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2話 まだマシだった頃

 私の家族は、祖父のカゲ爺と、祖母の世間体を気にするお婆ちゃんと、やたら大きな声で怒鳴りつける暴力的な父親の茂と、怒ると怖いが姑に弱い静がいて、私、亜沙美に、妹のなつきと、気の弱い女の子みたいな弟のヒロがいる。

 亜沙美は小学校の友達が5人ぐらいいて、狭く深く付き合ってきた友達がいた。その中でも、特に仲良くしている友達がいたが自殺をして亡くなった。大人になった今でも大切な、思い出が残っている。

 夏休みの最後の一週間は、父親との不仲が原因で最悪なものになってしまった。夏休みと言っても近くの海に言って泳いだり、学校に行って泳いだりしたが、楽しい思い出はそれ程なかった。

 他の友達のように海外に旅行に行くこともなかった。

 結局、妹のなつきと弟のヒロと遊ぶぐらいしかなくて、ヒロは私となつきの後を金魚の糞のように後をついて来るので、ヒロの手を2人で引っ張り、


「やめてよ、痛いよ! 腕が抜けちゃうよ!」


 と泣いているのに、やめないので腕が抜けて、母親の静が、


「またやったのか? いい加減にしなさい!」


 と怒って病院に連れて行ったみたいだ。なつきは、しきりに


「私は悪くないもん。お姉ちゃんがやったんだもん」


 となつきが言うと、お婆ちゃんが来て、妹の頭をなでて、


「そうだね、お姉ちゃんが悪いんだね。お父さんに怒って貰わないと駄目だね」


 と言って、なつきは笑みを浮かべて、お婆ちゃんにおやつのオニギリを食べさせて貰っていた。そのせいで、なつきは太ったのだが、皆から可愛がられるなつきは頭がよく、父親からも特別扱いを受けていた。

 お盆が過ぎてから暑さが和らいできて、父親の茂は大工の仕事が午後5時で終わるので、帰りはお酒も飲めない体質の父は寄り道もしないで真っ直ぐに家に帰ってくるので、亜沙美としては気が気でない。

 父親が帰ってくると愛犬の福ちゃんが吠えるのでわかる。今日も父親のバイクの音がしたのか、福ちゃんが吠えた。


「ただいまー。あー疲れた。あー、暑かった。死にそうだ」


 と大声で言う何時もの言葉。茂は、玄関から家に入ってきて冷蔵庫を開けて、冷えた麦茶のペットボトルを出して飲んだ。父親は、母親の静に、


「まだ、爺さんと婆さんは裏の畑で働いてんのか?」

「そうみたい。もうすぐ終わりにして戻ってきますよ」


 と言うので、私は母親が弟の事を言わなければ良いなと思った。けれど、母親が、


「お父さん、亜沙美がまたヒロの腕を抜いたのよ。自分が悪いのに妹のせいにしたの。よく言い聞かせてあげて」


 と言うので、私は逃げる準備をした。けれど、父に捕まった。


「亜沙美、やったのか? うん? 言ってみ? やったのか? 聞いてんだよ。逃げるなよ!」


 私は、父親の筋肉モリモリの腕で一回顔にビンタをされて、それでも答えようとしなかつた私は、更にビンタをされて、泣き声が自然と出て、


「お前、泣いてんじゃねえ! 泣いたって許さない」

「やった」


 と一言言ったら、父親が、顔を真っ赤にさせて怒り、何度も、何度も私は父に殴られた。ちらりと、なつきの顔が見えたが、笑みを浮かべて好奇の目で見ている。母親も一緒にいて私を助けてはくれない。逃げても無理だ。


「わかったか? 悪いことをすると打ちのめすからな。毎日、面倒だからいい加減にしてくれよな。静、腹減った。食事はまだか?」


 と何事もなかったようにして、父親は大声で言ってその場を後にした。私は、いつまでもしゃがんで泣いていたが、なつきが来て、小さい声で、


「蛆虫」と一言言った。


 どういう意味なのか分からないが、妹は怒ったら手で突き飛ばす、足で蹴る、物を投げる事をするので、それが原因で怪我をしたことがあるが、妹のなつきに蛆虫と言われたのは初めてだった。


 次の日の昼間の2時に妹のなつきがまた、蛆虫と私に言ったので、それはどういう意味なのか訊いたが、笑うばかりで言わないので、ムカッときた私は、うるさいと突き飛ばした。妹のやるように。すると、妹のなつきは、祖母に泣きついて、


「お姉ちゃんが突き飛ばした」


と泣くので、妹に謝ろうと妹の肩に手をやり、


「突き飛ばして、ごめん」


 と言おうとしたら、妹に突き飛ばされて思い切り後ろのガラスに体が当たった。ガラスの割れる音がした。私は何が起きたのか分からなかった。

 私は、奇跡的に無傷だった。けれど、母親が近づいて来て片付けていたが、このガラスが高いだろうとは言うが、私の事は全く心配はしていなかった。

 この日の夜は、私はガラスを割ったことで父親に殴られると判断して、家出の計画をたてた。

 愛犬の福ちゃんと一緒に家出をしようと準備をしていると、なつきが来て、


「逃げても無駄だよ」となつきが言った。

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