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3話 私がまだマシだった頃

「逃げても無駄だよ」


 と妹のなつきが言ったが、私はリュックにお菓子と小銭が入ったお財布を持って外に出た。福ちゃんも一緒だ。午後5時になるまでには数時間ある。それまで、何時もの福ちゃんのお散歩コースを歩いていた。福ちゃんは嬉しそうにベロを出しながら散歩をしていた。川に行って福ちゃんが水を飲んでいると、日が暮れてきた。

 森の中が安全だと思い、森の中に入ったら真っ暗で驚いた。不安感が襲ってきて森から出ようとすると、リードが手から離れて福ちゃんが森の奥に走って行ったので私は、怖くて涼しくて、泣き出した。福ちゃんの名前を呼んだが戻ってこない。

 どうしよう、ここ神社だったんだよね。一番奥に行けば誰も来ない神社があるということは聞いているけれど、奥までは行ったことがなかった。

 森の中に入るときにタバコの吸い殻がたくさん落ちていたので、人がいるのか分からないが、何度も、


「福ちゃん、戻ってきてー、福ー」


 と叫んだ。福ちゃんは行ったことがないところに入ると好奇心で先まで行ってしまうのを忘れていた。でも、行くところまで行って満足したら戻って来ると思い待っていた。

 カラスの鳴く声がする。福ちゃんが戻ってきたのが足元で分かった。

 もう、森を出ようとして歩いていると、森の出口があった。森の外は暗かった。歩いていると、車が通った。車が通るときに、近所の人だったので、すぐに、顔をそむけた。顔を見られたくなかった。でも、車の運転席の人が車を止めて、


「何やってんのさ。家に早く帰りな」


 と言われて、私は頷くと車の運転手は車に乗って去っていった。

 危ない。今のおじさんよく家に来る人だ。告げ口されることをその時の私は恐れた。

 まだ、家からそんなに離れていない場所にいる。すこし、歩いていると、福ちゃんが吠えた。福ちゃんは、父親のバイクの音に反応するんだ。

 父親が来たのかと思って隠れたが、福ちゃんは父親のバイクの前に飛び出して、バイクは止まった。


「亜沙美、隠れていても無駄だ、出てこい」


 という言葉に、仕方がなく出ていくと、怒鳴るようにして、


「馬鹿かお前。帰るぞ! 帰ったらお仕置きだからな」


 と言われて、バイクの後ろに乗せられ帰ってきた。父親は、家に帰って来てすぐに、


「なつきのことを突き飛ばしてガラスを割ったんだってな。訊いた、なつきが怪我しなくて良かったけれど、お前はバツとして3日間食事抜きだ! わかったな、あ? 返事は?」


 怖くて硬直していると父親は頬を叩いた。私がなつきのことを突き飛ばしたことになっている。

違う。逆だと言いたかったが、口答えをすると殴られる事は分かっている。

 私は、家の中に入ると、食事は終わっていることに気がついた。父親も食べ終えたらしかった。


「お腹すいた」


 と言ってお腹を両手で抑えた。子供にとって食事抜きということが一番辛い。3日間も食事抜きでやっていけるのか、そうだ! お菓子がある。そう思ったときに、妹のなつきが、リュックの中のお菓子を持って、母親に見せていたことに気がついた。


「ママ、おやつも駄目だよね」

「亜沙美、あんたの食事代でガラス買うお金の足しにするから、よく食べる亜沙美は当分食事抜き。死にわしないわよ、水飲んでなさい。冷蔵庫開けないでね」


 と言われて、泣いた。


「無理だよ! 絶対に無理だよ、ご飯食べたいよー」


 泣いて騒いでいる間、家族は決まった順番でお風呂に入っていた。もう、祖父はお風呂に入って出ていた。今は祖母と弟のヒロが一緒に入っている。その次に父親でその後が、母親となつきが入る。亜沙美は一番最後だ。亜沙美がお風呂に入るとお風呂が汚くなると言う。毎日お風呂に入っているのに。たまには、母親と一緒に入りたいと思うこともあった。

 泣いてもお腹空くだけだから泣くのをやめた。

 寝る時間になって、お腹が空いて眠れなかった。ずっと、我慢してお腹のおへそ辺りを押したりしていたが、お腹がなるだけだけで空腹には変わりがなかった。

 父親のいびきが聞こえてきたところで、亜沙美は自然と立ち上がってフラフラと冷蔵庫の方に歩いていった。冷蔵庫を開けて、食べようとしたところで電気がついた。


「何してんのよ、亜沙美!」


 母親の静だったので、飢餓状態の亜沙美は泣いて、


「ご飯食べても良い? ママ、お願い! お腹空いて眠れないの」


 と言うと、母親は冷めきった顔で、


「寝なさい。寝てればお腹空かないよ」


 そう言われても納得できなかった私は、母親の静に小さい声で、


「ガラスんことは反省しているから、もう許してよ、ママー」


 と甘えた口調で言ったが、母親は無理やり手を掴んで寝室に連れて行こうとしが、私は抵抗した。すると、母親の静が、


「これは、しつけなのよ! 分かった? わからないよね馬鹿だから」


 と言われて私は泣いた。

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