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RPG!!〜聖女になりたい転生令嬢〜  作者: こんぺい糖**
第三章 出会いと始まりの季節
20/47

Lv19 ▼ライバル登場!?

 その後、レオン様は今日の訓練の話や学園生活について等、何事もなかったかのように話しかけてきた。だから私も、おでこチューはレオン様にとって挨拶と同じレベルのことなのだと思い、自分を落ち着かせた。


 でも、さっきの変な感覚はなんだったんだろう。慣れない訓練で体調を崩しちゃったのかな。後でアンさんに診てもらおうっと。


 そう思いながらレオン様と王宮に戻り、ドレスに着替えた。そしてレオン様に挨拶をして、待っていてくれたアンさんとともに馬車に乗り込む。


「アン。私、体調が悪いのでしょうか」


「え!? 熱はないようですが、今日は早めに休まれますか? 明日からまた学園が始まりますし」


「そう、ですね。今日の疲れが出たのなら早く休まないと!」


 やっぱり疲れていたんだろうな、私。結局レオン様が不機嫌だった理由もよくわからないままだったし、訓練もまだまだついていけていないしで、大変な一日だったなあ。


 でも、明日からはザッくんと平和な魔法ライフが再開だよ! あー早く明日にならないかなあ。


*****


 ……って思っていた時期が私にもありました。


 次の日、私が教室に入ると、クラスの令嬢たちが遠巻きに私のことを見ているのに気づいた。私が彼女たちの方を見るとすぐに視線を逸らされてしまうので、理由を訊くに訊けず、嫌な予感だけが募っていく。


「ルーちゃん!! 大変だっ! 転入生が来る!」


 そんな私の元に声を荒らげて飛び込んできたのは、親友のザッくんである。


 うーん、ザッくんの言っていることの意味がよくわからないのだけれど。


「ザッくん、それのなにが大変なのかはわからないですが、おはようございます」


「おはよう! って、他人事じゃないぞ! なんてったってその転校生は――」


「ザック様! おはようっ!!」


 肩まで伸びた美しいストロベリーブロンドを揺らしながら、一人の少女がこちらへ向かって駆けてくる。


 目はぱっちりとしており、ほんのりと赤い頬に白い肌。ルーナの容姿とまではいかなくとも、彼女はまぎれもない美少女だ。いや! 別にナルシストとかじゃないよ!? 客観的に見て、それだけルーナの容姿は整っているんだよっ!! それこそ乙女ゲームの主人公にいそうな、可愛い系の儚げな見た目なんだよお!


「うげぇ」


 名前を呼ばれた当人であるザッくんは、カエルが潰れたような声を上げ、ささっと私の後ろに隠れた。


 こんな美少女に笑顔で近寄られて嫌がる男の子はザッくんくらいなんじゃないかな? いや、ザッくんは前世で女の子だったから恋愛対象として女の子に興味がないのかな。そうかもしれない! でも、ザッくんがほしがっていた女の子のお友達が増えるチャンスなのに。


「あの、ザッくん。よければ私がうまく説明をして」


「あいつも! 転生者なんだよ!! しかもルーちゃんと同じ光魔法!! だから急遽国が保護して学園に転入するんだってさ!」


 私が二人の仲を取り持とうとすると、ザッくんは小声で荒々しくそう言った。


「えっ、転せ……むぐ!?」


「しー! 奴には内緒なん、だか、ら……」


「ザック様、ルーナ様、少しお時間よろしいですか?」


「「ひえっ」」


 その美少女転入生は、口の端をひくつかせながら、青筋を立てた顔に無理やり笑顔を作った。


「はぁ。つまり、あんたたちも転生者なのね。しかも、ザック・エルドルは前世で女だったと」


 彼女――サラと名乗った少女は、眉をひそめてため息をついた。彼女は、先程までの可愛らしい表情からは想像がつかないほど、苦々しく口元を歪めて吐き捨てた。


「そうだ。だからお前がいくら俺たちに擦り寄ってきても、シナリオ通りには進まないからな」


 つい数分前まで私の後ろに隠れていたザッくんも、正体見たりとでも言うように、にやりと不敵な笑みを浮かべながら彼女の前に仁王立ちをする。


「あら? 本当にそうだと思っているのかしら? あんたはそうでも、殿下は違うのよ。ハーレムエンドがないのは残念だけれど、まあいいわ。野蛮な勇者はタイプじゃないもの」


 二人の間にバチバチと火花が散っていた。


「あの、ザッくん? サラさん? この状況はいったい」


 私だけがなぜ二人がこんなにも仲が悪そうなのか、なんの話をしているのかを理解できず、おろおろと双方の顔を窺い見ていることしかできない。


 そんな、大蛇と虎が睨み合っているような、シーンとした時間が数分間続いた。そろそろ授業の予鈴が鳴ってしまうとしびれを切らした私が、さらに声を上げようとした時だった。


「あなた、本当にあのフィーブル公爵家のルーナなのよね?」


 サラさんが沈黙を破った。事情を知らない人間が聞いたら、あまりの不敬に卒倒してしまいそうな台詞とともに。


「は、はい!」


 ん? ちょっと待って。なんでサラさんは、私の名前を知っているんだろう。


 私は学園内で変に目立っているけれど(主に光魔法のことやレオン様の婚約者ということ、勇者と友達ということ)、でも、転入してきたばかりの庶民の女の子がそんな話を知っているものなのかな? それに、公爵領の領民なら私の名前を知っていてもおかしくないけれど、そうではない彼女が、わざわざ貴族令嬢の名前を把握しているはずがないよね。


 ルーナはゲームにも関係ないはずだし。


よくよく考えたら、サラさんって結構謎が多いね!? だからザッくんも警戒しているのかな。


「俺の可愛いルーちゃんをじろじろ見ないでくれる? 穢れるだろ」


「は? こんなに清く美しい私が見て、穢れるわけがないでしょ。あんたの目は節穴なの?」

 そういうわけじゃないみたいだね。


「まあまあ、ザッくん! サラさんはすごく可愛いですから、むしろ見たら浄化されると思いますよ? だからそんなこと言わないでください。ね?」


「サラさんも、ザッくんが急にごめんなさい。本当は彼、とってもいい人なのです。多分、可愛い女の子を目の前にして緊張してしまっただけだと思うんです。ですから」


 私が二人の仲裁に入ろうとしたとき、サラさんは明らかに私を嫌悪した表情で、しかし、柔らかい声で私に語りかける。


「ねえ、あなたは自分の立場をわかっているの?」


「え、と。私が公爵令嬢だということですか?」


 私にはサラさんの言葉の示す意味がわからず、なんとも的外れな回答をしてしまった。自覚はあるんですよ。うう。


 案の定サラさんは顔をしかめて、(この子はなにを言っているの?)と言わんばかりにため息をついた。


「あのね? 私は! 光魔法の使い手なの!! 実質、次期聖女候補に選ばれたといっても過言ではないのよ!? あなたのなりたい聖女には必ず私がなるわ。つまり、私はあなたのライバルなの!」


「え、ええ!? そうなのですか!! うわあ、身近に同じ志を持つ方がいるなんて! とっても心強いです!」


 なんと! サラさんは私の同志さんだったんだ! うわあ、嬉しいなあ!


 学園にいる貴族のご令嬢のほとんどは、座学も魔法も花嫁修業程度の認識でしかなかったから、真剣に勉学について語り合うなんてことはできなかったんだよね。


 あ、もしかしたら筋トレも一緒にしてくれるかも? でも男装しているから無理かな。仲良くなったらこっそりばらしても黙っていてくれるかな?


 私の気持ちは急激に高ぶり、同志ができた喜びを噛み締めながら、瞳をきらきらと輝かせてサラさんを見た。


 そんな私とは反対に、サラさんはげんなりとザッくんに視線をやっており、それに応えるようにザッくんも苦笑いを浮かべながら頭を掻いていた。


 なんでこんな微妙な空気が流れているんだろうね?


「あの! サラさんは聖女様になるために普段はどのようなことをしているのですか? 実は私、今まで座学か教養分野か淑女マナーくらいしか学んでいなくて、次期聖女候補として他に必要なものがよく分かっていないのです。それで」


 私はそこまで一気にまくし立て、はっとして血の気が引いた。

 私、いつ聖女になりたいって言った? どうしてサラさんは私が聖女になりたいってことを知っているのだろう。


 どきどきと鼓動が早くなり、冷や汗が頬を伝う。なにか言ってはいけないことを口走ってないか、同じ転生者だからって油断して言い過ぎてないか。過去の記憶を必死に辿りながら、私は頭をフル回転させた。


 聖女の件はレオン様とアンさんしか知らないはずなのに。今の発言できっとザッくんも勘づいちゃっただろうし。噂されたらどうしよう。周囲からの『次期聖女候補』という評価と『自発的に聖女を目指している』のでは全然意味が違うのに!


「なっ! あなた、ライバルになんてことを聞いているのよ!?」


 私が混乱していたそのとき、慌てたような、驚いているかのような声が耳に飛び込んできた。見ると、サラさんが顔を赤らめてあたふたと慌てながら、「私はあなたの敵なのよ!?」と叫んでいる。


 うん。


 このとき私は確信した。

 やっぱりこの子は、私のことを絶対言いふらさないだろうし、とてもいいお友達になれそうだ、と。

遂に聖女候補のライバル(?)が登場しました!

ルーナにサラちゃんと、両手に花状態のザッくんですが、ザッくんハーレムでは終わらせない予定ですので是非お待ち下さい(笑)


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