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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
三章 群体悪霊
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 悪霊退治は冒険者から数人、国に所属する魔法使いから数人という形で成されることになった。具体的に言うと公也たち……冒険者である公也、フーマル、ヴィローサの三人と魔法使いであるロムニル、リーリェの二人である。あと、一応監督役として冒険者ギルドの職員が一人ついていくことになった。このギルド職員は少し前までDランクの冒険者だったがその年齢で引退を決意したところをギルドが拾った職員であるためまだ相応に戦闘能力がある。まあ、それでも魔法を使える冒険者ではなかったのであくまで監督役、いざという時には逃げて悪霊退治の失敗を告げるための人員だ。

 なぜ公也たちのみが悪霊退治に出向くのか。これに関して言えば、事前の失敗が大きな理由の一因である。そもそも霊体のアンデッドを相手にたくさん人数を連れて行ったところで魔法が使えない人員はほとんどの場合役に立たない。肉壁にすらならず、無駄に死者を増やすだけな上に悪霊側を強くしてしまう。街に向かってくることによる被害の発生もあるので数は少ない方がいい。これに関して言えば公也たちも無駄に守る必要性がないのも大きい。魔法による保護、魔法の付与による武器での攻撃可能とする方法も人数が多いと相応に魔力の消費が増えるし維持の問題が出てくる。人数が少ないほどやりやすい。

 あとは公也の能力に関しての問題もあるだろう。場合によっては公也は暴食の力を使うつもりである。その目撃者を可能な限り出さないようにしたい、そういう意図があった。他にも連携の問題などもあるがそれに関しては公也たちの場合はそもそもロムニル達との連携はそれほどいいわけではない。公也とフーマル、ヴィローサの冒険者組であればそれなりだが魔法使い組を加えると連携は少し拙い物になる。まあ、本当の意味で全く知らない冒険者たちと連携を組むよりはましかもしれない。そもそもある程度の能力のある人間、悪霊退治に出向く勇気を持つ人間は失敗した前の時に出向いている。今残っているのは興味を持たなかったり能力がなかったり怖気づいた冒険者である。また犠牲者が多く死亡の危険性の大きさから少しはまだ参加してもいいと思っていた冒険者も躊躇するようになったのもあるだろう。

 ともかくそういう形で公也たちのみが悪霊退治に出向くことになったのである。


「俺も行かなきゃいけないっすか!?」

「なに? 仲間じゃないならどっか行けば?」

「うぐ……いや、確かに仲間っすけど……」

「ならキイ様についていくのは当然でしょ。だいたいこれ仕事だもの。パーティーで受けているんだからパーティーで行くのは当然。評価だって危険度相応にもらえるんだから別にいいじゃない。どうせフーマルは参加するって言っても前に出るわけでもないでしょ」

「……そうっすね。ま、雑務くらいはやってもいいかもしれないっす。師匠やあの二人が戦うんだったら」


 基本的にフーマルとヴィローサは特に戦闘に参加する必要はないと考えられる。まあ、ヴィローサの毒を生み出す能力はその性質上霊体などの実体を持たない相手でもその霊体や精神上に毒を生み出すことができる。ヴィローサの生み出せる毒は実在する毒に限らない。あるいは場合によっては霊体を殺す毒すら出せる可能性はある。もっとも流石に今のヴィローサはそこまではできない。多少の影響は与えられるが殺せるほどのものではないだろう。そもそも肉体のある生物を殺すのと実体のない死者を殺すのでは難易度がいろいろな意味で違う。人を殺す毒とゴーレムを殺す毒では全く性質が違うし前者の方が後者よりもはるかに楽、霊体もまた同じような性質であるということだ。

 まあ、ヴィローサの場合はそもそも戦闘とはまた少し違い離れたところでその妖精の特殊能力を使用すればいいだけだが。フーマルの場合は近接戦闘になるためまず戦闘への参加はできない。なぜならフーマルは魔法を使えないのだから。ゆえにフーマルの仕事はついていくだけ、公也やロムニル達が戦うことになる物と考えている。もっともそんなに都合よくはいかない。


「言っておくが、フーマルにも戦ってもらうぞ?」

「えええ!? 俺にどうやって戦えと!?」

「魔法の実験だな。魔法の付与による攻撃能力と、魔法の付与による防御能力。特に前者だな」

「……いや、そこは後者でお願いするっすよ?」

「防御に関しては俺やロムニル達も使うからな。魔法による攻撃とは別に、武器に魔法を付与した場合の攻撃性能を調査したい」

「………………安全は大丈夫っすか?」

「何をもって大丈夫と言えるかはわからないが、防御に関しては俺がまず悪霊の群体を相手にして確かめる」

「キイ様! だめ! それって危険でしょ!」

「ヴィラ。これに関しては俺じゃなきゃ難しいからだ。一応霊体相手でもそう簡単に俺はやられることはないだろう。問題は他のメンバーだとどうしようもない可能性が高い点だ。防御だけは命に係わる。ゆえにどの程度魔法による防御で相手の攻撃を受けないようにできるか確かめなければいけない」

「でも、それってキイ様だって危険ってことでしょ! そんなの認められない!」


 ヴィローサの言う通り公也が絶対安全でいられるとは限らない。確かに公也は少々特殊であるため悪霊の攻撃を受けても耐えられる可能性はある。しかしそれは絶対のもの、確実なものではない。もちろん防御のための魔法も使うつもりであるが、その魔法が効果がなく、悪霊の攻撃に耐えることができなかった場合……公也は死んでしまう可能性が高い。それをヴィローサは危惧している。


「……ヴィラ。俺だって別に危険を冒すつもりはない。ダメそうなら、食らうだけだ」

「………………………………わかった。なら、ううん、でも………………わかった」


 ヴィローサは一応は納得した。何か自分でもできることを、と思ったものの、それを実行する気はなくただ納得し公也の行動を受け入れるのみであった。食らう、つまり防御が通用しない最悪の場合悪霊の群体そのものを食らうことで対応する、ということだ。公也としても自分の命をむざむざ犠牲にするつもりはない。もっともこのやり方だと悪霊退治が一瞬で終わるうえに、霊体のアンデッド相手の魔法的な検証を全くできない。また、場合によってはついてきている監督役の冒険者ギルド職員にその能力を見られる危険もある。そういった点ではあまり積極的にそういった力を使いたくはないわけである。


「…………話は終わったかい?」

「職員さんも待たせているんだから行きましょう?」


 ロムニルとリーリェに呼ばれる。既に行くことが決定している段階なのでそもそもフーマルがどうこう言ったところで仕方のない状況だった。まあ、行くことになるまでとても早かったわけだが……これに関しては恐らく早急の悪霊の群体の排除、そして街を襲う危険のある霊体の確認と退治の意味もあるだろう。一応この街を襲ってきた霊体は公也が退治したがそれ以外がいないとも限らない。今のところ襲ってきてはいないが魔法使いも居らず魔法を使える冒険者も減っているのでできれば退治しておいてもらいたい、ということだ。故に急ぎ、早急に始末をつけておきたいということになる。これは一度挑んで敗北した事実をできる限り隠したいという意図もあるかもしれない。まあ、バレる可能性は高いがそれでも、といったところである……かもしれない。


「よし、行くか」

「ええ。ほら、フーマル、とっとと準備してきなさいよ?」

「うう……相変わらずっすね……あ、師匠、フズは連れて行くっすか?」

「…………そうだな。連れてきてくれ。発見しやすいかもしれないし」

「了解っす」


 今回はフズも一緒である。普段からろくに出番のないフズであるが、今回くらいは少しは役に立つ場面を見せることはできるだろうか。



※主人公は肉体的には現状ほぼ無敵に近い。溶岩にでも突っ込まれない限り。精神的には別。精神に対する直接攻撃は普通に攻撃されるよりもはるかにダメージが大きい。肉体的には死なずとも精神的には殺せる可能性はある………………かもしれない。

※…………フズ? 作者側も忘れかけているキャラで時々出番があるくらいの不憫さである。でも度々出番はある。その能力の都合上扱いづらいから出しづらいけど。

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