犯人の知らない事件 10
京の言葉を全部拾っていると時間がかかり過ぎるので要約。
『どうやら俺が京を好きらしく、年明けにでも告白するらしい。しかしそれを面と向かって拒否するのも、やはり俺だと怖い。だから前もって書いたこの手紙を机の中の教科書にでも挟んで静かに告白を断ろうとした。けれど机の中には一切のものがないため、もしかしたら他の誰かに見つかってしまうかもしれない。嗚呼どうしたらいいものか。』
「とりあえず殴るね。」
「へっ!?」
あぁつい口が滑ってしまった。ついでに手も滑りそうだった。
「あ、ごめんね。ついその狐神君てのにイラついちゃって。だって私も聞いたことあるけど、凄い悪漢なんだよね?そんな子が今度は君みたいな子にも手を出そうなんて信じられないよ。」
まずいまずい、確かに俺の中の水仙だったら平気で言いそうな言葉だが、少なくてもみんなの前では絶対そんなこと言わない。
てか何?俺はこいつのこと好きなの?で年明け告白してフラれんの?突っ込みどこ多すぎるんだけど。確かにこいつの顔とかこの庇護欲誘われる感じで大抵の男は「おっ?おっ?」ってなるかもしれないけどあんま調子乗んなよ。俺をそこいらの男子と同じにすんな。可愛い女の子見ると大体『調子乗ってんだろ』ってなんか理由つけて罵倒したい系男子だぞ。
まぁそんなことはどうでもいい。京の様子を見ても俺(穂積)と京の仲は進展したといえる。......乙女ゲーでの次の選択肢はきっと......。
「んー、でもちょっと心配かな。......そうだ!良かったら今度相談乗らせてくれないかな?いい感じのカフェとか知ってるの。きっと京ちゃんも気に入ってくれるんじゃないかな?」
はい、あざとく手なんて叩いちゃって首を良い感じに傾けて。最後に笑顔であらかわいい。少し強引なところも見せちゃって女の子はキュンキュン必死ですよ。いや知らんけど。カフェ?そんなの知るかよ。適当に検索すれば出てくんだろ。なんなら昨日行ったとこでもいいし。とりあえず次の約束とか、連絡先とかゲットできれば何でもいいわ。
「...あっ...えっ...と...」
俺のいきなりの提案に顔を赤らめながら必死に言葉を探している。
......まぁ、正直に言えば、この子に対してそれなりの好感が俺の中にある。確か挙動には難ありだが、性格は別に悪くない人間だと思う。良くも悪くも、この子の感情はこのようにしてとても顔や言動に表れやすい。さすがに演技でここまでできるものだと思わない。この子はきっと正直者なのだろう。まぁ嘘をついたとしてもすぐバレるだろうし。......それにここまで言い淀んでくれるということは、相手を思って言葉を選んでくれてるとも取れると思う。鏡石みたいに条件反射みたいに言葉を吐き出しそうな奴よりずっといい。......でもこの好感のほとんどはは幼い頃の此方に少し似ているところがあるから。
その後何とか連絡を交換することができ、今日はそこでお別れとなった。最後にほんの少しだけ笑顔を見せてくれたが、いつか俺が穂積と知った日にはどんな顔をするのだろうか。
てな訳で電話で事後報告。
「ほー!それは驚いた。なるほど、乙女ゲームで培われた知識が見事発揮されたというわけだね。いやー、君は見事に僕の思考を凌駕した動きをしてくれるよ。」
「まぁ、少し複雑ではありますが、そんな感じでことは順調に進んでますって報告です。次は年明けの3日に会う約束をしました。」
「ということは今回僕が動くことはもうなさそうだね。......にしても不思議だ。君が普通の女の子に対して好感を持つなんて。何だね?恋でもしてしまったかね?」
「他人が噂で俺の印象付けられるのと、可愛いだの謳われてるだけで調子乗ってるって決めつけるのって同じだなって気づいたら、あんまり嫌いにならなかったです。」
前に水仙に言われたことが案外俺の中に残ってた。
『もう一度、偏見も何も無く狐神君と話そうと思ったの。出会いは最悪の形になっちゃったけど、今からでもちゃんとあなたを知ろうって。』
俺も学校にいる人間全員が敵って思ってた時もあった。でもちゃんと俺を見てくれる人もいる。まぁ選挙の時にまた俺の評価は下がっただろうが、大多数の誰かより少しの友達を大切にしたい。
「へぇー、そう。」
「てなわけで今から久しぶりに両親に会ってきます。また動きがあれば連絡しますね。」
「あぁ、じゃ。」
そういうとすぐ電話が切れた。
何となく、本当に何となくだけれど、後半の小熊の態度に違和感を覚えた。
午後は両親のいる場所へと向かった。場所としてはここからだいぶ遠くにあり、またかなり田舎の方にあるため今から出たとしても終電にギリギリ間に合うくらいだ。母さんは前まで精神病院に通っていたが、今はかなり良くなってきたらしく、今は母方の祖父祖母の家に泊っている。因みに此方をぞんざいに扱ったクズ共は父方。この年明け祖父母の家に行くのは毎年恒例になっており、此方も最初は嫌々だったが、最近では嫌ぐらいになっている。確かに普段家にいる此方にとって電車やバスは苦痛に感じるかもしれない。
だからお兄ちゃん、頑張りました。
「バイクの免許取った。」
「は?」
実は前々からこの話は主に父親としていた。どうやったら此方に少しでも来てほしくなるか。何よりはやはり周りからの視線だと思う。例え周りが此方を全く気に留めてなくても、此方の中では笑われてる、睨みつけられてるなどという考えがどうしても過ってしまう。出来れば父さんに車を出して欲しいところだが、生憎父さんは癲癇のため免許は持てない。であれば俺がバイクの免許をとればいいのではないかと。
「いやあんさ、バイクの2人乗りは確か免許取って1年経たなきゃダメじゃん?」
「……ダメじゃん。」




