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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
三章 群体悪霊
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「戦ってるねえ」

「こっちはこっちで遠くから狙いましょう」

「…………ふむ。しかし、火の魔法などで狙うと危なくないかな? 水の魔法も影響が周囲に拡散する。土は効かないし、ここは風の魔法かな?」


 基本的に悪霊の群体と近距離で戦う公也とフーマルの存在がいることが遠くから狙う上でネックとなる。何が問題かと聞かれれば誤射、誤爆が問題であると答えることになるだろう。狙いをつける悪霊の群体はかなり大きいため何処を狙っても当てることは難しくなく、周りにいる公也たちに当てる可能性は比較的低い。しかしそれでも近くにいる限り当たる可能性はないとは言えないわけである。それに公也とフーマルも棒立ちで戦うわけではなく、悪霊の攻撃を回避するため、また攻撃するヶ所の選択の都合で動き回る。狙った時点ではいなくとも動いて魔法が当たる可能性はあるだろう。

 また、魔法の攻撃範囲、影響範囲の問題もある。例えば炎の魔法はものによっては爆発するようなものもある。仮に魔法が当たらずとも、魔法が悪霊の群体に当たり爆発するなどしてその爆発が当たらないとも限らない。水の魔法の場合は水が周囲に残る。これは魔法の性質、水分を集めて魔法にしたか魔力を水にしたかで差がでるが、それもいい影響であるとは言えない。例え害は少なくとも目には入れば視界を奪うような影響もある。戦闘中にそういった影響が出た場合どれほどの脅威になるか。

 ゆえに攻撃性としては比較的低く、誤爆、影響性がそれほどでもない風の魔法が最も有効であると考えるロムニル。しかしリーリェはそれを否定する。


「いえ、ロムニル。確かにそういった魔法の有効性は確かめるべきだと思うけど、それはキミヤ君のほうでやってくれているわ。付与という形でだけどね」

「防御は風、攻撃は火……あと、キミヤ君なら風の魔法による攻撃も試してはくれるか。どちらにしても風と火は確かめられると。じゃあ水の方がいいかな?」

「違うわよ。影響の問題があるから火や水は使いにくいでしょ? 人間に対する影響性の低い、ダメージの起きえないような魔法を使うべきなのよ。それこそ悪霊に最も有効な、ね」

「……光の魔法かい?」


 光の魔法。霊体のアンデッドにおいて持っても有効な魔法となるだろう。厳密に言えば太陽光の性質を持った魔法であるべきだが、単なる光の魔法でも魔法の場合は悪霊に対し有効的な攻撃となるだろう。もちろん太陽光の魔法でない必要性はないので太陽光の魔法を使う。光の魔法は余程強力か収束させない限りは通常の光よりも光としては強くない。あるいは持続性の問題になるか、または魔法での光ゆえか、そこまで大きな害になることがない。ゆえに光の魔法は前衛にダメージを与えることなく霊体への攻撃が可能な魔法と言える。

 だが今回の悪霊の群体はとある要素が存在するため光の魔法が果たして有効か疑問が出てくる。


「でも、悪霊の群体は光を遮る闇を纏っている。あれがある限り光の魔法は有効打になり得ないんじゃないかな?」


 悪霊の群体が昼間からでも活動できる理由、周囲を暗くするほどの影響力のある黒い纏い、闇の纏い。光を遮る効果のあるそれは恐らくだが魔法に対しても有効だろう。もちろんその纏いの隙間を狙うなり、近づいて発動するなり手立てはいろいろとあるものと思われるが、ロムニル達はそこまで器用ではないし戦闘能力も高くはない。彼らは魔法使いだが軍属として戦うようなものではなく、研究職として魔法の開発や研究を行うものだ。流石に近づいて戦うのには向かない。


「もちろん光の魔法が通用しない可能性は考慮してる。まずはあの闇を取り払うことを考えないとね」

「……あれをか。できるのかな?」

「キミヤ君の魔法はいろいろと参考になるわ。悪霊避けの魔法、防御の魔法として使っているけど、あれは逸らす、排する性質に近いんじゃないかしら? つまり魔法で押し出す、吹き飛ばすのではなく、除去するような魔法を使えばああいう特殊能力に対しても有効になるんじゃないかと考えてるの」

「なるほど……面白そうだね。でも、この場で即興で魔法を作ることになるな。既存からの組み合わせで試すのとも違う……」

「大変なのは事実でしょうね」


 新しい魔法の制作はかなり面倒くさい……というか難易度が高い。なぜならまずそれが発動するかどうか、詠唱がうまくいくかどうか、呪文がうまくいくかどうか。魔法は発動しようと思えば魔力さえ足りるのならば発動する。少し前にロムニルが試した、可能性として使えるのではと考えられる光の魔法……厳密には光を集めるための水の魔法、レンズの魔法になるが、あれは発動したがすぐに魔力が尽きる、魔力消費の大きい魔法だった。原理がわからない、仕組みがわからない、必要とする魔力量の大きさゆえに消費が大きく発動時間が短い。こういった魔法を細かく検証し最終的に簡単に消費が少なく使える魔法にするわけである。今回はいきなり実戦下で使用しているのだが。それと同じで闇を取り去るための魔法はオリジナルの全く新しい魔法となる可能性が高い。となると原理などがわからず消費が大きくなる可能性が高いだろう。


「魔法に関して私が行う。ロムニルは光の魔法の準備をお願い」

「……わかった。闇を取り払うのはリーリェに任せるよ」


 ゆえにその魔法はリーリェが使うという話になった。ロムニルは先にレンズの魔法で魔力を消費している。多少回復しているとはいえ確実性を高めるのであればリーリェが魔法を使った方がいろいろな意味で安全である。


「じゃあ行くよ」

「ええ」







「ふむ……声は聞こえない、か。今は届かないのか? あの時声が届いた理由も不明だしな……」


 公也はフーマルと同じように悪霊の群体に近づき、その体を削いでいる。か細い声の主がどこにいるのか、それを探すために外側を追おう無数の悪霊群を取り払い削り取らなければいけない。面倒くさいが悪霊に有効な魔法の確認、検証もある程度同時に試せるため悪いことではない。ただ、魔法の消耗、魔力の消耗も大きくなるのは問題だろう。このままいけばフーマルに掛けていた魔法が切れる方が早い危険もあるかもしれないと公也は思った。


「火よ姿なき塊を散らす焔となれ」


 火の魔法を使い悪霊の体を燃やす。エネルギーによるものか、火による浄化か、光による作用か、魔法により悪霊の体が削れていく。


「次は風を……っと、防御できるとはいえ当たらないほうがいいよな」


 相手の攻撃を避ける。防御能力があるが攻撃は当たらないほうが安全である。いくら公也が特殊な生態をする奇異な存在であるとしても、決して無防備に攻撃を受けていいわけではない。ましてや精神系統は公也でも完璧に安全とは言えない。物理的ならば幾らでも平気だが、精神や霊体、魂と言ったものに対する攻撃は公也はどことなく不安があった。実感がないからかもしれない。

 ゆえに相手の攻撃は避け、そこに攻撃を叩き込む。武器を使った攻撃でもいいし、魔法を使ってもいい。あるいは暴食で悪霊を食して削るのもありだろう。公也としては悪霊を削るために暴食を使うのはどうかと考えているのでそれは流石にしない。まあ、最終手段としては考慮に入れているのでいつでも使えるようにはしているが。


「しかし、聞いてどうするんだろうな……やっぱり黒幕の存在を知りたいのか? 知識的な意味で? それとも……善意か?」


 そう自分で呟きながら、しかし心の中で嘲笑う。自分がそういったことをするような人間だろうか、と。かつて人を食らい殺したのに、と。ただ、それは無意識の中であるのだろう。あるいは善意などではなく、贖罪として考えているのか。そんなネガティブに寄った思考を振り払いながら公也は悪霊の体を削っていく。

 外側を徐々に徐々に。悪霊の体は小さくなっていく。大きさが変われば確実に繋ぎとなっていると予想できる、か細い声の主、助けてと公也に訴えかけたその存在を見つけることができる……そう考えている。もっとも、この時点では公也は黒幕の存在を考慮しているのに忘れていることがあった。現在の悪霊の群体の状態をその黒幕が確認することができる可能性、そして黒幕が公也たちを潰すために悪霊の群体を積極的に動かす可能性があるということに。



※光の魔法。しかし光の魔法は攻撃性を持ち得るか? 光線とかなら攻撃性はあるかも。でも光の玉とか飛ばしてもダメージってあるのだろうか。謎い。

※今回の主人公の動きに関して。主人公自身どうしてそうしているのかわからない。別に主人公は悪人というわけではない。善人ともいえないが、別に善行を一切行わないというわけでもないのでなんとなく人助けをしたいという理由でも通らなくもないが。

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