集いし強者 3
「ところで狐神君はいつになったら俺に歯向ってくるの?」
「……誤魔化せないと思うんで本音言いますけど、此方の情報持っていられる限り、俺は大鵠さんには歯向かうのは難しいかと。斑咬のこともありますし。」
「随分とあっさり言うんだね。でも君の目はまだ死んでない。寧ろ前より輝きを持ったくらいだ。そのままもっと頑張って欲しいな……それをへし折ったら君はどんな風に変わるんだろうね。」
「そんな期待されても困ります。……実力制度の本懐はいつみんなに説明しようと考えてるんですか?」
「そうだねー、テキトーにそのうちするよ。」
その言葉を機に俺は部屋を出た。これ以上話すことは多分ないだろうし、もし何かあれば小熊を通して連絡でもしてくるだろう。
「大鵠を生徒会長から降ろす手段て考えてる?」
「……いくつかはな。でも勝算はどれも微妙って感じだな。」
やはり俺だけではろくな考えなど思いつかない。ここは大人しく人に頼ろう。禦王殘とノアは選挙以降関係がよく分からないから、とりあえず今日は禦王殘単独でインタビュー。場所は禦王殘の指定で視聴覚室。昔は怖くてこんなこと出来なかっただろうが、今では全然緊張もしない。
「……確証はないんだけど、そろそろ大鵠が全校生徒に実力制度の説明を開始すると思う。できればその前にこっちが動いて先に手を打ちたいと考えてるんだけど、どう思う?」
「俺もそれは考えてた。だからもう手は打ってある。」
大鵠が動き出すとしたら新学期の直後。それは普通に考えれば分かるし、それを大鵠が俺らに気付かれないと思ってるわけがない。しかし大鵠のやり方は、こちらの手を全て使った後にねじ伏せる、所謂王者戦法。俺らの全力の策が練られるまでは手を出してこないだろう。
呼んだ人が集まってくるまで、そんな禦王殘の説明を聞いていた。誰を呼んだのかは俺にも何となく予想できていた。2年のほとんどが敵に回っており、3年ももうすぐ卒業、仲間になるのは1年だろう。それも現段階において大鵠の考えを知っている人であり、尚且つ優秀な人間でなければ大鵠を打ち倒せないだろう。つまり......。
「大鵠により選ばれた各クラスのリーダー候補生だ。」
教室に入って来たのは明らかにパンピーとは雰囲気の違う生徒たちだった。代永や兜狩といった面識のある生徒もいたが、何人かは顔とクラスくらいしか資料で見たこともない人も混じっていた。予め禦王殘から話を聞いていたからか、大部分は真面目な顔をしている。一部はマジでやばそうだから関わらんとこ。そして各々が好きな席に座ると、禦王殘が席を立ち、教壇に立つ。
「まず、ここに来てくれて感謝する。早速本題に入るが「少し構わないだろうか?」早速か……なんだ、伽藍堂。」
たしかこいつは11組の伽藍堂三千大だったかな。家が寺だったか、そこら辺の出生で名前も珍しいかった気がする。
「儂が其方から聞いた話だと、ここには大鵠殿から選ばれた優秀な人材が集まり、彼の制度をどう思うかと議論する場と考えていたのだが。それにしてもやや風変りな者が見えるんだが?」
そう言うと俺を見る。確かに事情を説明しないと俺がここにいるのは普通におかしい。俺から説明したほうがいいだろうか。
「えっと、俺がここに参加したわけは次期生徒会メンバーに確定しているからだそうだ。確かに大鵠さんから話は聞いているが、ここにいるみんなみたく優秀かと言われれば違うと思う。簡単に言っておくと、俺は大鵠さんに弱みを握られてて嫌々時期生徒会に所属してる。できるなら本当に抜け出したい。」
それを言ったら一藤もそうだろうが、あいつは完全に向こう側だ。ここに呼ぶメリットはない。
「なるほど、承知した。いやなに、ただ理由が知りたかっただけだ。別に立ち去れなど言う気はないし、禦王殘殿から声がかかるだけで儂は其方をどうこう言う気はない。すまなかった、話を続けてもらっていいだろうか。」
うーん、やっぱり出生が出生なだけに達観して見える。なんかお爺さんを相手にしているみたいだな。
「本題は『実力制度の実施』これをどう思っているかだ。進行次第では今後の動きにも関係してくる。」
もしこれに反対する生徒が多数、もしくは全員だった場合、どうやってそれを阻止するかに変わってくるのだろう。個人的にはそっちに行って欲しい気持ちが大いにあるが。
「まずこの制度の概要を確認する。」
そういって禦王殘はプロジェクターを起動させた。
『クラスを完全に評価順に変える。
評価は勉強、運動、過去の実績、学校外の活動など、明確にされてはいないが多岐に渡ると予想。
恐らく大鵠による判断によりクラスが決定する。
優秀なクラスにはあらゆる特権が与えられ、劣等なクラスには学校においてあらゆる権利が剥奪される。
毎年最も劣っているクラス全員を退学とする。
最優秀クラスで卒業した生徒は望む進路に必ず進ませる。
クラス替えはテスト毎に行う。』




