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RPG!!〜聖女になりたい転生令嬢〜  作者: こんぺい糖**
第二章 外の世界と少年少女
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Lv8 ▼いざ王宮へ!



 レオン様が帰ってすぐ、王宮で殿下の婚約者となるべく学びたいことをお父様に申し出ると、悲しいような嬉しいような複雑な顔を浮かべながらも了承してくれた。


 レオン様にも後日事情を話し、王宮の図書室などの使用許可をいただけないか頼んでみたところ、嬉々として許可証をもらってきて下さった。しかも、家庭教師までつけてくれるらしい。


 これらは私にとって嬉しいことであるはずなんだよ? でも、そこまで用意周到にされちゃうと今後変に期待されそうで怖いんだよね。


 別に、そこまで婚約者としての意識が高いわけじゃないから

 まあいいか! 聖女になるためにつける学ではあるけれど、王太子の婚約者としてもいずれは役に立つでしょう!! そう思いたい。


 というわけで私とアンさんは今、王宮の前にいます。

 いやぁ、フィーブル公爵家(我が家)も大きいとは思っていたけれど、やっぱり王宮にはかなわないんだなあ。さすがこの国のトップがいるところだね! 豪華絢爛な佇まいに圧倒されちゃったよ。中世ヨーロッパ風のお城に白い城壁、金色の装飾だなんて、いかにもゲームっぽい外見でわくわくしちゃう!!


 私は馬車の中でぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。アンさんには静かに止められたけれど、でもやっぱりファンタジー感がして嬉しいんだもん!


 そんな感じでアンさんと戯れていると、馬車の扉が突然開き、目の前に一人の老紳士が現れた。その老紳士はくいっと片眼鏡を上げると、うやうやしくお辞儀をした。


「お待ちしておりました、ルーナ様。私がルーナ様の指南役を務めさせていただきます、ガモン・シュワルツェと申します。どうぞよろしくお願いしますね」


 厳しそうな見た目とは裏腹に、さながら『おじいちゃん』というような和やかな顔でそう言った老紳士は、どうやら私の家庭教師らしい。え、なんかすごくいい人そうだぞ!


 レオン様、ナイス人選です!! ちょっとだけ好感度アップしたよ!


 ガモンさんは再びにこりと笑うと、私の手を取り馬車から降りるのを手伝ってくれた。


 しっ、紳士だ! かっこいいよガモンさん!


「本日から、この場所でご指導をさせていただきますよ」


 ガモンさんに案内されたのは、とても大きな図書室だった。本特有の匂いが、埃っぽさの隙間から香ってくる。


 はぁ……この匂い、癒されるー。


 って、ん? なんで図書室? 家庭教師って普通の部屋で授業をするものじゃないの? たしかに図書室の許可書はもらっているけれど、あれは一人で勉強しようと思って申請したわけで。ここで授業なんかして、図書室を利用する人たちの邪魔にならないのかな?


「どうしてここでお勉強をするのですか? 机も椅子もありますけれど、普通は──」


 その問いを言い終わる前に、全てを察したような顔をしたガモンさんが、やれやれといった苦笑いを浮かべた。


「場所は王太子殿下が指定されたのです。なんでも、『ここなら抜け出してきてもバレないから』だそうですよ。このような老いぼれには、その意図までははかりかねますねえ」


「そう、なのですね」


 わあ、王太子ともあろうお方がサボりですか。というか、私をサボりの口実にしないで下さいよ! 私は学びに来ているのに!! まったくもうっ!


 そうやって、心の中でレオン様に悪態をついていると、ガモンさんがぱっと場の空気を変えるように声を上げた。


「さて、ルーナ様。そちらのお付きの方から聞きましたが、ある程度の教養は彼女から学ぶそうですね。私も女性のマナーについてはよくわからないところがありましたので安心しました。それでご提案なのですが、ここではルーナ様のご興味があるものを学ばれてはいかがでしょう?」


 学びたいもの? うーん、そんなの考えてもみなかったなあ。


 私の目的は聖女候補になれるだけの知性を身につけることだし。でも、建前としては王太子殿下の婚約者研修というわけだし、『聖女になるために必要な知識を教えて下さい!』とは言いづらいよね。


 ううー、どうしようかなあ。


「シュワルツェ様、このアンからも一つご提案がございます。本来、お嬢様ほどの年齢のご令嬢にはまだこのような学習の場は与えられません。お嬢様にとしても、なにを学びたいのか、明確な例を挙げることは簡単ではないでしょう。ですから『学問』ではなく気になる『職業』を選んでいただき、その職に就くために必要な学問を学んでいただいてはいかがでしょうか。そちらの方が、お嬢様も選びやすいと思うのですが」


「ほう。具体的には、どのような職業でしょうかね?」


 あ、アンさん!!

 これは、私が聖女の勉強をしたいと言い出せる流れをつくってくれているの!?


 うわーん、アンさん大好きぃ!


「それなら聖女様はどうでしょう! ご本に出てくる聖女様は皆様、とても素敵なのです! 私も王太子様の婚約者として、聖女様のように素敵な女性になりたいです!!」


 どっ、どうだ!! この、あどけなさとあくまで婚約者としてだよアピールの合わせ技! これなら納得してくれるかな!?


「聖女様、ですか。そうですねえ……このご年齢で目指されるには高い目標かもしれませんが、将来を見越してのことならよいと思いますよ。王太子殿下の伴侶となられるからには、聖女様のような知性も品格も必要ですからね」


 ガモンさんはにっこりと笑った。


 やったー! うまくいったよ! これで堂々と聖女の勉強ができるっ!


「教材などはこちらですぐに手配できますので、ルーナ様のご都合がよいときからお勉強を始めることにしましょう。いつがよいですかな?」


「あ、明日! 明日から毎日通いたいです!!」


 やる気は満々だよっ! 私はやると決めたら一直線な女だからね。


 あ。でも、ガモンさんにも予定はあるよね。毎日はさすがに無理かなあ。


「そう言っていただけると教えがいがあるというものですよ。では明日からよろしくお願いしますね、ルーナ様」


「はい! よろしくお願いします!」


 私は嬉しさで顔をほころばせた。


 これから夢のために、一歩ずつ前に進めるんだ。それはとても幸せなことだよね。


 転生生活がすごく充実したものになりそうで楽しみだなあ!


 よーし、明日から憧れの聖女を目指して頑張るぞー!

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