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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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リーダーの資質 3

2人の話を聞いて思ったことは、やっぱり2人ともこのままでは不味いと思っていること、そしてこれは完全に俺の憶測だが、個人というより、家柄や出生故に『トップに立たなければならない』という縛りのようなものがある。でなければ半年近くもあの人の下で働くなんてことは出来ないと思うから。


「……とまぁそんな感じです。正直このまま何もしなくても大鵠さんの勝利はほぼ確定かと。」

「一気に崩れたね。ノアさんが消えて、残る戦力は禦王殘君だけか。とはいえその禦王殘君がやはりかなり厄介だけれど。」

ここで何故大鵠の勝利がほぼ確定かと言ったか。確かにあの合宿だけでは1年全ての心を掌握できた訳では無い。禦王殘も1年にそれなりに信頼されている。けれどノアが抜けたことにより大きすぎる損失があった。

応援演説。

生徒会長の立候補者を()てるそれは、禦王殘と対等レベルのものを持ち、広い人脈とカリスマを持つノアが演説をすれば、寧ろこちらが有利になっていた。けれどそれをノアは拒んでしまったため、現状宛がないのだ。鶴もいい線はいってるだろうが、交友関係が広いとはあまり思えない。

「……あの、前から少し思ってたんですけど、大鵠さんは鶴となんかあったんですか?」

前に鶴とノアに会った時も『蓬莱殿の娘』とか言ってたし、今も全く敵視すらしてないし。

「ん?いや別に。彼女には何も怖がるところがないからかな。」

この発言は嘘だと思う。あまりにも関心が無さすぎる。前に夏川も『今の生徒会のメンバーにはスペックで勝てない』と言ってたし。でもそれを確かめる術も持ってないから、ここ止まりなんだけど。

「じゃあ禦王殘には何か手を打ちますか?」

「どうしよっか。多分このままでも勝てるだろうけど、念には念を入れておきたい気持ちもあるしなー。……狐神君から見て今の禦王殘君はどんな感じ?だいぶキツそうだった?」

「……そうですね。キツそうでした。今はノア以外のメンバーで対抗策は練っていますが、やはり2年生のほぼ全員の票を独占されてるところがキツすぎます。そして合宿での効果も大きかったですし、例え3年の票を全て集められてもまだ足りないって感じですね。」

そのためにはやはり1年生をどうにかしてこちらに引き付けないと。勿論大鵠の具体的な方針を伝えられればこちらに付けることは出来そうだけれど、それはさすがに出来ない。何とも歯痒いところだ。

「とはいえ流石に何もせずにただその日を待つだけというのも退屈だね。何か考えておこっと。」


翌日。生徒会の件で忙しいこの時期に珍しくクラスで話しかけてきた奴がいた。いや、普通に考えればむしろ遅いくらいだったが。

「これはこの前妹のクラスがやったクラスの劇なんだが、これなんだがお前に似てないか?」

仁紫が携帯の画面を俺に見せてくる。そこには鏡で嫌というほど見せられたブサイクが映っていた。

しかし携帯に百合の花のシールがついているあたりこれはこいつのではなさそうだ。そういやこいつの家貧乏だったもんな。携帯買う金すらないとは高校生としてかなりつらいな。

「あー……そうね。似てるね。……はいはい、俺ですよ。だけど言っとくけどこれは俺100%悪くないからな。恨むなら九条って人恨め。あいつが諸悪の根源だから。」

仁紫は携帯の画面を差し出し俺に見せる。それはこの前やった劇の映像だった。

「別にこの劇でお前に何か文句をつけようとは思ってない。その九条って人が妹の恩人で、そのさらに恩人がお前らしいからな。正直怪しいが。」

「じゃあ一体何の用だ?」

『......そうだな、じゃあいつかその答えを聞かせてくれることを待っている。』

にしても見返すとホント我ながらよくこんな小っ恥ずかしいセリフ吐けたものだ。こんなくっさいセリフ、許されるのはイケメンだけなのに。……ブサイクには生きづらい。

たっぷり最初から最後まで、20分ぐらいだろうか、みっちり映像を流した後、恥ずかしさのあまり死んでいる俺に仁紫は伝えた。

「不肖ながらこの劇は大好評らしくてな、予想していた結果の何倍もお客さんが来て喜んでくれたそうだ。それもこれもお前がいてくれたからだそうだ。……俺は妹の頼みに弱くてな。」

「……話が見えないんだが?」

「聞くに今回の生徒会選挙で何か困ってるようじゃないか。だから選管の俺が、一度だけならお前の言うこと聞いてやる。とはいえ不正とかは基本無しだからな。まぁそれ以外でも何かあれば聞いてやるが。」

……なるほどな。それは思わぬ収穫だ。選挙管理委員会のこいつは何かしらの役には立つ可能性は十分ある。

とはいえここですぐそんな作戦を思いつくほど聡明でもない。とりあえず考えたら伝えると残し、今日も生徒会へ向かった。


選挙まで残り1週間となった。禦王殘は登下校時、昼休みなどの時間を宣伝に回したり、ビラを配ったりしていた。そして大鵠も同じような事をしていたが、頻度でいえば禦王殘の方が多かった。

そしてこちらもそろそろ時期を見計らい、かねて約束していた事を実行に移す。場所は生徒会室をお借りした。

「えっと、一応知ってはいると思いますが、こっちが俺と同じ7組の永嶺です。でこちらは生徒会長会計の春風さん。」

「どうも、春風さん。姉がお世話になったそうで、一度ゆっくりお話をさせて頂きたいと思っていました。」

うわー……永嶺めっちゃ笑顔。怒ってんなー。

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