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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
三章 群体悪霊
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「っと!」

「うわおっ!?」


 悪霊の動きが過激になる。公也とフーマルを狙ってのものというよりは、思いっきり暴れまわる、周囲を破壊するためのような大暴れの状態だ。今までのような攻撃する意図が分かりやすい状況ではなくなり二人は回避に専念しなければならず攻撃を加えづらい。


「師匠ー! どうするっすかー!」

「今はまだこいつを引き付ける! フーマルは回避に専念しろ! 俺には魔法がある分攻撃は加えやすいからな!」

「了解っすー!!」


 基本的に相手を引きつけつつ、攻撃は回避、出来る限り攻撃はしたいがフーマルは近接戦しかできず戦闘能力も高いとは言えない。また、安全の都合上自分で魔法をかけなおすこともできないフーマルは公也の指示により回避に専念する。一方で公也は近づき、魔法による防御と意識的に防御の魔法を使いそちらで攻撃をそらしつつ、攻撃の魔法をぶつけることで消耗を狙う。相手の動きが乱雑に、暴れるような状況になったため外側から削るという都合のいいやり方はできないが、動きが大雑把ゆえに狙う分にはそこまで面倒でもない。そもそもの大きさがそこまで変わっているわけでもなく当てる分には楽だ。


「しかし厄介だな……魔法使用を考慮、できれば有効打になりやすい魔法を……」


 と、そんなことを公也が思っているときに闇が取り払われる。


「っ、今のは……魔法?」


 暗くなっていた悪霊の群体の周囲、それは悪霊の使う光を遮る特殊能力によるもの。それが魔法によって取り払われ、周囲に光が満ちる。太陽光が出ている時間でも悪霊が行動できたのはそれが要因。それが取り払われた今、悪霊の群体は光のために動きが鈍る、活動が弱る。その大きさ、群体、取り込んだ霊体の量ゆえにただ太陽光を浴びるだけでは消滅するようなことはないが、その状態で動けば消耗は大きくなり消滅に近づくことになる。それゆえにたとえ後ろにネクロマンシーがいたとしてもその命令を聞き暴れるというわけにはいかなくなってしまった。動きが遅くなり、攻撃してくる、敵である公也やフーマルへの攻撃も弱まる、大暴れして乱雑に攻撃しまくるということもなくなった。


「ロムニルたちか。闇を取り払う魔法……特殊能力によく対応できたな。だけど、ちょうどいいところに! もう少し早く、と思ったが!」


 流石に戦闘が始まってから用意された魔法、しかも失敗はあまり望ましくないということで使う側も色々と考えた結果準備が長くなったことは公也も予想できる。しかし、もっと早めに使ってほしかった、と思うのも事実である。もっと早く光、太陽光の魔法が効果を発揮する状況になっていれば公也も戦闘はだいぶ楽になっていただろうと思っている。近づいた状態ならば多少は光系統の魔法も有効だったとは思われるが。闇のせいで効率が落ちるゆえに使っていなかった、近距離での戦闘での魔法の運用、有効な魔法の運用を確認する意味でも使っていなかったというだけだったりするが。つまり公也の責任である。






「聖なる光、風よ光を纏い闇をすくい取り払え、散らせ、流せ、中和し取り込み吹き散らせ。聖浄なる吹きすさぶ風!」


 詠唱は魔力を魔法に変換するための変換式である。何が最も有効な変換式となるか、また変換効率だけでなくその効果にも影響を及ぼすこともあり、どのような詠唱を使うかは魔法の威力を強めることもあるし弱めることもある。それゆえにかなり意識して詠唱を選択し魔法を使う必要があった。詠唱自体は難しいものではないが、既存の魔法から望む詠唱に近しい詠唱を、詠唱の変換、適切な意味を加えられるかどうか、色々な意味でかなり意識を使っていた。また呪文に関しても今回使った闇を取り払う魔法の呪文は今までの呪文らしい呪文でなく、詠唱の一部とも思えるような呪文とした。呪文が思いつかないというのもあるが、意味そのもの、変換式そのものである詠唱からとった呪文の方が威力が高まるのではという推測をしたのもある。呪文は確かにそれだけで魔法を発動できるような魔法を象徴するものである。しかし今のところ存在しない魔法に呪文はどれほどの意味合いがあるだろうか。そう考え、詠唱を使った。

 それらがどれほど功を奏したかはわからない。もしかしたらそれほど意識せずとも魔法は使えて効果を発揮したかもしれない。実際の所はリーリェにはわからなかった。検証は後回しでひとまず悪霊の群体を倒すことの方が優先されることである。ゆえに発動し、効果を発揮し闇を取り払った今、それほど魔法の細かい内容に関しては考えなくてもいい。まあ、研究者として後で色々な確認は必要と思われるが……そもそも使う機会がそれほどないだろうものなので必要かどうかも怪しい。彼女たちは研究者なので詳しく根掘り葉掘り調べることだろうが。


「せ、成功……かしら?」

「ああ。それじゃあ、聖なる日の光よ、闇に属する邪なるものを浄化せよ! ホーリーライト!」

「ちょっと? 日の光の魔法じゃないの?」

「いや、なんとなく思いついたから……」

「太陽の光、彼の者の下に向かえ。サンライト! 事前の話とやっていることが違わないかしら?」

「だ、だから思いついたからだって! 君だって新しい魔法を開発しているんだから……」

「まったく……まあいいわ。とりあえず悪霊退治が先よ! サンライト!」

「ああ……ホーリーライト!」


 光の魔法、それも聖なる光の魔法、あるいは聖光の魔法ともいえるような魔法をロムニルは即興で開発したようだ。少しは魔力の消費の問題、詠唱の検証等をした方がいいのではと思わざるを得ない。詠唱を省略して使って余計に魔力消費が増えている。サンライトと違い新しく作ったものなのだから詠唱を省略して呪文だけ使うのはどうなのだろう。もっとも、それほど消費が大きくはなっていないらしく、作ったと言っているが詠唱はともかくホーリーライトの魔法自体はどこかに既にあるのかもしれない。魔法に関する技術共有は行われても国内でのみ行われることが多く、他国と技術が共有されることは少なく相手国の魔法は多くの場合秘匿事項となっている。なので他国では既に作られているが自国ではオリジナルの魔法ということになるような魔法もある。実に面倒な話である。


「効いてるね」

「そうね。周りから徐々に……」

「動きまわっているから狙いづらい。当てる分には楽なんだが」

「二人に当てても問題ないのが救いね。私たち二人基本的にはノーコンだから」


 運動能力の低い二人は遠距離からの魔法攻撃が狙った場所に当たるとは限らない程度の実力である。一応魔法であるためちゃんと直進してくれるため、狙いさえつけておけばそこを外れることがないのが救いだ。しかし、それでも狙いがぐるぐるとぶれたりすることもある。またフーマルや公也の行動予測ができずに当ててしまうようなこと、範囲内にいれてしまうようなこともある。もっとも二人の使っている魔法は光の魔法、太陽光と聖なる光の魔法であるため光が当たっても収束されていないただの光は人間に対して影響をもたらさない。ゆえに困ってはいない……まあ、光が眩しいくらいには思っているかもしれないが。







「光よ剣に纏わり霊体を振り払い散らせ! ライトソード!」


 剣に光を纏い霊体に攻撃する公也。火は既に試したし、風による攻撃も試している。闇が取り払われた今、霊体に対して光の魔法は最大の攻撃手段となるはずである。ただ、魔法でも単なる光と太陽光では差が大きい。しかし公也は光の魔法を使っている。太陽光は太陽光で仕組みが複雑で魔力消費が増えるし、効果が高すぎると例の声の元となった霊体のアンデッドを消滅させる危険もある。外から攻撃するロムニルとリーリェは届かない可能性が高いが公也は近くであり、また剣が届く可能性もあるため抑えめということだ。


「時々光が眩しい。あれくらいならまだ少し見えなくなるくらいで済むが、フーマルの方は大丈夫か……大丈夫みたいだな。しかし、事故りかねないから不安だな。まあ、攻撃としては効果を発揮しているのでいいが……」


 光による影響はそこまでではないが、あまりいいともいえない。とはいえ悪霊の群体相手にしっかりと効果を現わしている。問題がないうちは特に気にする必要性はないが、今は何も起きていないがフーマルの方で何かが起きないかと少し不安になる公也である。



※一応悪霊、霊体の類は攻撃が物理的作用を引き起こすことはないはずなので大暴れしても周囲が破壊されるような被害を巻き起こすことはないはず。

※聖なる光……聖って何? 聖なる、というのは現象としてはどうなのだろう。とりあえず魔法として使えるようなので問題はないみたいである。多分雰囲気的何かかもしれない。

※全世界で魔法は共有のものではない。伝え広まり使われ知られるようになっているものもあるがその国特有、教えられていない独自の魔法も珍しくはない。なので新規開発に見えて他所で既に作られている魔法を開発している場合もあるらしい。

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