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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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犯人の知らない事件 13

なるほど確かに。これはどう答えたものか。「そう聞こえちゃってたらごめんね?」とか言って誤魔化すこともできるだろうが、それでは本題の『あの事件の日の京の行動』を聞き出すまでに時間がかかってしまう。だったら少しは怪しまれても狐神と関わりを持ってると設定をつけくわえたほうがいいか。穂積として初めて会った時に、狐神とはほとんど他人のような話し方をしてしまっているが。......確か穂積は料理部だったよな。

「私の後輩に水仙っていう子がいるんだけど。あ、知ってる?その子と同じ部活で前に相談されたことがあったの。あの子もほら、被害者だったから。で、その時に聞いた話の印象なんだけどね、どうも狐神君があなたを好きになるとは思えないかなって。ほら、あの人って自覚のある......その......残念な人っていうか、恵まれなかった人っていうか、遺伝子に拒絶された人っていうか、ちょっとこの時代には適さなかった人っていうかと、とりあえずは人間で生まれてきたけどっていうか......。とりあえず高嶺の花を取ろうとせず、近くの雑草で済ませそうな人って印象があって。」

やべー、自分へのディスりが上手すぎて笑う。しかも京も史上一番の共感示してくれててすごい複雑。でもまぁ怪しまれなかっただけ御の字か。水仙には後で適当に話をして合わせてもらおう。

でも共感してくれたということは少なからずこいつも本当に狐神に好かれているかどうかは訝しんでたということか。その確認の為のあの質問だったのかな?ったくヒヤヒヤさせやがって。

「だからもし京ちゃんが誰かにそう聞いたのなら、それを話している人の方が怪しいのかなって思ったの。」

その人が暴力事件と繋がるかは分からないけれど。

きっとあの日俺の机に入れようと思っていた手紙もその誰かに唆されて書いたのだろう。こいつの性格だ、「嫌です」なんて断れるはずもない。

さて、じゃあそれは誰なのか。京の言葉を待つ。

「ゃ……やきゅ……の……人。」

誰かまでは分からない。人の顔を見るのは苦手だと。ただ、チア部と合同練習の時にそう言われたそう。もしかしたら野球部の格好をした他人かも、とも思ったが、他のメンバーとも仲良くやっていたり、野球も普通に上手かったらしく、その線はなさそう。しかし俺が暴力事件の冤罪解決に動き出した直後にこうやって動き始めたということは、恐らくそいつがあの暴力事件に関与しているのは間違いなさそうだな。何となく犯人に近づいてきたかな。

「そっか……ごめんね、こんなこと訊いて。でも野球部の人かぁ。そういえば前に野球部で狐神君が暴力問題起こしてたよね。あの時京ちゃんは何してた?」

このド下手くそ。もっと自然な会話の流れがあるやろがい。

そんな俺の話題転換の下手くそさに京も驚いていた。しかしそこには何も突っ込んではくれず、急いでスケジュール帳を確認してくれた。しかしトイレが近かったようで、先にそちらに向かった。

「......本当に顔になんでも顔に出ちゃう子なんだな。」

悪いが勝手に中身を見させてもらった。

『みんなが誕生日パーティーでいないから居残り練習。』

きっとあいつはあの日の全てを知ってるんだ。あの驚いた顔だって俺の話題転換の下手くそさなんかじゃない。京にピンポイントで刺さる質問だったから驚いてたんだ。だから今必死にトイレで何を言うか考えているのだろう。......ただ、そうやって考えてるってことは俺にばれては不味いということ。つまり俺の敵ってわけか。


やはりその後京はしらを切った。「部活がなかったから家にいた」と。ある程度予想できていたとはいえ、こうなっては多少強引な手に出るしかない。京が必死に隠したがっている真実を強引に話させる。何で京が話したくないのかは知らないが、それよりもずっと強い脅迫材料を持ってくるとしよう。あれだけメンタルの弱そうな女だ、材料なんてどうにでもなる。


1月4日。今日は瀬田さんに時間を作ってもらって話を聞いてもらった。これまでの報告とこれからの動きについて。瀬田さんは昨晩勉強をしていたらしく、とても眠そうにしていた。相談相手間違えたか?と思えるくらいに。

「......てな感じなんですけどどう思います。」

「......どう思うか、ねー。」

アイスコーヒーをゆっくりかき回している。時々反対方向に回したりしているが、とても意味のある行為とは思えない。しばらく待ってみても解答をもらえるような様子はなく、俺から話を進めようと口を開く。

「あの瀬「随分焦ってんな。」.....そりゃ焦りもしますよ。時間がないんですから。」

始業式は8日。そうすれば残るは3日。その間に事件の解決、さらにはその浸透までやらなくてはいけない。確かに正直達成されなくても、いきなり大鵠から捨てられるということはないだろうが何をされるか分からない。だったらせめて期限まではできる限りのことをしたい。

「その為に1人の人間が傷つこうがか?」

「向こうに加担するような人間まで擁護は出来ないです。」

「そうか。じゃあ端的に言おう。失望した。」

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