プロローグ
どうも、初めまして。
突然だけど自己紹介をさせて貰うよ。
私の名前は佐々木有菜、気軽にアリナって呼んでくれても構わない。
言いたいことは分かる「お前は誰だ」ってね。
しかし焦らないで欲しい、物語というのは読み進めていくことが大事だ。
まぁ引き伸ばし過ぎもあれだから説明するよ。
私は今、ここにいる。
「なんて言う景色だ、流石に怖いよね」
ここは、ビルの屋上。私は下に敷かれた道路を眺める。
何をしてるか、何をしようとしているかって言われたらそりゃ自殺だろう。
このシチュエーションはそれ以外考えられないしね。
「まぁいい人生だったよ」
もちろん嘘であるが、でなきゃ自殺なんてそもそも思い付くはずなんて無いのだから。
理由は単純、私は長年の彼氏に突然浮気され失恋。たったそれだけの簡潔な理由で一文しか使わない。
そして豆腐メンタルであった、それだけ。
「ふぅ、では行きますか」
ホップ、スッテプ、そしてジャンプだ。
──グシャ。
──私は、死んだのだ──
そう、死んだのだ。
では何故、こう意識ははっきりしているのか?
考える脳も、喋る口も、全部潰れてしまったはずだ。
「あーーー……」
声を出してみる、やはり普通に喋れる。
辺りを見回すと、一面には草が広がっている。ただそれだけの空間。
雑草、としか呼び様の無いその草達に私は囲まれている。
体は大の字になっている、触感も感じる。
風のそよぐ音が聞こえる、聴覚もある。
ここはどこだと悩む内に、その答えは見つかる。
「どうもアリナさん、体の調子はど〜です〜?」
「え?」
女性の声だ、それは非常に陽気な声で私の名を呼んだ。
しかし私はそれに動じずに淡々と質問を投げかける。
「ここは死後の世界なの?貴方は死神さん?」
「あらぁ〜、随分と落ち着いてますねぇ。そうです、ここは死後の世界で私は死神ですよぉ」
向こうも随分あっさりと答えてきた。
その死神と名乗る女性には、死神の姿は連想できない。僧のような白い着物を纏い、頭には天使のような輪っか。綺麗な顔立ち、よく想像されるローブを羽織り、大鎌をその手に持ち、骸骨のような顔をしたものとは似ても似つかない。
ただ死後の世界に居るというだけで死神かなと思っただけだ。
「突然ですが〜クエスチョンっ!」
「はい?」
本当に突然だ、それで何だろうかそのクエスチョンというのは。
「何故、アリナさんはここにいるのでしょう〜!?」
「え、死んだから?」
「はい正解!それで、なんでここにいるのでしょう〜!?」
なんで同じ質問を二回も?違うなら違うと言ってくれれば良いものを。
長考しても分からなかったので、素直に答える。
「分かりません」
「はい!貴方が選ばれし者だからですね!正解!」
「言ってることが滅茶苦茶じゃないですか?」
「それで貴方は選ばれたので、あることをして貰いたいのです!」
なんだ、なんだろうこの押しの強い死神さんは。
なんかやばい勧誘でもされているみたいだ。
「ある事とは?」
とりあえず聞かなければ始まりそうもなかったので言うしかなかった。
「はいはーい!貴方には、新しい世界を作って貰いたいので〜す!」
「そうですか、詐欺ですか」
何を妙ちきりんな事を言ってるんだろう。
面倒臭かった私は適当にあしらう。
「はい、と言う訳で飛んでけとんでけーっ!」
「え、えええええええ!?待ってくだ──
そうして有無を言わされずに私は何処かに飛ばされた。
私が突然、飛ばされた場所は──
「白い、高い」
真っ白な、雲の上。
周りには、何もない。
雲の隙間から下を見ても、何もない大地が広がるのみ。
「さて、貴方にはここでとあることをしてもらいま〜す!」
「あ、死神さん!」
死神さんは、どこに入っていたのかタブレットを取り出すと私に押し付けてきた。
「あの、なにこれ?」
「それはタブレットです!」
いや、それは十分に理解しているのだが。
「このタブレットを駆使して貴方だけの!世界を作ってください!」
「え?……ごめんなさい、訳分からない」
「操作してみればわかりますよ」
「え、そういうことじゃないんですが」
死神さんは、私の持ったタブレットの電源を入れる。
するとそこには『世界作成』と表示されたボタンが。
「ハイポチーっと押しましょうね!」
無理やり片手を捕まれ、ほぼ強制的にボタンに指が触れる。
……でも何も起こらない。
「はい!そのアプリであなたの思うがままに!素敵な世界を創ってください!」
「え、説明とか」
「ヘルプを見ればわかりますので〜!それでは〜!」
一体何だったのだろう……タブレットだけ渡されてどうしろと言うんだろうね。
「はぁ……やってみますかー」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
──何万年後か──
人類と魔族は、繁栄した。
結果的に言うと、私の世界創りは完璧なものへとなっていた。
「アリナさま!メッセージが届いております!」
「あ、了解。わかったよ」
最初に私は周りが寂しかったので、天界を創る。
様々な天使達、また地獄も。地獄に関しては本当になんとなくって感じだが。
とりあえずメッセージを確認しようか。
「あ!すいませんアリナ様!私、リアレス代表のレヴェルタ・アーサーです!」
「どうしたの?できればそっちで解決したほうがいいんだけどね」
「す、すいません!なんでも、民が神様にお会いしたいと!」
「ええ?うーん、困ったなあ」
「代わりの方でも宜しいので!」
「はぁ、わかったよ。エレリエルー!いるかい!?」
天使長のエレリエルを呼びつける。
するとどこから来たのか、彼は既に私の前の前に跪いている。
「ただいま馳せ参じました!」
「ちょっと待ってね」
「ごめんレヴェルタくん、私は忙しくて行けそうに無いからこの子でもいいかな?」
「ええ、構いませんよ!それではお待ちしております!」
「エレリエル、頼んだよ。いつもすまないね」
「はっ!アリナ様の仰せのままに!」
すると瞬く間に彼は消える、そこにいたことの証明かのように彼の羽根がひらひらと待った。
メッセージを切る、この世界ではここ天界、そして神や天使の存在は、架空のものではなく実在するものとして伝えられている。
各国の王、そして聖職者達は私の存在を知っている。
たまにどうしようもない問題があった時、私が手助けするのだ。もっとも、私にとっては自立してほしいというのが本音でもあるのだが。
……さっきみたいな問題は、正直どうしたらいいのかわからないけど。
とりあえず世界について説明したい。
最初、大陸は一つだった。
時が経つにつれ、大陸は五つになる、そしてそれぞれの大陸に各種族が住んだ。
人間の住む大陸が二つ、妖精やエルフなどの種族が住む大陸が一つ、魔物の住む大陸が一つ。
変り種なのは、人と妖怪が共に暮らす大陸だ、私が日本人であり歴史が好きなこともあってかその大陸はまるで昔の江戸の日本のようになっている。
魔物──魔族を創ったのは、人間同士での争いが起こらない為だ。
なので魔王とそして大罪……四天王が七人いると思ったらいい。
魔王達には人間を襲いすぎないよう注意している、それでもやはり凶暴に創ってしまった魔物もいるせいか勢力はギリギリというところだ。
とりあえずこの世界に関してはこんな感じだ。
さて、私は下界の様子を見に行かないと……
──その時だった。足元にある雲に、突然ぽっかりと穴が開いた。
「え!?」
気付いた時にはもう遅い、そのまま私は落下してゆき……
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
訳も分からぬまま、創造神は死んだのである。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「──はっ!?」
飛び起きる、身体に傷はない、頭も正常だ、しかしここは天界ではない。
周りには一面の雑草、そして穏やかな風が吹く。
「ここは──」
その時声がした、懐かしい声だ。
「あらぁ?また死んでしまったのですか〜?」
「死神さん!?」
そこに居たのは、昔と変わらない姿をした死神さんだった。
「私、死んだんだね」
「ええ。それはもう悲惨な姿で……」
1回目に死んだ時もそうだった気がする。
「そこで貴方に運命の選択です!」
「え?」
なぜかは知らないがまた嫌な予感がする、今度は一体なんだろうか?
「あなたは輪廻転成して記憶を持ったまま、生まれます」
「そ、そう……」
「そこで!あなたには選んでもらいます!地球に生まれるか、貴方の創った星で生まれるか!」
「え!?」
私の創った星で……?
怪しい話だとは思うが、確かにそれは気になってしまう。
私が作った世界は、どんな世界なのか。好奇心は止まらなかった。
まあどうせ二択だ、それ以外ないのだとしたら決まっている。
「私の世界で生きてみたい」
「おっけ〜!わかりましたよ〜!それでは!飛んでけ飛んでけ〜!」
「うあっ!?」
そうして私の意識は遠く離れていった……。
いったい私はどうなってしまうのか。