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RPG!!〜聖女になりたい転生令嬢〜  作者: こんぺい糖**
第三章 出会いと始まりの季節
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Lv15 ▼魔力属性騒動

 ざわついた教室。魔術の担当であるオリバー先生が手をパンパンと叩き、生徒たちを静かにさせる。緊張感が漂い始めた中、オリバー先生はにこりと笑って第一声を発した。


「皆さん、おはようございます。今日の初めての授業は、あなたたちの進路を示す大切なものになります。早速始めていこうと思いますが、指示をしっかりと聞いて下さいね」


「はい!」


 優しそうな女性の先生だ。これは、いいスタートだね。


 クラスは、貴族も平民もごちゃ混ぜだ。お友達をつくれるように頑張るぞ!!


「では、授業の内容について説明します。これから皆さんには、各々の魔力属性を診断してもらいます。基本の魔力属性には水、火、土、風、光、闇の六種類がありますね。この中であなたたちに合う属性がなにか。それを知っていただいてから、実技に移ります」


 先生は黒板にさらさらと属性を書きながら、もう片方の手の人差し指をすっと立ててなにかを呟いた。すると指先からぷよぷよした水の塊が現れ、それは氷の結晶に変化した。


 わああ、と教室内が盛り上がる。生徒たちは羨望の眼差しでオリバー先生を見る。


 す、すごっおい!! 私は知識として魔術の呪文を知ってはいたけれど、まだ実技では使わせてもらったことがない。それにこの世界では、魔法を日用使いしない。


 だからつまり、魔法を見るのは初めてなんだ!!


「これが私の魔力属性、水属性とその派生の氷ですね。皆さんの魔力も一定の保有量に達しているので、最低一つは属性を発現させることができるはずです。では、人差し指を立てて『ショード』と唱えてみて下さい」


 先生の指示を受けて、みんな一斉に呪文を唱え始めた。


 指先から緑のツタが生えてきた者や、火が灯った者、自身の周りに風を起こす者など、それぞれが自分の属性を発現させているぞ。


 私の属性はなにかなあ。できれば水属性か土属性がいいなぁ。水のキラキラした感じとかツタの相互に絡まっている感じとか、なんか聖女っぽいもんね。


 理想をいえば初代聖女様の属性だった光属性がいいけれど、光属性をもつ確率はすごく低いらしいから多分無理だし。闇属性はちょっと危なさそうだし。


 まあいいか! なるようになーれ!!


「ショー……」


ウェイダネス(闇よ包め)


 私が呪文を唱えようとしたそのとき、どこからともなく聞こえた謎の呪文で、辺りは暗闇に包まれた。


 火属性の子がつけた明かりさえも消えてしまった。生徒たちはなにが起こったのかわからないらしく、悲鳴を上げて逃げ惑う。先生だけが生徒を落ち着かせようと必死だ。私はといえば、単純に呪文の邪魔をされて結構悔しいんだけれどね!!


ブルムソード(劫火の剣)


 また同じ声がそう発する。ハッと前を見ると、暗闇の中に赤く立ちのぼる炎が現出している。ソード? この炎は、剣の形のようにも見えるよ?


「ブルムソード……まさか!!」


 先生が急に焦った声を上げ、炎の出元に近づこうとした瞬間だった。


「ライト」


 今度は強い光が教室を満たし、全ては元どおりになった。いったい何事だったんだと騒ぐ生徒たち。するとさっきの声の主は教壇の上に軽やかに飛び乗り、にっと笑った。


「ねえ、せんせー。俺は何属性でしょーか!」


 唖然とするみんなの前、その男は無邪気な顔で教壇の上に胡座をかいている。端正な顔立ちで、細身ながらも筋肉質な体躯だ。


 そこで、教室の外からバタバタと複数の足音が聞こえた。それらの足音は、扉の前で急ブレーキをかける。


「失礼する! こちらに勇者殿がいらっしゃ……あ、勇者殿!! 授業を妨害してはいけません! まだ手続きは終わっていませんので!!」


 王国騎士団の制服を身に纏った男たちだ。いきなり扉を開けたかと思えば、ズカズカと中に入ってきて謎の男をとり囲んだ。先生は「やっぱり」と言って頭を抱え、生徒たちはただただ困惑するのみ。そして、勇者と呼ばれたその男は、教室内を見渡しながら騎士たちになにかを訴えている。


 ……ん? 勇者?


 今、勇者って言ったよね!? でも、勇者伝説では聖女と勇者は同時期に任命されて旅立つはずなのに。聖女天授の儀はまだだよ! 勇者の登場、ちょっと早すぎない!?


「なんで、ゲームと違うんでしょう?」


 私がぼそりと呟くと同時、突然目の前に風が巻き起こった。


 先程まで教壇の上にいたはずの勇者が、私の真ん前に立っている。


 ええ、怖い、怖いよ? なんでこの人私の前にいるのー!!


 なにが起こったのかよくわからず、口をはくはくと開閉することしかできない。勇者はそんな私の両肩をむんずと掴み、静かに耳打ちをした。


(ねえ『日本』って、知ってる?)


(……っ!?)


 日本!? 今たしかに、日本って言った! まさか、この人も転生者なの?


 激しく動揺していると、勇者は少し困ったような顔をしたが、すぐに口を大きく開けて笑った。


「ルーナ・フィーブル、だよな。俺はザック。ザック・エルドルさ。同じ境遇の者同士、よろしく!!」


「え、エルドル様は、何属性をおもちなのでしょうか?」


 うわああ! 私の馬鹿!! もっと訊くべきことがあるでしょうが! なんで私の名前を知っているの? とか、なんでゲームのときとずれがあるの? とか!!


「俺は、火と風と……あと、少しだけ闇と光が使えるね」


「光魔法が使えるんですか!? っていうか四種類も!?」


 エルドル様の発言を受けて、他の生徒たちもあんぐりと口を開けている。今日は驚きの連続だよ。


「で、ルーナちゃんは? 何属性なの?」


 ▼勇者、質問返し! ルーナはまだ自分の属性がわからない。どうする?

 ▷黙る

  適当にあしらう

  真面目に診断する


 なーんて、某ゲームのような想像に逃避しちゃう。いや、ここで嘘ついても意味ないでしょう!? もういいや! 診断しちゃえ!!


「ショード」

 目を閉じて心を落ち着かせ、詠唱する。恐る恐る目を開くと

「な、なんだこれ!!」


「まさかこれをルーナ様が!?」


 眩い光が私の身体を優しく包んでいる。柔らかな白い光の中には金色の靄がかかっており、よりいっそう神秘的な雰囲気を醸し出している。しばらくの間輝いた光はゆっくりと消えていき、やがて雫になって消えた。


「ルーナちゃんが、なんで……」


 エルドル様の言葉で、ハッと我に返る。そんなの私にも理解できないよ!


 まさか――、まさか! 私が光属性だなんて!!


 口を縫いつけられたようになにも言えないでいると、エルドル様は自分の手を軽く挙げて先生に合図を送った。


「ルーナちゃんを少し借りてもいい? 俺が勇者を続けるかどうかに関わることだからさ」


「なっ!? そ、そういうことならもちろん! ぜひ連れていって下さい!!」


 先生の裏返った声が脚に響いた。まだ現実に戻ってこられずにいる私は、エルドル様と教室を後にしたのだった。

お読みいただきありがとうございます。

なんと勇者登場です。

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