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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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リーダーの資質 6

そこにはいくつかの項目が示してあった。『今までの実績』と『これから取り組む予定の活動』が箇条書きにされている。

「これらを全て説明させてもらうと時間がかかってしまうので『これから取り込む予定の活動』、その中でも恐らく皆さんが最も気になっていると思います、この『文化祭と体育祭の同年度開催』について少し話をさせていただきます。』

これには会場も少しざわつく。俺はまだ一年だから知らんが、どうやらこの問題はだいぶ前から言われていたらしい。『どうして同じ年にやらないのか』『これでは片方は一回しか楽しめない』などなど。けれど具体的な動きは一切なかったそうだ。それを取り上げたことで一気に関心が向けられる。

「まず同じ年にできない理由として大きく2つあります。予算と学力低下の可能性です。そして今回、禦王殘君が注目したのは学力の低下です。どちらをやるにしてもどうしても準備期間を多く必要とします。そしてその分授業ができないとなるとどうしても授業のペースを上げたり、授業数を増やすことも視野に入れなければいけません。ですがそうすると生徒勉強への意欲が下がってしまうのも予想できます。この学校は全国でもトップクラスの学力を売りにもしています。それを脅かす可能性があればそれを極力排除する。それが原因の一端です。」

少なくても理由が分かればみんな多少は納得する部分はあると思う。『じゃあ文化祭の準備期間の分ペース上げるからね。』と言われれば多分授業の質は下がる。その準備期間分を一年で分割できればいいのだろうけど、前に式之宮先生が言ってたが、その学期内で進めなくてはならない範囲があるらしい。

「そこで禦王殘君はいくつか学校生活に関し、新たな施策の導入を検討しています。現在の形態ですが50分の授業の後、10分の休憩、移動時間となってます。それを授業25分、休憩10分、授業25分休憩と細かく区切り、途中休憩を入れるポモドーロ・テクニックを参考にした考え。休憩時間には最もリラックス効果が期待されるペールギュント組曲『朝』、その他リラックス効果が高いとされる音楽を放送。授業中のみ、必要な物以外は全て自分の持つロッカーに入れ、携帯も専用の回収ボックスに入れることでオンオフのトリガーとなる事を目指す。他にもいくつかございますが、まだ先も多く控えているので私の話はここまでにさせていただきます。どうかより過ごしやすい学園生活を目指す禦王殘君にあなたのお力添え、お待ちしています。御清聴ありがとうございました。」

白花が頭を下げると大きな拍手が送られた。てっきり俺としては自分の可愛さを売りにした下種で下劣な方法を期待していたのに、これじゃあ普通にめちゃくちゃいい演説じゃねぇか。会場の生徒にはとても好印象に映っただろう。......さて、こうなってくると俺はともかく、ノアの応援演説の代永ってのがどんなふうに語るか見物だな。

「お疲れ様です、白花さん。すごい演説でしたね。正直ここまでだとは思ってませんでした。」

「そんなことないよ。もう緊張で心臓バクバク。蒼ちゃんも頑張ってね。」

それだけ言葉を交わすと代永はステージに上がっていった。

「正直お前があそこまで見事な演説できるとは思ってなかった。大したもんだな。」

「もう、狐神君まで。でもありがとね、そう言われると少しだけ安心できるよ。でもちょっと疲れちゃったかも。」

なになに?『あんたに言われるまでもない。不快だから話掛けないで?』了解です。


代永がステージに上がるとやがて会場に静寂が包む。代永はどうやら台本のようなものは一切持っておらず、毅然とした姿で話し始めた。

「それでは私、代永蒼が生徒会長候補、Noa weiss starkaiserの応援演説をさせていただきます。最初に私がこの学校に入学してから今迄に感じたことがあります。それは実にいろいろな個性の生徒がここにいることです。事実ここの部活動は量でも質でも全国トップクラスですし、そこで素晴らしい成果を出しています。ではその多くの生徒を束ね、導く生徒は誰か?そうなった際、私はやはり一番にノアさんを推したいです。理由はいくつもあります。人の話をちゃんと聞くこと、率先して自分が動くこと、周りがよく見えていること、同じ立場になって考えられること、自分の能力に驕らないこと。けれどその中でも最もすごいと思えることは、常に研鑽を欠かさないその姿です。前に彼女に言われました。『私より才能のある人なんてたくさんいる。でもそこに苦言も言い訳もしてる暇があれば、私はその分努力し続ける』と。だから彼女の事を決して才能に恵まれた人間として見ないでください。スタートはきっと限りなく同じ位置から走り出したはずです。」

ノアよりも優れた人なんかそうそういないと思っていたけれど、本人の中では違うんだろうな。でもやっぱりすごい人って自分の中に確固として強い気持ちがあるんだな。......でもきっとそれを周りに強要すれば間違いなく反感が生まれるぞ。

「彼女は今日この日までにたくさんの新しい施策やイベントなどを考えてきました。私はその書類を見た時、どれもとても魅力的で心が躍るようでした。......でも彼女はそれらの書類を全て破棄しました。何でだと思います?」

みんなに問いかけることでより印象に残る演説ができる、とは考えてなさそうだった。ただ純粋にみんなに考えてほしそうな顔をしてした。

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