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長い長い年月を過ごした。
できぬことなどほぼないに等しいほどの力を持ち、か弱い生命体の命運なぞ、我の気まぐれでどうにでも変えることができた。
最初はそれで暇つぶしができた。争いを起こしてみたり、逆に幸福という幸福をもたらしたりした。そのときの生物たちの動きを観察して、少しばかりは楽しめていたのだ。
ただ、人類というものが現れてからは、同じことの繰り返しになってしまった。身の丈に合わない幸福を求め、奪い合い、争い、傷つき、それでもなお繰り返す。
その様子を何度も見せられて、だんだん人間たちへの興味を失っていった。知能が高いところが面白かったというのに。しょせんは我らの創造物に過ぎないということか。
それからは、生命体の動きを面白がって見ることはなくなった。最低限の義務はあるので少しは様子を観察するが、いつ見ても同じことの繰り返し。いい加減飽きはしないのかとも思うが、すぐに死に、すぐに生まれてくる人間たちだ。飽きるもなにもないのだろう。
我の最低限の義務。それは、この世界の幸福の均衡を保つこと。我らが管理している世界は一つではない。よって、世界への『幸福』は平等でなければならないのだ。そうでないと、我以外の者から不満が出る。
一つの世界全体の幸福を一定にするというが、だからといってその世界の個人の幸福まで平等には与えていない。やっている者もいるそうだが、我には面倒この上ない。どうせこのつまらぬ世界は我のものなのだから、そのくらいは好きにしてよかろう。
そんな行動が、あるとき幸をなした。
面白い人間が、この世界にいることを知ったのだ。
だから我は褒美をあげた。
さらりと流れる銀糸の髪に、ぱっちりとした大きな紫色の瞳。長い睫毛とほんのり薄桃に色付く白い肌。華奢な身体。
これまで見てきたこの世界の人間の女が求めるものを全て合わせたような姿を。
そして、彼女が焦がれ求めていた世界の全てを創造した。
いつからかわからぬ退屈を埋めてくれた褒美としてはわずかすぎるかもしれぬが、これから少しずつ与えていけばよいだろう。
あの光を帯びた魂が、暗闇の中で唯一輝きを止めなかった人間が、この世界をどう生き、どう成長していくのか。
ああ、楽しみだ。彼女が彼女であり続ける限り、彼女の命が尽きるまで、素晴らしい舞台は終わらないのだ。
次回から第五章です。




