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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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集いし強者 7

禦王殘の発言に2人の先生は硬直していた。俺も少しは驚いたが、あの会話からして何となくは予想していた。女性陣は特に驚きも何もない様子。しかしそんなことを言って間違いなく『いいよ』なんてなるはずもない。式之宮先生だっていくら生徒思いといっても学校の人間。その学校が不利な状況を作ると言われて黙るはずもない。

「......君らがあの事件について知っていたとしても、大きく驚くことはない。瀬田や大鵠から聞いたのだろうと納得できる。そしてそれを一年全員が知れば大鵠を会長の座から降ろせるという魂胆か。」

「話が早くて助かります。しかし先生方が喜んで賛同してくれるとは思ってません。ですのでまず、いくつか確認させていただきたいことがあるのですが。」

ノアの潤滑な進行により無駄な会話が一切なく話が進んでいく。そして意外にも遠井先生もいちゃもんなどは一切つけず、ただ話を聞いていた。

「去年のこともあり、大鵠を生徒会長にはしたくないと思ってますよね。でも先生の立場上『君は前科があるから生徒会長になる事は許さない』とは言えない。更生して本当により良い学校にしたいと考えてる可能性はゼロとは言い切れないですから。それにあの事件の罰はもう与えた。そこに再度生徒会長の立候補を拒否するなんて今更追加できません。であれば、他の誰か生徒会長立候補者が順当に勝ってほしいと願った。しかしそれは私たちの敗北により叶わなかった。もしこのまま大鵠が半年とはいえ猛威を振るえば、学校にどんな被害がでるか分からない。でも可能性だけで生徒を縛り上げることはできない。つまり学校側は絶対に後手に回ることが強要されています。」

「そうだな、まさにノアの言う通りだよ。先生が必ずしも生徒より上に立っているという訳じゃないんだ。情けない話、今後は明るい場所で行われる不正な制度を拒否することぐらいしか出来ないんだよ。」

「つまり先生方は口にはできないけど、私たちと同じく大鵠にはその座を降りて欲しいと思っていますね。」

2人の先生は何も言わなかった。つまりそういうことだろう。教師と生徒の立場もいまやよく分からないな。酷いところでは教師がいじめられているなんて聞く。必死に公務員試験に向けて勉強して、就活も死に物狂いで頑張って、それでようやく叶った夢がそんなものなら俺には耐えられない。

「その為に私たちに協力しろと言うの?こんなこと脅迫とさして変わらないわ。」

「可愛い生徒からの可愛いお願いですよ、遠井先生。」

「あなたが、可愛い?正気ですか?」

いちいちつっかかるな、俺が可愛い訳ないだろ。萌え萌えキュンとかやってやろうか?死人が出るぞ。

「瀬田さんとかもそうでしたが『信頼してるから』と話してくれるのは嬉しいですけど、事実1年の数人は事件を知っています。そして私たちの中に裏切る人物がいないとも限らないです。今後も2、3年が事件のことを絶対に話さないという確証もないです。」

そこで選手交代。ノアから禦王殘へ繋がる。

「一つはこの提案を断り、このままあいつを野放しにする。まぁ何人の生徒がここを辞め、自殺するか分からないが。もう一つは事件を一年に伝え、大鵠を降ろすか。こっちにはしゃあねぇからサービスとして外には広げないよう1年に言っときます。」

「そんな事できるの?」

1年に広げた上で校外に一切いかないなんて都合のいいものがあるとは思えなかった。それこそ大鵠のような支配をするのだろうか。それはあまり好かないが……。好かないとか言ってる場合じゃないか。

「できる、というかやるしかねぇわな。交渉材料としてはそんぐれぇしかねぇからな。それに当てがないわけじゃない。」

「......私たちにそこまでして協力を仰ぐ理由はなんですか?皆さんの要求が分かりません。私たちに何を求めてますか?あなた達だけでも事を起こそうと思えば起こせるでしょう?」

つまり大鵠をあそこから落とす為には先生たちに何かやってもらう事があるということか。先生たちにしか出来ないこと......。保護者に関係することとか、過去の出来事の記録に関することとか?


暴力事件の冤罪も晴れたということで、そのために使っていた女性の服を全て此方にあげた。本人は驚いていたが案外気に入った様子で、この調子で外に出ることも好きになってほしい。

「じゃあ......ちょっと行ってくるわ。」

此方の中学は基本私服登校の為、白花がチョイスした一番似合う服で出かけた。とはいえ、そんなことだけで学校へ行く不安や恐怖が消えるものだとは思ってない。みんなの視線、授業の進行状況、休み時間、昼食時の過ごし方など怖いことばかりだ。それに向かおうとする此方に少し勇気をもらった。

「此方。」

「なん?」

「すごい似合ってるぞ、その服。」

「......よくそんなうすら寒いこと言えんな。」

その口の悪さも俺にだけ向けられるものならいいか。


俺もその後いつもの通りに学校に向かった。のんびりと駅まで歩き、電車に揺られいつもの車窓を眺めがら、「クソだる」とか思いながら電車を降りる。

とも思ったが、何故だか今日は歩いて学校に行きたい気分だった。天気もいいし、此方にとっては晴れの門出となったかな。

「......ぁ」

とはいえ俺の気分はあんまり上がらないな。禦王殘から昨日聞いた話も穏やかじゃないしな。勝算の高い勝負ってわけでもないし。

「......ぁぅ」

あれ?でもちょっと待てよ。俺の最終目的は此方に被害がいかないこと。今やってるのは大鵠を生徒会長の座から引きずり下ろす、できればもうこの学校から退学させることも厭わない。この2つはもしかして繋がらない?

「......難しいなー。」

「.......ぁ、あの......」

いっそ本人にどうやったら黙っててもらえますかって訊いた方が早そうな気がする。あの人ならゲーム感覚で報酬として黙っててくれそうだし。......案外いんじゃね?確証はないけど、何もしないよりかはマシそう。


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