リーダーの資質
「では狐神さん!先程のお約束通り、包み隠さず話してもらいますよ!!」
その後みんなから質問攻めにあった。その数は50を超えてから数えるのを止めた。
身長、体重、スリーサイズ(分からないのでその場で測った)、生年月日、星座、血液型、趣味、好きな異性のタイプ、苦手や嫌いなタイプ、好みの仕草、初恋について、好きな髪型、浮気のボーダーライン、最初に異性のどこを見るか、貧乳に対しての考え、SかMか、肉食か草食か、受けか攻めか、好きな同性のタイプ、フェチ、萌えるシチュ、母と彼女が殺されそうになったらどっちを取るか、私と結婚するとして子どもが何人欲しいか、この中で『いいな』と思う子はいるか、浮気されたとしてどんな復讐をするか、などなど。
夜の8時くらいになるまでみっちりじっとり。とはいえこのままだといつまでも家に帰れなさそうなので「妹を待たせてる」と言って強引に帰路に就こうとした。
「私たちもそろそろ帰らなければいけませんからね、そろそろ解散としましょうか。」
その言葉にまるで夢が覚めたような雰囲気になる。
ある意味最後の文化祭だもんな。全力で何かを楽しめる機会などもう数える程もないのかもしれない。そう考えると俺は恵まれてるのかもな。
「……俺は今回、こんな飛び切りで参加させてもらったけど、すっごい楽しかった。ずっと忘れない、絶対に。だから今日、この日だけは笑って終わりたいな。」
俺の言葉がどれだけみんなに届いたかは分からないが、一人、また一人と頷く。
そうして最後は全員笑顔で写真を撮って文化祭は終わった。
……ぶっちゃけ、高校の文化祭より楽しかった。
その後太陽からの無事を確認し、在った出来事をメールで語った。色々と罵倒はされたが、とりあえず楽しそうで何よりとのこと。
そうして舞台はまた高校に戻る。もう中学になることはないだろうが。
そしていよいよ近くに迫った生徒会選挙。その日までもうあまり時間はない。具体的な日程は予定より早く12月1日らしい。そして参加する生徒はやはり1~3年が対象。
「そうなるとやっぱり1年の票が結果を左右するよなー。」
「……林間合宿で結構不利になっちゃったよね。」
生徒会室にて式之宮先生から速達で渡された選挙の詳細を鶴と一緒に見る。合宿にてクラスで最も良い成績を残した俺の班は約束通り、その券をもらった。けれど俺は弁当派だし、あんな大勢の生徒がいる食堂でご飯なんて寧ろ罰でしかないので、次に優秀だった班にそれを譲渡しようと思った。
「そうはいかないよ。君はあの連中どもに勝ってこれを手にしたんだ。例えその目的がこれじゃなくても敗者にかける温情なんてない。それに狐神君はあの連中を憎んでいるんだろう?だったら目の前でビリビリに破ってあげたら?『バカなお前らが醜く争ってまで手に入れようとしたものを散々コケにした俺に取られるって恥ずかしくないの?』って。」
鬼か。確かに多少なら痛い目見せてやろうとは考えたがそこまでじゃないわ。
結局その券は大鵠が処理すると言い持っていった。
「他クラスはどうか知らんが、俺ら7組はほぼほぼあの合宿を充実してるように見えた。だから多分このままだと大鵠に票が行く可能性が高いと思う。正直何か手を打たないと不味い。」
「職員室の間でもやはり有利なのは大鵠と言われている。私も君らを味方したい気持ちはあるが……」
「......どうしよっか。」
そういや他の人はどこ行ってんだ?もう時間もあまりないのにまさかこのまま無策で突っ込むわけではあるまい。......てかそもそも。
「なぁ、鶴。ノアと禦王殘、どっちが生徒会長になることになってるんだ?」
「......そこなんだよね。」
そういうことか。
俺はずっと禦王殘とノア、そして鶴が手を取り合うことで、大鵠を圧倒できると思っていた、けれど三人がバラバラになってしまったら話は一気に変わってくる。
「......前に瀬田会長にノアちゃんと禦王殘君が生徒会長の座を掛けて挑んだっていうのは話したよね?その内容はノアちゃんと禦王殘君が得意な分野で勝負して先に二回連続で勝った方が勝利、みたいな感じだったの。結局会長が正攻法......ではなかったけど2人に二連勝して終わったの。だから今回もそれで決めようってなって......」
そうして鶴が取り出したメモ帳を見せてもらう。そこには夥しい数の戦いが記録されていた。どこかの漫画みたく、お互いに勝ち負けを繰り返している。多分自分の得意分野を交互に出し合って、それで勝ってるという感じか。けれど最後のところは2つマルが付いていて勝負がついたことを指していた。
「......このままだと決着がつかないって、最後は瀬田会長が強引にジャンケンで決めさせたの。これで勝ったほうが問答無用でこの生徒会の次期生徒会長だって。その結果、禦王殘君が勝ったの。.......そしてそれと同時に『ここに残る意味はなくなったわ。』ってノアちゃんは.......」
「それで最近一気に見なくなったのか。」
何ともめんどくさい性格してんな。二人ともいいとこ育ちで共にリーダー格してるのは言われずともわかってはいるが。ていうか俺が向こうにつくってなった時、鶴と一緒に背中推してくれたやんけ。なんでこんなことに。
「いっそのことダブル生徒会長とか?」
「もしそれが出来たとして、本人たちが喜ぶとは思えないが。」
ですよね。