙が初めに見つかった場所を調べた。

1年7組、その後ろ端。床には血などは一切見られなく、恐らく拭き取った後だろう。

「でも溝とかにもほとんど血が見えないんだよなー。」

もし犯行現場がここならば溝とかにもたっぷり血は溜まっているはず。昨日の今日で拭き取ることも恐らく難しいだろう。つまり犯行現場はここではなく別の場所。

教室を出て廊下に出る。もしここまで運ばれたのなら、廊下に血痕の一つや二つでも残っているはず。仮に拭き取られていたとしても少しくらい痕が残っていると思う。が、そこにはそれらしきものが一切見つかっていない。

「ということは......」

血が固まってから移動した、とか?でもどうしてそんなことを。途中誰かに見つかりでもしたらそこでゲームオーバーだぞ。

「で、次は......」

次の指示がメールで送られてくる。

『なんでその教室の移動したのかはやはり君を一番犯人にしやすいからだろうな。それともう一つは恐らく犯行場所で犯人を特定されてしまうからだろう。でも後者は大した意味はない。放課後に一般生徒が立ち寄れる場所での犯行などリスクが高すぎる。突発的なものなら可能性はあるかもしれないが、証拠隠滅までできる時間があるとは思えない。そして現状流血の痕跡の報告などは受けていない。』

なるほどなー、勉強になるわ。

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